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ハザマ~高校生男子は異世界で精霊に愛され無自覚無双~  作者: 木賊
第6章 勇者の剣と記憶
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127話 芋けんぴ

「へい!お待ちどおさまーーー!」

「「「ふぉーーーー!」」」


俺はそう言って大量の唐揚げをテーブルの真ん中にドーンと置いた。

腿肉と胸肉の唐揚げは大皿に盛られてものすごい山となってとてもいい匂いを放っている。

作った俺ですらじゅるりとなっているのに唐揚げをガン見している子供たちがじゅるりになっていない訳がない。

子供たちは広間のテーブルの席にすでに座っていて、ローエの号令を早く早くとローエに目配せしている。


ローエは微笑みながら他のスープやパンなどを置いた。


「ただいま。」

と、ナイスなタイミングでハンターやりに出掛けていたグランが帰ってきた。

「「「お帰りグラン兄ちゃん!」」」

「お帰りなさい、グラン!」

「おかえりー」


「お?ちょうど夕食に間に合ったか。この茶色のはなんだ?」

グランはテーブルの中央に置かれた山にすぐ気がついた。

そりゃそうで、子供たちが一瞬グランに向いておかえりを言ったがすぐに山に釘付けになったからだ。

「今日の夕食のメインは俺が作ったんだよ。俺特製の唐揚げでーす。」

「へえ!ワショク作ったのか。カラアゲというのか、うまそうだな。」

「鶏肉を醤油とニンニクとかと漬け込んで小麦粉をまぶして揚げたもので、俺の世界では大人気で専門店もあったくらいなんだ。あ、ついでにこっちの茸の焼いたのも俺が作ったんだよ。」

唐揚げの隣のさらには大きな茸を4つに切って焼いたものがこっちもたくさんあった。

「この茸はバター醤油で焼いたからめちゃくちゃうまいよ。バター醤油ってのはそれで焼いてうまくないものはないってくらい定番の奴なんだ。」

「ほう。それは食べたいな。」


因みにこの茸は茸の精霊に頼んで生やしてもらったものだ。

ヒカリキノコが美味しかったからぜひバター醤油で食べたかったんだよね。

それを聞いた茸の精霊は『そういうことならオススメの茸があるよ!』と言ってキッチンに隅に生やしてくれた。

サービスで大量に生やしてくれたのでリンクに入れたしローエのトマトスープにも入っていたりする。


「じゃあ!グランも帰ってきたことだし!食べましょう!」


その号令をきっかけに子供たちは唐揚げに飛び付いて次から次へと口に頬張った。

ローエ、グランも取って口に入れて、俺も慌てて取る。

「うわあ~!すごく美味しい!」

「とっても美味しい!!イオリすごいわ!」

「ふふふ、美味しい!」

子供たちは気に入ってくれたようでパクパク食べてくれている。

「外がカリカリでお肉もプリプリして美味しいわ!」

「ニンニクもきいてて味もしっかりついていてうまいな。」

ローエとグランも気に入ってくれたのでよかった!

うん!我ながらうまいな!


「お、この茸の焼いたものもいいな、うまい。」

グランは茸を食べてそう言った。

そうだろうそうだろう。

「うん?・・・おい、この茸・・・。」

グランはふと、食べていた茸をマジマジと見だした。

「この笠の模様・・・そしてこの大きさ・・・。もしかして・・・"伝説の茸"か!?」

は!?"伝説の茸"!?

「"伝説の茸"は世界中の茸の中でもうまいと言われているが、とんでもなく難しい条件が揃わないと生えないと言われている。その昔、この茸が生える群生地を巡って戦争が起きたというほどだ。そして今ではまったく見かけなくなって絶滅したという噂もあるほどなんだが・・・。」

グランはそう解説してサッと俺を凝視してきたので俺はサッと目を逸らす。

っていうか、その茸そんなとんでもなく難しい条件じゃないと生えないの?

精霊に頼んだらキッチンの隅から生えてきたぞ。


はっ!?

まさかこれがサービスか!?

茸の精霊をサッと「視て」みたら泳ぎ目で口笛を吹いていた。

おのれ!謀ったな!?


「え・・・どうしよう。そんなとんでもない茸なんて知らなくてトマトスープに入れちゃったわ。」

ローエは"伝説の茸"だなんて夢にも思わなかったようで自分の分のスープを見ながらちょっと引いていた。

「ローエはいい。知らなかったんだろ?」

「いや、俺も知らなかったし。」

「イオリ、後で説教な。」

は!?

冤罪じゃ!冤罪事件じゃあー!



そんなこんなでモリモリ食べ終わった頃に、俺は重々しく口を開いた。


「皆、実はこのあと・・・デザートを用意してます。」

「「「ふぉーーーー!」」」


子供たちの興奮再燃。

よし、こうなれば冤罪事件はデザートでご機嫌をとってなんとか逃れよう。

俺は急いでキッチンに取りに行ってデザートのたんまり乗った大皿を持ってきた。


「ジャジャーン!芋けんぴでーす。」


唐揚げを揚げ終わった俺は、唐揚げだけに使うのは油がもったいないと思い油で揚げたデザートを用意することにしたのだ。

さつま芋は元々安いのでいつも多めに買っている食材でもあったし、後は水と砂糖ぐらいしかいらないから簡単だ。

これはテレビでも見たことあるし、作ったことはないけど作ってみた。


魔剣ナイフで細長く切って油で揚げて、水に砂糖を溶かしたのを揚がった芋にからめてからめて・・・。

うわ!思ってたよりも簡単にできた!


ということで、芋けんぴの完成である。


あんだけ唐揚げやパンとかを食いまくってた子供たちは次々と芋けんぴを食べだした。

子供たちは「甘くて美味しい!」と腹一杯食べたはずなのにパクパク食べている。

俺も食べよっと。

ポリポリ、美味しいなあ。


「因みにさつま芋をめちゃくちゃうすーくスライスしてそのまま揚げて塩ふったらさつま芋チップスというのもできるよ。」

孤児院では子供たちのおやつとしてさつま芋をふかすだけだったから少し子供たちはそれに飽きているようだったからチップスも提案してみた。

「へえ!それいいわね。油がもったいないからたまにになっちゃうけどそれも作ってみようかしら。」

「「「本当!?わーい!」」」

子供たちはバンザイして喜んだ。



それからなぜか知らないが茸の菌がキッチンの隅を気に入った?みたいで"伝説の茸"がそこから生えるようになったのはグランには内緒だ。

また怒られる。




その翌日。



いつものようにハンターズギルドに行ってみるとなんかちょっとガヤガヤしていた。

「おう!イオリ!」

待合所の席には何人もの包帯を巻いたハンターがいて、そのハンターと一緒にいたギルマスが俺を見つけて声をかけてきた。

ギルマスは怪我してないよ。

「ギルマス、どうしたん?」

「ちょうどよかった。お前に頼みたい依頼があってな。」

「え?依頼が?」

「ちょっと待って下さいよギルマス。もしかしてこの青年に頼むんですか!?正気ですか!?」

俺とギルマスの話を遮って、側にいた包帯姿のハンターがそう言ってきた。

声をかけてきたのは30代前半の男性ハンターで、赤いツンツン頭に茶色の鋭い目付きでガッチリした体にレザーアーマーを着ていて剣を腰にさしている。

頭や腕に包帯を巻いていて服も少し汚れている。

そのハンターの座っている席には同じ年くらいの男女のハンターが座ってて、皆が体のあちこちに包帯を巻いている。


「あ?そのつもりだが?」

ギルマスがなんでもないように言うと、包帯を巻いた男女が皆ぎょっとした顔をした。

「意味わからない!あの化け物相手にこの青年だなんて!?」

「どういうことなんです!?」

そう言ってきたけど俺にはまったく話の検討がつきませーん!


「ちょ、ちょっと!ギルマス!どういうこと!?説明お願い!」

「おう、もちろんだ。イオリは数日前に出された緊急依頼の魔物・・・ゴブリンの群れの討伐依頼があったのを知ってるか?」

ああ・・・!グランと依頼をギルドに来たらちょうど募集してあっという間に人数埋まった奴だな。

「知ってる知ってる。募集してる時俺見てたから。」

「そうか。んでな、その討伐依頼でゴブリン討伐に向かったのが30人の内が彼らなんだ。」

ギルマスはそう言って包帯を巻いたハンターたちを指差した。

「彼らは予定通り向かったんたが、ゴブリンは予想よりも多くて別のゴブリンも出てきて少し苦戦したらしい。」

「別のゴブリン?」

「ゴブリンリーダーっつーゴブリンのリーダーがなぜか何体も集まってそれがゴブリンを引き連れているらしい。」

リーダーが何体も集まって?

それはもはやリーダーではないのでは?


「そして彼らはなんとかゴブリンの亜種というのを見つけたが、どうやらそれが亜種じゃなかったそうだ。」

「亜種じゃなかった?」

「亜種にしては様子がおかしいと思ったそうで、戦ってる内にゴブリンに成りすましていた別の魔物だとわかったそうだ。」

魔物がゴブリンに成りすますなんてことあるの?


「イオリにはその魔物を倒してくれ。」


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