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12話 お金儲けは意外に?

この世界に来て4日目。


はてさて、いい加減そろそろ動かないとね。

今日から本格的に。


なにって?

そりゃあ奥さん、アレですよ。

やはり先立つものは必要なんだよね。




午前中、沐浴をさっさとすませた俺は1人、孤児院の裏手の原っぱに来ていた。

子供達も順番に沐浴してローエは子供達の着替えを手伝ったり髪をふいたり奮闘中だったのでしばらくは誰も外に出ないと思われる。

そのタイミングを狙って原っぱにやって来たのだ。


この孤児院から去るに辺り、必要なものは何はともあれお金だ。

お金さえあれば必要なものは買えるし、宿に泊まれなくても野宿してもいいが、ある程度の額はいる。

なので、お金を稼ぐには?と考えたとき、何も所持していないというのと、こちらの世界にまだまだ疎いというのは相当ネックだった。

なので早速、ローエが道具屋を案内してくれたときに教えてくれたお小遣い稼ぎをとりあえず行うことにした。


薬草を探して採取し、道具屋に売るという結構簡単なお仕事である。

といっても、俺は薬草の見た目の特徴は知らないし、家の近くに生えてるとは考えてない。

生えてたらとっくにここの子供達なりローエなりが採ってるだろうからね。


しかし、そこでふと、妙案・・・というかズルを思い付いたのだ。



周りにローエ達がいないことを確かめ、「真眼(シンノマナコ)」で周りの雑草を「視て」みてまわって、しばらくして目的の精霊を見つけた。


「こんちわ。草の精霊。」


雑草の中に埋もれるかのように草の精霊はいた。

他の精霊と同じく体長30センチ位の全身薄緑色の細長い草の束のような姿で、目は閉じているのかわからないくらい糸目のように細い。

草の精霊を見て頭に流れた説明を確認して声をかけたから間違いない。

手足が見当たらなくてどうやって移動するんだろう?と思っていると返事が帰ってきた。


『んん?あなたがイオリね。こんにちわ、話しかけられて驚いたわ。』

「突然でごめん。ちょっと相談があるんだけど・・・。」


今は孤児院な居候していて、お金を稼いで町に宿を取りたいこと、そのお金を稼ぐ手段として薬草を売りたいことを話した。


「んで、草の精霊は薬草の生えてるとは場所わかる?もしくは薬草を生やすっての出来るならお願いしたいんだけど・・・。」

『この近くの薬草の生えてる場所は他の人間にかなり採られちゃってるから、遠い場所しか教えられないわ。そうなるとここに薬草を生やしてあげるわ。その方がイオリが簡単でしょ?』

「うん。ありがとう。魔力いくらでも食べてよ。」

『うふふ。かなり嬉しいわ。』


草の精霊がそう言ってサワサワと体を揺らすと、精霊の周りにたくさんの草が生えてきた。

その草は精霊とほぼ同じ高さで、ギザギザの葉は葉先が白っぽくなっていて、茎に近くなるほど緑色が濃くなる、綺麗なグラデーションの草が生やしてもらった薬草だった。


草の精霊の指示にしたがって薬草の束を掴んで上に引き抜く。

草の精霊の配慮?であまり根を張らないようにしてくれてたようで、意外に簡単に引き抜けた。

薬草は根ごと売った方が売れるらしい、と根についた土を軽くはらう位でそれを3本を1束にまとめていく。

束をまとめる紐は近くの木に絡まっていた蔓を引きちぎってそれでまとめた。

と、ここまで全部草の精霊の指示で作業した。

草の精霊は人間が薬草を採取する姿を何回も見たことがあったので知っていたらしい。

そこまで難しい作業でもなかったので30分ほどで草の精霊が出してくれた薬草は10束にまとめられた。

これらを事前にローエからもらったいらない袋に入れて、草の精霊と別れを告げ、孤児院に一旦戻って昼食後に町に売りに行くことにした。





『いや~楽しみだねぇ!実に楽しみだ!』




午後からはまたローエが先生となって子供達は計算の勉強だそうで、俺は「薬草を探して売ってくる」と言って町へ来た。

薬草はすでに採っていたが、さすがにどうやって採ったか言えないので孤児院の塀の影に隠して家に戻ったのでローエ達にバレなかった。

多分、これから町の外辺りで薬草を探して売ってくると思ってくれたようで、「気を付けて」と言われた。


しかし、さすがに1人で薬草を売るというのはこっちの世界に疎いので心もとなかったので、相談がてら情報の精霊を「呼んだ」らなぜか情報の精霊がそのままついてくると言い出したのだ。


『何を言ってるんだい!イオリの初めての売買に密着しないで、何に密着すればいいのさ!?』


いや、密着て。

薬草の売買を見て何が面白いのか?何かの情報になるのか?

まあ、俺としては何かあったときのアドバイザーとして頼れるかなあ。

というか、頭の上で跳び跳ねないでほしい。


それから左肩に移動したアドバイザーからアドバイスをもらいながら、ローエが一昨日教えてくれたグランデニア商会がやっている道具屋に着いた。

中に入ると客は一昨日よりちょっと少なく、店の奥の方にある買い取り用のカウンターに数人並んでいた。

その数人は全員皮鎧などの防具を来ていて手には袋を大なり小なり持っていた。

おそらくローエの言っていたハンターとやらなのではないだろうか、と思いながら後ろに並んで順番を待った。


順番を待ちつつ買い取りの様子を見ていたら、1つ前の人が薬草を買い取りしていたのだが・・・。

あれ?その薬草が俺の持っていた薬草と色が違う?

俺のと形は同じだが、白から緑のグラデーションの俺の薬草と違って前の人のはただ緑だけ。

不思議に思っていたが、普通に買い取りしていたので色違いは問題ないのかな、思っていると俺の番になった。


「いらっしゃいませ。買い取りですね?」

カウンターの男性がにこやかに声をかけてきた。

「あ、はい。薬草の買い取りお願いします。」

俺がそう言って袋を渡すと男性は袋を開けて覗きこんだ。

そしてものすごく目を見開いた。


「こ、これは・・・上級薬草!?」


男性は思わずといった感じで声をあげてしまい、店内の他の客の耳にも入ったようで、客のほとんどがこちらを見てきた。

明らかに違う薬草だから、何か俺やらかしたか!?

何かしらの問題があったのかとドギマギしていると、男性はすぐに気を取り直し、他の客に詫びると他の店員に何かを指示し、にこやかな笑顔のまま俺を店の奥へ案内すると言ってきた。

先ほどの買い取りとは違う対応に戸惑ったが、俺は促されるままに店の奥へ行き、個室に通された。


個室はごく普通のテーブルとソファーが一対ある位で、他に調度品すらない、まさに「取引に使うだけの部屋」という感じだった。

案内してきた男性に手前のソファーに座るように促され、座ると男性は部屋を後にし、数分して見知らぬ中年男性が入ってきた。


中年男性は白髪混じり紺の髪をオールバックにした中肉中背で、目尻が下がった柔和そうな印象だ。

中年男性はここの道具屋の店長だと自己紹介してきたので、俺も名前だけの自己紹介をした。


「実は・・・君が買い取りに出した薬草がとてもじゃないがいい品質だったので、こちらの個室を用意したんだよ。」

「は、はあ・・・。」


いまいち訳のわからない俺の反応に気が付いた店長が細かい説明をしてくれた。

まず、薬草は上級・中級・下級があり、上級は白から緑のグラデーション、中級は緑に白の斑点、下級は緑だけなのだそうだが、俺の持ってきた薬草はもちろんグラデーションがあったので上級となった。

さらに根付きだったのが価値をさらにあげたらしい。

く、草の精霊・・・普通のでよかったのに・・・!

いや、上級とか下級とかお願いしてなかったから、多分草の精霊が気を利かせてくれたのかもしれない。


というか、それをすぐ見抜いた男性も男性だが、カウンターではすぐに出せない金額、という事で個室に通されたという訳だとのこと。


「それに・・・客のふりして買い取りを盗み見て、帰りに襲う不届き者もいるのでその者たち対策、というのもあるんですよ。」

「え!そんな奴もいるんすか、怖いっすね・・・。」

「君は田舎から来たのかい?ここは城下町だから人も多ければ不届き者も多い。人前でお金のやり取りするときは気を付けなよ。」


出会ってすぐの人に心配されてしまった・・・。

俺ってそんなに頼りないのか・・・?

いや、平和ボケした日本人だからしょうがないか。


「今お金は用意してるからちょっと待ってほしい。ところで、あの薬草はどこで手に入れたのかい?」

この質問に正直に答えることができないので、情報の精霊と事前に打ち合わせしていた。

「実は・・・この近くの山奥に薬草を採りに行ったら魔物に追いかけられて、気が付いたら山のてっぺんみたいなとこで、薬草の群生地だったみたいで。また魔物に追いかけられるかもと採れるだけ採って、無我夢中で山を適当にかけ降りてきたので、場所はわかりません。」

「この近くの山と言うと・・・サロ山辺りかい?」

「そ、そうです。」

どこの山まで打ち合わせしてなかったが、適当に肯定したら納得したようで、店長はうんうんとなにやら頷いていた。


「あそこの山は前からいい薬草があるという噂があったが、本当だったんだね。」

そうなの?

知らないんですけど。


そういった話をしていると、部屋に先ほどの男性が袋を持ってやってきた。

俺の渡した袋ではなく、上等そうな白い袋だ。

男性は袋を店長に渡すと、店長はテーブルに中身を出してきた。


青に金字のお札が10枚、緑に金字のお札が100枚。


「品質のいい上級薬草だから1束2万Gとして、10束で合計20万Gでどうだろう?」


予想もしていなかった金額に信じられず目を見開いた。

しばらく固まっていると、店長が苦笑してきた。


「驚くのも無理ないよ。それぐらい価値のあるものだから、この金額は妥当だと思っているよ。」

その言葉で我に帰った。

が、まだ信じられず確認をとらないと、と思案を巡らせる。

「・・・ええと、上級薬草の相場はっと・・・。」

そう言いながら左肩をポリポリと掻いた。

それが情報の精霊に意見を聞く合図である。


『上級薬草はだいたい1束1万G、品質の良さを加味されたとしても、1束2万Gはいい取引だろうね。』


本当にこの金額でいいのだろうか?と聞いても店長はにこやかにいいと言ってきたので、お言葉に甘えよう。


「・・・その金額でお願いします。」




因みにお札が2種類なのは急に集めたためと、1000G札が使いやすいためとの店長の配慮もあったとか。


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