116話 魔界も色々ある
この章のタイトルを「ローワン王城」から「ローワン王城と騎士団」に変更しました。
「俺は庵っていいます。そこら辺のしがないハンターやってます。よろしくです。」
俺は自己紹介してくれたザウトレーヴに自己紹介し返した。
ペコリと頭を下げると「よろしくね」とザウトレーヴは微笑んだ。
はい、自己紹介はこれですんだので勝手に質問ターイム。
「あの、魔王補佐って文字通り魔王の補佐してるってことすか?」
「そうだよ。魔王様とは昔から知った仲でね、魔王様の仕事を手伝ってるんだ。」
「魔界公爵って?」
「人間たちにも貴族はいるだろう?私たち魔人にも貴族制度があって、人間たちと違うのは魔人は血筋より実力や能力で魔王様が爵位を決めるということかな。人間たちの貴族制度と同じで公候伯子男で分けられていて、私は一応1番上の公爵だよ。」
魔王補佐で魔界公爵・・・ということは・・・。
めちゃくちゃ強いってことか!?どひゃーー!?
あ!強くて偉いんだったら、もしかしたら今までの態度良くなかったかも!
「え、すんません。そんなすごい人とは知らないでクッキー出したりして。それに砕けたしゃべり方ですんません。」
急いでそう言って頭を下げたらザウトレーヴは「気にしなくていいよ」と言ってくれた。
「クッキーは美味しかったし、しゃべり方は君がしゃべりやすいのでいいよ。魔人同士なら爵位の関係もあってしゃべり方は厳しいけど、君は人間だしね。ろくにしゃべれない魔物と話すこともあるし、私は気にしないよ。」
そうなのか、ホッ!
とりあえず、しゃべり方が気に入らないって攻撃してこられることはないな。
よかったよかった。魔界公爵なんて俺勝てるわけないよ。ははは。
「そういえば、君はここになにしに来たんだい?」
「ハンターの依頼でこの近くの湖に生えてる花を採取しに来たんすけど、それが終わって・・・ひ、暇だったんでなんとなく?周りを探索してみようって思って。そんで偶然この湖を見つけてびっくりしたんすよ。めちゃくちゃきれいでいいですねここ。」
精霊とこの湖に来ようってなって案内してもらったとか言うわけにはいかないから適当に探索したら偶然見つけたことにした。
「ふふふ、私も100年くらい前に偶然見つけてね。あまりにきれいで静かだから、補佐の仕事で疲れたりのんびり読書をしたい時に来るようになったんだよ。ごくたまに魔物が来たりするけどだいたい動物たちしか来なかったから、だから君が来た時は驚いたよ。」
「え、そうだったんすか?そんな感じに見えなかったっすよ。」
「ふふ、これでも補佐だから何事にも動じないように見せないとね。」
魔界もやっぱり色々あんのね。
そんな話をしてたらザウトレーヴはおもむろに胸ポケットから懐中時計を出して時間を確かめた。
懐中時計なんて持ってんのかとふと思った。
時計は庶民には普及してなくて王城に大きな振り子時計があったのは見た。
この世界で懐中時計は俺が見た限りではネフィーの執事が持ってたのを見たくらいだ。
公爵とはいえ気軽に持ってるって、もしかしたら魔界って人間界より進んでる?
・・・まあ、俺には関係ないか。
「もうこんな時間か。そろそろ魔界に帰らせてもらうよ。」
ザウトレーヴはそう言ってティーセットをまとめだした。
俺も慌てて手伝って、クッキーの残りは全部あげることにした。
そしてずっと出ていた空間の渦を軽く広げるとザウトレーヴが出入りできそうなほどの大きさの渦になった。
「私はたまにここに来るから、暇ならまた来るといい。次はお菓子を持ってこよう。」
「じゃあ俺も別のお菓子を持って来ることにします。また会いましょう。」
ザウトレーヴはひらひらと手を振って渦の中に入ってって、渦もシュルシュル音と共に消えた。
「いい出会いしちゃったな。魔人って聞いたからビビったけど、すげーいい人だった。」
『よかったわねイオリ。』
『僕らから見てもイイヒトだったよお。』
『見てる僕らも楽しかったよ。』
風の精霊・角の精霊・空間の精霊も俺たちの会話を楽しく聞いてくれてたみたいだ。
「よし、俺も帰ろっかな。」
こうして俺は町に歩いて帰り、夕方に町に着いて依頼を終えることとなった。
庵が依頼を終えた頃。
ある屋敷では、密かに集まった男2人の姿があった。
「おい、あのハンターのことはなにかわかったのか?」
ソファにふんぞり返って座り紅茶を飲む男の言葉に、対面のソファに行儀よく座る男はチラッと横を見る。
視線の先には、床に膝をつき頭を下げる騎士の姿があった。
「あ、あの・・・その・・・。」
騎士は顔面蒼白だった。
なにかを言いあぐねている姿に男たちは眉を潜める。
「なにを躊躇している?さっさと言え!」
「ひっ!・・・も、申し訳ありません!!なにもわかりませんでした!!」
騎士はそう叫ぶと土下座をした。
「「は?」」
男2人は同時に声をあげた。
「なにもわからないとはどういうことだ?鑑定魔法を使ったんだろう?」
「は、はい!他の騎士に気をとられている間にイオリに密かに鑑定魔法をかけたんですが・・・な、何回かけてもかからないんです。本当です!他の者にもかけてみたりしたんですが、イオリだけ!どんなに魔力を使ってもかからないんです!!申し訳ありません!!」
騎士はそう言って床にゴンゴン頭をぶつける。
「どういうことだ?あのハンターにだけ、魔法が効かないのか?」
「それか・・・精霊が拒否しているのかもしれません。」
行儀よく座っている男の言葉に偉そうに座っている男はぷっ!と吹き出した。
「精霊は例え極悪人だろうがなんだろうが魔力とイメージさえ与えりゃ言うこときく奴らだ。そんな奴らが拒否するわけないだろう?」
男は馬鹿にしたように笑った。
行儀よく座る男は一瞬睨むも「・・・そうですね。」と呟いた。
そして気を取り直すように男は土下座する騎士に質問した。
「では、近くで見てあのハンターはどうでした?選ばれた騎士20人の中にそれとなく紛れ込ませたのですから、それぐらいのことはわかるでしょう?」
「そ、それが・・・とんでもないです!」
土下座する騎士はそう叫んだ。
「打ち合い・弓矢・馬術・魔法のどれを取ってもバケモノ並でそれをなんでもないようにやってしまうんです。特に魔法なんて、シャイニングレイを20個も出したのにけろっとしてたんです。」
「「20!?」」
「それに!1番驚いたのはクープーデン様が張った結界を切って割ったんです!本当です!世界最硬度のために誰も破ったことのない結界が割れたのを皆で見たんです!」
「「結界を!?」」
2人は思わずぽかんとした。
「ふ・・・ふざけるな!!変な冗談を言うかお前は!」
「ほ、本当なんです!!他の騎士に聞いてもらって構いません!御子息もご覧になってました!!」
「なに?アイツもか!?・・・後でアイツにも聞いてみるか。」
偉そうな男はふんっとため息をついた。
「鑑定魔法もかかりませんし、俺、抜けさせて下さい!あのバケモノにもし気付かれたら殺されるかもしれないんです!お願いします!!」
騎士はそう言って震えながら土下座する。
「そうですね・・・。鑑定魔法がかからないなら君がこれ以上近くにいたら我々の存在に感づかれるかもしれません。あなたを病気ということにして、騎士を抜けられるように手を回しましょう。」
「あ、ありがとうございます!!」
騎士は何度も頭を下げて部屋から出ていった。
「やれやれ・・・。彼はスパイとして色んな国に潜入したことがあるというのに、そんな彼があそこまで恐れますか。」
「ふん、役に立たんな。」
「まあ、幸いにも潜入させているのは彼だけではありませんし、様子を見ましょう。」




