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(2019 冬のダークな)おくりもの  作者: 曉月 栞


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2/4

 太陽に向かって草木がめきめきと腕を伸ばす頃、アリのお店も出来ました。湖の近くなのに湿気は少なく、仕入れにも適した場所でした。周りにもたくさんのお店が出ています。2匹は朝早くから夜遅くまで働いて、生活はとても忙しくなりましたが、とても満足でした。

 「クワガタさん、こんにちは。席は空いてますか。」

 「おう、いらっしゃい!今日は予約が入ってるから、こっちのカウンターでいいかい?」

 「もちろんです。では、日替わりランチを2つ。」

 「あいよ!」

 「今日は席があって良かったなあ!」

 「ここのランチは本当においしいものね!」

 「前はこんなんじゃなかったんだけどね。お客さんが広めてくれて。ここ2、3年で急に忙しくなったよ。」

 「やっぱりクワガタさんも、最初は大変だったのね。」

 「そうさ。君たちも頑張んなよ。」

 「はい。」

 「そうだな。俺らのエプロンも、開店以来同じのを着ているな。ここらで新調するか!アリさん、頼むよ、今風の格好いいやつ。従業員の人数分。」

 「ありがとうございます!」

 こんな風に、アリは少しずつお客さんを増やしていきました。


 プシュ!お疲れ!

 2匹のアリは、ビールの入ったグラスをかちりと合わせました。アリの夫婦は、とてものんべえでした。

 「この時間が一番幸せだわ!」

 「今日はクワガタさんがたくさんオーダーしてくれたしな!」

 「ごはん作るわね。頂いたお漬物を出すからつまみに食べてて。」

 「ゆっくりでいいよ。君も疲れているんだし。」

 「ありがとう。今日はサバの味噌煮を作るわね。お刺身もあるから先に出すわ。」

 その時、コン、コン、とドアを叩く音が聞こえて、アリのご主人が出て行きました。戻って来た時は、両手に大きなトレーを持っていました。

 「……バッタの奥さんから。」

 トレーの上には、かつ丼とナムルと芋の煮っころがしと、袋の中にはぬか漬けがごろごろと入っていました。

 「ぬか漬け、何が入ってる?」

 「ん……きゅうりとかぶとにんじんとなす……みたいだな。」

 そう、とアリの奥さんは小さく溜息をつきました。

 「昨日も同じものをもらっているのよ。きゅうりしか出さなかったけど。ぬか漬けはとてもからだにいいし、バッタの奥さんのお漬物は本当においしいけど……その量を毎日食べたら塩分のとりすぎだわ。実は、結構捨ててるのよ。おことわりしようかしら。」

 「いや、それはダメだ。」

 アリのご主人は首を振りました。

 「あの人は僕らにご飯を作ることが生きがいなんだ。それに……ここへ来た当初、ご飯だけでなくどれだけ世話になったか分からない。がっかりさせてはいけないよ。」

 「そうね……。今晩はどうしようかしら……。」

 「サバは明日食べればいい。」

 「昨日もそう思ってたのよ。でも、春巻きと麻婆豆腐と漬物をもらってしまったじゃない?サバはもう限界だわ。」

 「そうか。じゃあ、君のご飯を待つよ。頂き物は捨ててもいい。」

 ううん、とアリの奥さんは首を振りました。

 「今回はサバは諦めるわ。これまでも自分が買った食材を悪くさせてしまって、何度も捨てているの。でも、明日からはもらった方を捨てさせていただく。ふう……あなただってお腹を空かせているし、出来ているものがあるのに待たせるのも気がひけるし……こんなことを悩むこと自体、困っちゃうわね。」

 「今までだって遅い時間に食べていたのだから、大丈夫だよ。君の好きにしたらいい。」

 「ありがとう、そうするわ。」

 アリの奥さんは暗い表情で、サバをゴミ箱に捨てました。

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