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(2019 冬のダークな)おくりもの  作者: 曉月 栞


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1/4

 「この辺はどうだい?」

 アリのご主人は尋ねました。

 「ええ、とってもいいと思うわ。」

 アリの奥さんもにこにこ顔です。

 「では、ご近所さんにごあいさつしようか。あの草むらの中に誰か住んでいるみたいだよ。」

 2匹はてくてくと歩き出しました。


 コン、コン、コン


 ぷっくり太ったバッタの奥さんが顔を出しました。

 「こんにちは。僕たち、引っ越して来たのですが、あの椿の木の下におうちを作ろうかと思ってるのです。大丈夫でしょうか。」

 「まあ!まあ!まあ!もちろんかまわないわよ。ご近所さんが出来て嬉しいわ!」

 「ありがとうございます。よろしくお願いします。」

 「そこの納屋に大工道具が入ってるわ。好きに使いなさい。」

 「それは助かります。」

 2匹はお礼を言って、てくてくと戻りました。


 2匹は借りた大工道具でせっせとおうちを作りました。すると、ぎょろりとしたバッタの目に気付きました。さっきのバッタの奥さんとは違うようです。大きなバッタは言いました。

 「妻に、引っ越して来たアリさんがいると聞いてね。手伝いに来たよ。」

 大きなバッタはご主人でした。

 「ありがとうございます!」

 「力仕事は得意なんだ。まかせとけ。」

 バッタのご主人は、本当に力持ちでした。2匹でやったら何日かかるかわからない仕事を、あっという間に片付けてしまいました。

 「みなさーん!ごはんですよ!」

 出来たばかりの戸口から、バッタの奥さんの声がします。

 「歓迎のごちそうを作ったの。みんなでいらっしゃい。」

 「僕たちまでいいんですか?」

 「もちろんよ!」

 バッタの家のテーブルには、ごちそうが溢れんばかりに並んでいました。としごろのお嬢さんも2匹いて、忙しそうに働いています。

 「かんぱ~い!!」

 みんなで楽しく乾杯しました。

 「アリさんは何のお仕事をしているの?」

 バッタのご主人が尋ねました。

 「僕たちは仕立て屋なんです。ここよりずっと東の方にいたのですが、大きな道路になってしまって。」

 「まあ、それはお気の毒に。」

 「そうだったのか。では、ここで商売を?」

 「いいえ。ここは住むにはいいけど、商売には向きません。もう少し賑やかなところを探します。」

 「賑やかなところか。」

 バッタのご主人は考え込みました。

 「北の山は賑やかだな。南の湖もいいかもな。西側にはおしゃれな街がある。」

 「賑やかな場所も多いんですね、安心しました。色々探してみますよ。」

 「なんなら乗せてってあげるけど?」

 「いえ、それには及びません。アリの歩きやすい道っていうのもありますから。」

 「そうだな。困ったことがあったら何でも言ってくれよ。」

 「ありがとうございます。頼もしいご近所さんがいてくれて心強いです。」

 2匹はぺこりと頭を下げました。


 翌日から2匹のお店探しが始まりました。午前中にどこか一か所を見て回り、一度家に帰って休憩して、午後からまた別の場所を見に行く、という繰り返しでした。お店の場所を見るだけでなく、仕入れるところや流通に便利な場所なども視野に入れて探しました。

 一度家に帰ると、バッタの奥さんが大抵顔を出しました。奥さん以外の家族は、それぞれお勤めに出ていました。

 「アリさん、こんにちは。お漬物を持ってきたわよ。」

 「まあ、ありがとうございます!なんておいしそうなのかしら。」

 「ああ、うまそうだ。これは酒のつまみによさそうだ。」

 「また持ってくるわね。」

 バッタの奥さんはぴょんぴょんと軽やかに去って行きました。

 午後の視察を終えて2匹が帰宅すると、コンコンとノックの音が聞こえます。

 「アリさん、こんばんは。炊き込みご飯があるの。よかったらどう?」

 「いい匂い。でも、いいのかしら。お宅で食べる分がなくなってしまうのではないですか。」

 「いいのよ。あの子たち、ご飯は食べないでコンビニのおそばを食べるって言うのよ。」

 「なんてこと!こんなにおいしそうなのに!」

 「この間作った時も、ごっそり捨てたのよ。だから食べて。まずかったら捨てていいから。」

 「捨てるなんてもったいない!ありがたくいただきます。」

 「よかったわ。それから、お漬物も。」

 「ありがとうございます。お漬物、とてもおいしかったです。」

 「いいのよ。また来るわ。」

 バッタの奥さんは、毎日差し入れをするようになりました。




 

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