第六十七話 駐車場
おかしいな・・・
普段は開いている駐車場の門が閉まっている。
もしかして今日は早く閉める日だったのか?
とりあえず警備会社に電話してみよう。
「はい、山川警備です。」
「すいません、テナントで入っているドラッグストアの者です。
この時間っていつも門が開いているはずなんですけど、今日は何で閉まっているんですか?
もし何かの間違いとかなら開けてほしいんですが無理でしょうか?」
私がそう尋ねると向こうの方でため息が聞こえた。
やっぱり私が閉まる時間を確認していなかったせいだろうか・・・。
「それは大変申し訳ございませんでした。
今から開けに行きますので10分ほどお待ちいただけますか?」
「はあ、開けてもらえるなら別に構いませんけど・・・」
「ではすぐに参ります。
本当に申し訳ございませんでした。」
どういう事だ?
結局警備会社のミスって事なのか?
でもそれならあのため息と謝り慣れてる感じは何なんだ?
考えても分かんないな。
10分くらいかかるって言ってたし、タバコでも吸って待つか。
・・・・・・あ、携帯灰皿忘れた。
仕方ない、ちょっと歩くけど端の喫煙所まで行くか。
ここは夜9時を過ぎると途端に辺り一面が暗くなる。
というのも私が働いているのは郊外のショッピングセンターで、周りにはあまり民家が無いからだ。
そして私の車から喫煙所までは50mほど離れている。
正直に言って怖い。
特に駐車場内は真っ暗闇と言って差し支えない空間がある。
以前同僚がそこから飛び出してきた事があった。
私を脅かすために飛び出してきたのだが、まんまとやられてしまった。
それ以来この駐車場がちょっと苦手なのだ。
スマホの明りを頼りに早足で喫煙所を目指す。
ああ、怖い。
ガサッ!
驚いてそちらを照らすとビニール袋が風に舞っていた。
ああもう!
一度その場で深呼吸をしてもう一度喫煙所を目指す。
「お客さん」
「わっ!!」
思わず声が出てしまった。
恐る恐るお客さんと聞こえた方を振り向くと、そこには制服を着た、おそらく警備の人が立っていた。
ああ、ビックリさせないでくれよ・・・。
「駐車場はもう閉まっている時間ですよ。何をされているんですか?」
?
ああ、そうか、この人が駐車場を閉めたのか。
もしかして連絡が行っていないのかな?
「いや、先ほど電話でも話したんですけど、駐車場を出ようとしたら門が閉まっていたんですよ。
だから警備の人を待っていたんです。」
「ああそうでしたか。でも時間内に出てもらわらないとこちらも困りますので次からは気を付けてください。今鍵をとってきますので。」
そう言うと警備の人はスタスタと歩いていった。
・・・は?
いや今の態度おかしいだろ。
そりゃこっちが悪いのかもしれないけどあんなに感じ悪く言う必要あるか?
クソッ、ムカつくな。
私がイライラしながら待っていると5分もしないうちに鍵を持って現れた。
あれ、さっきの人じゃない。
50代くらいの恰幅の良い男性と20代くらいのちょっとチャラい感じの2人組だ。
恰幅の良い男性がすまなそうに声をかける。
「すいませんお待たせしました!
門の鍵が閉まっているとお電話いただいた方ですよね?」
私はイライラする気持ちを抑えながら務めて冷静になろうとした。
でも無理だった。
一言言わないと気が済まない。
「はい、そうですけど、さっきの人はどこですか?
私が一方的に悪いって感じで言いきってどこかに行っちゃったんですけど。」
「ああ、申し訳ございません。
こちらの不手際です。
その者には厳しく注意しておきますので。
ちなみに60代くらいで痩せ型の男性でしょうか?」
「そうです、そうです、その人です!
本当に凄く嫌な感じでした。
あ、でも、確認なんですけど、私の方が間違えてるって事は無いですよね?」
「はい、それは大丈夫です。
二度と無いように注意しておきますので。
ではお車の方にどうぞ、今鍵を開けてきます。」
結局私が帰るまであの警備員は現れなかった。
ムカムカするけど注意してくれるって事だし、許すか。
よし、カラオケでも行って発散するか!
これ以降私が転勤するまで同じ事は起きなかった。
「あの、ちょっといいすか?」
「どうした?」
「さっきのどういうことすか?」
「どういう事って?」
「だって今日の当番俺ら2人だし、そもそもうちの会社に60代の人なんていないでしょ?」
「ああそうか、お前まだ知らなかったな。
出るんだよこの駐車場。」
「出るって、まさか・・・」
「そう、幽霊だ。
5年くらい前まで働いていた人なんだけど、心筋梗塞で亡くなってな・・・。
その人が亡くなった日が今日なんだよ。
ぶっきらぼうだけど責任感の強い人だったから死んでも仕事してんだろうな。
ただな、あの人が亡くなった後に駐車場の閉まる時間が変更になったから、毎年こういうトラブルが起きるわけだ。」
「あの、その人って、あんな感じですか?」
「え、ああ、そうそうあの人。
もっさん、お疲れ様!
今日はもう上がりで良いよ!!」
そう言われた男は煙のように消えた。
「お前もうちで長く働くつもりなら慣れておけよ。
こんな事日常茶飯事だから。」




