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第四十五話 いじめ

俺の学校ではいじめがあった。

殴られたり、蹴られたり、物を隠されたり。

それはまだ軽い方で裸の写真をSNSにあげられたり、カツアゲの首謀者にされ他校の不良に絡まれたり、とにかく酷かった。

いじめのターゲットになったのは同級生の男子A。

始まりは臭いとかとろいとか、何となくで始まったようだ。

次第にいじめはエスカレートし、やがてAは引きこもるようになった。


Aが引きこもってからもいじめは続いた。

SNS含めネット上での誹謗中傷や事件のでっち上げ等いたずらではすまされない物ばかりだ。

結局このいじめは彼らが卒業するまで続いた。

その間Aが家の外に出る事は無く、いつの間にかA一家はその街から消えていた。



それから10年後、俺達の中学の同窓会が行われた。

もちろんAの姿は無かった。

俺も出る気は無かったが友人にどうしてもと頼まれ仕方なく参加。

待ちあわせて同窓会に行くと、様変わりしている者も多く驚かされた。


少し髪が薄くなっている者や顔つきが変わった者、身長が40㎝伸びている者もいた。

嫌々来たが思ったよりも楽しんだ俺は、ふといじめをしていたグループに目をやった。

あれから少しはマシになったのだろうかと思いを巡らしつつ彼らを探す。


ああ見つけた、主犯格の奴だ。

今でも悪そうな雰囲気がある。

うん?

何かおかしい。

昔いた取り巻きが1人もいない。


高校に入っても連るんでると聞いていたからてっきり今でも一緒だと思っていた。

まあ10年もあれば変わるか。

それに主犯格も何だか落ち着きがないようだし。

・・・今でも更生はしてなさそうだな。



まあいいかと切り替えて、旧友と楽しい時間を過ごした。

会も終盤になって、雑誌記者になったと言った奴と話をする事になった。

昔はよく喋っていたが卒業以来1度も会っておらず、昔話に花が咲いた。

ついでにそいつにいじめっ子達の事を聞いてみた。


「なあ、あのいじめしてた奴らってもうつるんでないのか?」


「え、お前知らないの? あいつらかなり酷い目に遭って死んだ奴もいるぜ」


驚いた、あいつらが酷い目に、っていうか死んだ?

殺す事はあっても絶対に死ななそうだったのに。

どうしてと聞くと、雑誌記者はきょろきょろと周りを警戒し、小声で復讐されたらしいと教えてくれた。

時間が無いから詳しい事が知りたかったら今度教えてやると言われ、俺達は連絡先を交換しこの日は別れた。



俺は誘ってくれた友人と帰りながらAの話題を振ってみる。

すると友人はAをいじめた奴らが凄い事になっていると言った。

かなり有名な話なのかと聞くと、一部ではかなり有名だよと言われた。


Aをいじめていたのは10人だ。

主犯格の男子と彼女、取り巻きの男子3人、そして便乗した男女5人の合わせて10人。

このうち3人は有名大学の進学が決まっていたのだが、入学直前になって取り消しになったらしい。

どうやら彼らの悪行が大学に証拠の動画付きで送り付けられ、その動画はSNSにもあげられたとの事だ。

最初は彼らに恨みを持つ誰かがやったのだろうと思われていたが、どれだけ探しても密告者は見つからず、そもそもいじめや犯罪の事実は間違いないので合格は取り消し。

大学側が正式に声明を発表する事態になったらしい。


俺はその事実を全く知らなかったので驚いた。

友人は続けて、就職が決まった会社にも送り付けられたらしいと教えてくれた。

これは大学合格が取り消された人間とはまた別の人間だ。

彼らもまたいじめや未成年時の飲酒等が問題視され内定が取り消された。


だから主犯格は1人でいたのか。

そういや死人も出たって言ってたな。

友人にその事を聞くと、取り巻きの1人が病気で亡くなったと教えてくれた。

精神病を患って発作的に自殺したらしい。

詳しくは知らないけど因果応報ってあるんだなと友人は言っていた。


本当にそうか?

因果応報と言うにはあまりにも出来過ぎている気がする。

もしかするとこれはAの復讐かもしれない。

俺は雑誌記者に近いうちに話を聞かせてくれと連絡した。



数日後、俺は雑誌記者から驚愕の事実を聞かされた。

なんと主犯格と彼女以外は全員何かしらの報復を受けていた。

以前友人から聞いた大学と就職は1人1回ではなく複数回行われていた。

特にAを酷くいじめていた奴ら程被害が酷かったそうだ。


まず一番軽いものでAのいじめ現場の動画を相手の学校や企業に送られる。

次に親戚や地域住民にデータ付きのメールが送付され、開くとその動画が流れる。

Aのいじめだけでなく高校や大学で行った事も全て。

これは便乗した男女5人に行われた報復だ。

彼らの中には引きこもりになってしまった者もいたらしい。


取り巻きの3人の内1人は自殺、1人は他殺、1人は服役していると言った。

5人に行われた事に加えて近くのコンビニやスーパー、警察にもデータが送りつけられたらしい。

そのような状況で1人は精神を病み自殺。

残りの2人は疑心暗鬼から殺し合いになった末、1人は死に、1人は刑務所と言うわけだ。


あまりの壮絶さに言葉が出なかった。

でもこうなると主犯格とその彼女はもっと酷い目に遭っているのではと思ったが、意外な事にこの2人には何も起きていなかった。

むしろこの2人の方が酷い目に遭いそうなのにな。


俺がそう言うとああ、だから2人には他の8人が手を下したと教えてくれた。

許されるはずがないのだ、他の8人は何かしらされているのだから。

もしAが何もしなくてもこの2人は罰を受けなければならない。

自分達も受けたのだから。

そう考えたのだ、他の8人が。


話し合いをしたわけではなく個々人がそれぞれ主犯格と彼女に対して嫌がらせを行った。

自分達がされた事に加え事実無根の噂まで広めた。

こうなるともう収集がつかない。

主犯格と彼女の生活は荒れに荒れた。

現在は2人とも生活保護を貰いながら別々に暮らしているらしい。


就職しようにも嫌がらせのせいで就職できず、結婚しようにも相手方にこれまでの事が即座に伝わる。

地域のボランティア活動にすら参加させてもらえない状況で、彼女は廃人寸前という話だ。

主犯格はかろうじて尊厳を保っているが、最近は突然奇声を上げたり、幻覚を見たりしているらしい。

施設や病院に行くのも時間の問題だろう。



これを全部Aがやったのだろうか?

俺がそう聞くと雑誌記者は首を横に振った。


「俺も気になって調べてみたんだが、まず中学を卒業した後の10人の生活を全て見張るなんて無理だろ?皆ばらけて進学してるんだから。」


協力者がいたのだろうかと考えたが雑誌記者の次の言葉でその考えも打ち消された。


「協力者の線も洗ったが、こっちもいなかった。迷惑してる奴らはいたけどどいつもこいつも報復を恐れて静かなもんだったよ。それに飲酒の映像は奴らの仲間内からじゃないと流出しないし、何よりAのいじめ現場の動画はどうやっても手に入らないしな。」


どういう事か聞くと、雑誌記者は言い辛そうに口を開いた。


「あのな、そもそもAは俺達が卒業した年に死んでるんだよ。」


Aが死んでる?

待て待て、じゃあ一体誰が復讐するんだ!?

Aの両親か、それとも復讐代行でも雇ったのか?

混乱する頭がおかしな想像を膨らましていると雑誌記者が続けていった。


「それにあいつ、いじめられてた時は携帯やデジカメなんて持ってなかったんだよ。これはあいつの両親に取材して実際に裏付けもとれた。俺がいじめについての取材をしていると言ったら快く教えてくれたよ。2人とももう二度と息子のような犠牲者が出なくなるならって言ってた。」


そんな雑誌記者の言葉を聞きながら俺の頭は違う事を考えていた。

Aの両親がそう言っていたならおそらく2人は犯人じゃない。

それに学校の様子や動画データを残そうと思ったら教師にも難しいんじゃないか?

だとしたら考えられるのは・・・。


「そう、幽霊にでもならなけりゃこんな事不可能なんだよ。」


俺が何を考えているのか察した雑誌記者がそう言った。

自分の考えを否定するようにさすがにそれは飛躍し過ぎじゃないかと言ったのだが、、雑誌記者は俺もそう思いたかったよとうなだれ1冊のメモ帳を出してきた。

ここには俺が調べた密告の内容が載っている。

これを見たらお前も俺と同じ考えになるはずだよと力なく笑った。



そこには衝撃的な内容が記されていた。

彼が調べた限りではメールに添付された動画はメールを開いた時点で再生され、そのまま消滅したらしい。

それはどの大学や企業でも同様だった。

公式発表では証拠が送り付けられたとなっていたが、実際には携帯やパソコンにメールが届き動画が自動再生されそのまま消滅。


動画にはどこの中学校で誰がAをいじめていたかの情報も載っていたらしい。

かなり詳細に書かれており、1度で全てを把握するのは本来難しい内容だった。

その後メッセージが浮かび上がり、そこには『こいつにころされた けしてゆるさない』と書かれていたそうだ。


気味が悪くなった関係者が当時の学校関係者に聞き込みをし事実が発覚。

このまま合格や採用すれば自分達も酷い目に遭うのではないかと怖くなったと。

何より不気味だったのはいつまで経っても動画の内容が頭から消えない事だったらしい。

全てが鮮明に思い出され、片時も忘れる事が出来なかったと。

今でもこの話をすると鮮明に思い出すんですよと困った顔をしていたとある。



Aの復讐かなと俺が呟くと、雑誌記者はどうだろうなと返した。

だとしてもしょうがないと思う。

少なくともあいつには復讐する権利があるはずだから。

俺がそうだなと呟くと今度は何も返ってこなかった。


少しの沈黙を経て、俺はこれを記事にするつもりだと雑誌記者が言った。

供養ってわけじゃないが、少なくとも俺は助けなかった。

だからオカルトでも何でも俺の記事でいじめが減れば、俺も少しは救われる気がする。

そう言った雑誌記者の顔は少し憂いを帯びながらも力強く見えた。

以外に考えてるんだなこいつも・・・。

雑誌出たら教えてくれよと言い、俺達は別れた。


あれから数年が経った。

結局記事は発表されなかった。

記事を書いていた記者が変死したからだ。

偶然雑誌記者の上司に会う機会があり、記事を見せてもらえる事になった。

あいつの書いた記事は色々と誇張してあり、真実を伝える記事とはとてもじゃないが言えなかった。

もしかしてそれがAの怒りに触れたのだろうか。


俺がこう考えるのにはわけがあった。

何故なら不幸になったのは雑誌記者だけじゃなかったからだ。

事故に遭ったり、病気になったり、会社が倒産したり、それぞれが大なり小なり不幸な目に遭っている。


どうやらいじめグループだけでなく、見てみぬふりをした俺達も許される事はないらしい。

まだ俺には何も起きていないが、そろそろ俺の番だろう。

あの時Aを助けていれば何か変わったのだろうか?

それとも俺がいじめられるだけで何も変わらなかったのだろうか?

今となってはもう分からない。

Aの復讐に怯えながら、俺は今日も仕事に向かった。

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