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アカネとハナ。  作者: 藤桃杏
1/1

名もなき同士

大魔道士・ハナ。


それは崩壊へと向かい続けた世界を修復し、自らの命を花として大地を緑で包み、自らの血を生命の水として動物を生かし、自らの体全てを世界の恵みとした英雄。




少年は森を



歩き、進み、迷う。



魔女は森を



歩き、進み、探す。



少年は森で



見て、触り、進む。



魔女は森で



見て、摘み、笑う。



少年は森に



疲労、困惑、不幸。



魔女は森に



興味、幸福、感謝。




少年は

人影を見つける。



魔女は

探しものを見つける。




少年は体力を振り絞って駆け寄る。


魔女は屈んで目当てのものを摘む。




少年は人影に倒れ込む。


魔女はなにかの衝撃で横に倒れる。




少年は声を出そうとする。


魔女は驚いて目を見開く。






「僕を、拾って。」





少年はそのまま目を閉じる。


魔女は笑って少年を抱き抱える。





これが最初の出会い。







少年は目を覚ました。


ここはどこだろう。



辺りを見渡していると、視界に人が映った。



僕は驚いて声を上げる。



するとその人も驚いて、一歩後ろへ飛び退く。




「ぁ、……ぼ、僕……」



声が思うように出ない。



その人は両の手のひらをこちらに向け、“待ってて”の仕草をする。



僕は頷く。



するとその人は、この小屋の奥の方へ消えた。



少しすると戻ってきた。


その手には紙とペンがあった。



そして僕の寝ていたベッドの横の椅子に腰掛け、ペンを動かす。



“私は名もなき魔法使いです。”



「ま、ほう……つかい、?」



魔法使いはこの世界でも珍しい人種。

滅多にお目にかかることも無い。

基本的に王宮への強制労働を強いられる。



それくらいの知識はあった。


少年は周りより少し賢かった。



“君は、誰?”



その魔法使いは眩しいくらいのほほ笑みを浮かべている。



「僕は、……名前なんて、ない。」



そのほほ笑みを見ないように、僕は俯く。



魔法使いの顔も少し暗くなる。



“私がつけてもいいかな?”



俯いた先に紙が差し出される。



僕は魔法使いの顔を見る。

先ほどと同じ太陽のような笑顔を浮かべている。



「つけて、くれるの?」



魔法使いの藤色の瞳と今日初めて目が合う。



“私でよければ!”



魔法使いはずっと微笑んだままだった。




「じゃあ、つけて。……でも、つけたら…僕を、捨てられないよ?」



魔法使いは嬉しそうに書いていたペンを止め、じっと僕を見る。



そして別の紙になにかを書き出した。




“私は君を捨てる気なんてないよ。


君はここに居ていいんだよ。”




そしてさっき書いていた紙を見せてきた。




“君の目は綺麗な赤だから、君はアカネ。


君の名前は、アカネだよ。”




「アカネ……。僕、気に入った。」



“それは良かった”



魔女は嬉しそうに笑っていた。



「魔女さんの名前は?」



“さっきも言ったけど、私は名もない魔法使いだよ”



「僕がつけてもいい?」



魔女は少し驚いた顔をした。

でもすぐに微笑んで



“もちろん!なんて名前?”



ワクワクしたように聞いてきた。



だから僕は、自分の好きなものの名前をあげることにした。



「魔女さんの名前はハナ。今日からハナだよ。」



魔女は、……ハナは今日一番の笑顔で笑った。




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