私が無能なせいで千織の負担を増やすようなこともしたくない
「・・・別に生徒会に入ってほしいとまで言わない
ただ、先日のあの則武さんとの距離感は、私たちから見れば異常だったの
何度かあの人とは話したことがあるけど、誰とも親しそうにはしていない則武さんがあんな風に話すの初めて見たから
私なんかと話している時とは明らかに対応が違ってた」
異能がD判定しかないという背景を知ってから雪峰さんのアルカイックスマイルを改めて観察すると少し寂し気に映ってしまった。
なんか複雑な気持ちになってしまうな。
色々抱え込んでないといいけど
「あとね、私も千織も中央中学出身でもないから他の五校の生徒会事情に詳しいわけではない。
勿論、柊君の言う通り、今年の五校祭は五家の代理戦争的な側面が大いにあるから普通の生徒が首をつっこむべきでないという言い分はその通りだと思うし納得する
それでも、現状を考えれば私もなりふり構ってる場合ではないから・・・
これ以上、私が無能なせいで千織の負担を増やすようなこともしたくないし」
「紗希!そんなことを言わないでください!兎に角、私からも本当にお願いします!
私も生徒会副会長になんてもともとなりたいとは思っていませんでした
ただ、紗希にこの戦いで勝ってほしいという理由だけでこうして生徒会の役員になって五校の一員となって戦っています。
そして、柊君の力は必ずこの戦いでプラスになるはず。」
「・・・え、そんな2人とも頭を上げてよ!」
畳みかけるようにまた2人は頭を下げる。
もうなんか「これ以上そんな姿見たくない!」なんて逆にこっちが止めたくなるくらいに必死だな
そこまでしてどうして五校祭に勝ちたいのか正直俺にはわからなかったし
懇願されたところで、俺の持ってる力なんて焼け石に水程度どころかマグマに水蒸気ぐらいだろうに。
それでもこんな可愛い女の子にここまでお願いされて、しかも事情も知ってしまったこの状況でここから冷たくあしらえるほど俺も鬼じゃない。
2人の期待感のハードルの1億分の1ぐらいしか俺の力はないけどそれでも、何か協力できることがあるのならこの子たちのために協力してあげたいと思ってしまっていた。
どうしてそう思ったのか自分でもよくわからないが
多分、雪峰さんの立場が中学時代の俺とダブって見えてこの子を放置することは昔の自分を見捨てることのように思えてしまったからだと思う。
「はあ、2人の言い分はよくわかった
中学時代に自分で決意したことを捻じ曲げるのはどうだろ、と思ったからさっきは断ったけど
でも、そこまで頼まれたら・・・
おっけ
生徒会に入る気はないけど、できることがあったら俺も協力ぐらいならするよ」
それに、改めて振り返ってみると、こないだ久々に則武さんと話しててあの態度をみて
あいつ等のいうことをただただ素直に聞いてるだけってのもなんか腹がたってきたし癪な気もする。
「ほんとですか!
ありがとうございます!
て、生徒会には入ってもらえないんですか!?」
すごい笑顔になったと思ったら全力で驚き顔になる西條さん。
なんていうか感情の起伏が忙しい奴みたいだった。
身長の小ささや顔の作りの幼さと相まって赤ちゃんみたいだななんてちょっと思う。
「いや、それは嫌・・・
そもそも俺はD判どころかE判だぞ
俺なんかが入ったら浮くだろ完全に」
学校中から袋叩きに会う未来しか見えないからそれだけはマジで勘弁してほしい。
しかも学校でも陰キャで影の薄い俺が急にそんな明るいところ入ったら一瞬で日光消毒されて消え失せるわ
「私からもお礼を言わせて・・・
こんな面倒ごとに付き合ってくれて本当にありがとう
必ず何かの形で返すわ」
雪峰さんも表情そのものはそこまで変わらず、微笑みを絶やしていないものの
心なしか喜んでくれているように思えた。
「いいよ気を使わなくて
さっきも言ったけど俺よりも雪峰さんのほうがはるかに大変な立場だし
それより俺に対するハードルは頼むから下げてくれよ
てかもうハードルは地面に埋めるぐらいの勢いで期待はしないでくれ」
「いや、現段階で生徒会役員になって頂けないのなら
柊君にはこれから頑張ってもらってA判定になってもらいましょう!
そしたら、大手を振って生徒会にも入れますしね」
「いや、何でそうなんだよ・・・逆転の発想すぎるだろ
ハードルは下げろっていってんじゃん」
「ふふ、千織、柊君のことが気に入ったの?」
「そうですね!雰囲気に覇気はないですけど、悪い人ではないと思いますので
それに、私たち2人だけで頑張るよりも協力者はいたほうがいいですし」
「一言余計だぞ、おい」
高木先生といい、覇気がない、覇気がないてほんとなんなんだよ……
「そうね
私も自分の異能について言える人は今まではうちの高校には千織しかいなかったから
普段はなかなか言えないし、柊君にも言えるってなると心強いかもしれない
同じ低レベル能力者として頑張りましょ?」
「低レベルどころか俺は無だけどな・・・
E判定だし・・・」
LARMSの奴らには先に謝っとく、すまんな
俺はまだ五校と関わり続けなければいけない運命みたいだ。