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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
邂逅篇
8/82

私の異能はね、正直にいうとまだD判定しかないの


則武さんて今や御天で最強の異能力者なんて言われてんだな

今更知ったわ

気が付かないうちにずいぶん遠い存在になったもんだよ、武后様は

月とすっぽんとはこのことだな。



A判定とE判定の差は月とすっぽん以上にありそうだが

それはさておき、この提案には乗りたいとは思えなかった。

中学時代の二の舞になるのも嫌だしな。

変な期待を持たせる前にさっさと断っておかないと



「えー・・・

あの日に則武さんにも言われたけど、五校とその有力家の小競り合いに参加したいなんて正直今まで思わなかったし

そもそもそういうしがらみが嫌だったから、俺は中学時代の友達が進学しないであろうこの青月高校を選んだわけだしな」



「そこをなんとかお願いします!

私は紗希にどうしても五校祭で勝ってもらいたいんです。

でも、残念ながら今の青月は異能力者の総合力で考えてもトップの紅陽とは大きく差がついてしまっています

その差を埋めるためにはやっぱり柊君みたいな他校の事情に詳しい人は圧倒的に必要なんです」


西條さんの縋るような必死の表情にちょっと心が揺らいだが、それでも俺の気持ちはNOのままだ。


「そーはいってもな・・・

しかも則武さんだけじゃなくて他の五校関係者にも中学時代に今年は関わらないでほしい、言われてんだよなあ

この間の一件は訳が分かってなかったから介入しちゃったけど

もうこれ以上は悪いけどごめんだよ

トラウマをほじくり返したくもないし

ほんと期待に答えられなくて申し訳ないのだけど・・・」




「・・・ねえ、柊くん」




俺はこれ以上関わる気はない、と言い切る直前に、伏し目のまま雪峰さんの冷たい声が遮った。




「ん、なに」




「・・・もうバレてると思うけど私の異能はね、正直にいうとまだD判定しかないの

千織は勿論、B判定で青月でもエース級なのだけどね」




「は?えっまじ!?

でででっ、D判定!?」




いきなり爆弾発言をぶっこんできやがった。一体どうしたんだよ急に。


驚きすぎて噛んじゃったじゃん


D判定?


青月高校の生徒会長がか?

青月高校の有力家雪峰家のお嬢様が?

そんなことあり得ないだろ




「あ、あれ、まだ知らなかったんだ

知らないなら驚くよね・・・

普通D判定しかない人が生徒会長になるわけないものね」




「え!紗希!言ってもいいのですか?」




「則武さんにバレちゃった場に柊君もいたから今更隠しても仕方ないでしょ

それにこのまま私の異能強度が上がらなければいずれみんなにバレちゃう話だから」




そういえば去り際にそんなこと言ってたかもな則武あいつ

異能がなんとかって

則武さんがあの日えらく高圧的だったのは、雪峰さんに強力な異能が発現していないことを見抜いたからていうのもあったわけか




「則武さんがやってきたあの日、千織しか則武さんに力で抵抗できなくてね

それで則武さんにもバレちゃったの

私がD判定でしかないのに生徒会長をしているってことがね・・・」




通常、というかほぼ完全に、五校の生徒会長というのはその学校で最も異能力が強い人が務めるものだ。


なぜなら五校祭で行われるイベントの中には各校代表者による異能対抗戦があり、例年生徒会長がそれに大将として出場することが伝統になっているからだ。



だから、D判定で生徒会長になるなんてことはまずあり得ないことだし、そもそも五家の関係者なら尚更だ。

せめてC判定は必要だろう。

それに順当にいけば、副会長も基本的に異能面でNO.2が務めるものだから

青月高校の有力家・雪峰家の息女である雪峰紗希がいるから、おそらく西條さんは生徒会長の座を彼女に譲ったのだろう。



その事実を知ったうえで改めて考えてみると

目の前にいる雪峰さんには相当なプレッシャーがかかっているのだろうというのはなんとなく察せられた。



今年の五校祭は特別な年ということで御天地区内外からの注目を受けているうえに、他の学校の生徒会長は恐らくみなA判定なのだから。


俺みたいなら豆腐メンタルだったら雪峰さんの状況はやってられないし多分即つぶれるだろう

そこは自信を持って言えた。



「よくここまでバレずにきたんだな

生徒会選挙とかでつっこまれたりしなかったのか?」



「今のところはだましだましやってきてるわ

生徒会選挙も五家の人間が今年は会長になるのが当たり前だとみんな疑わずに思ってくれていたから案外あっさりいけたしね

D判定ならとりあえずデバイスは起動させれるから、異能そのものを持っていることぐらいは見せれるし

今はまだ面と向かって異能を見せろなんて言ってくる人もいないしね

学校に対してもあの手この手を使って私の異能強度についてはバレていないはずよ」



「そういうことか

にしても、D判定で生徒会長か

それもこんな空前絶後の年で・・・」



生徒会長様が、俺みたいな雑魚にわざわざ頭を下げるなんてそんなシチュ、普通じゃありえないと思ったけど・・・

なるほどこういうことか

雪峰さんの異能のことをなかなか対外的に言いづらいからその分大ぴらにたくさんのうちの生徒に協力を仰ぎづらいわけか

だから事情を知っている俺のほうが頼みやすかったと




「そう、だからねある意味、柊君とはそこまで立ち位置変わらないの

他の五校生徒会関係者との立ち位置を考えるとね」



「いや寧ろ・・・」


俺以上なんじゃないのか?


D判定程度であの人外に挑むっていうのは、初期装備でラスボス倒せって言われてるようなもんだろ・・・

などと口に出すのは躊躇して思わず飲み込んだ。

なんとなく口にだしてもいいことにならないような気がしたから。


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