あれ?まじ?久々やな、想
「彼女が君と話せなくなった理由は、五家の子息であり、紅陽を率いなくてはならないという彼女の立場に依るところが大きいのではないでしょうか?
ですが、あなたがクーデターに参加してくれれば、則武さんに再会して話をする機会を提供できます
正攻法では最早、会うことすら難しいでしょうしこれが最後のチャンスかもしれません」
「クーデター中にってことか
戦ってたら俺と話すどころではないんじゃないのか」
「いえ、このクーデターが成功した後に話す機会を僕が必ず作ります
勿論、クーデター中でも話せそうな機会があれば全然則武さんと話していただいて構いませんし、寧ろそうしてもらいたいです
中学時代から今までまともに取り合って貰えなかったんでしょう?
いい機会じゃないですか」
仲直り・・・をそんな簡単にできるとは思わないし
立花の話を鵜呑みにするつもりもない。
ただ、その発想はなかった。
このクーデターにもし成功すれば、則武さんは紅陽のトップという重責から解放されるかもしれない。
そうすれば俺に対する態度が軟化する可能性もなくはないのか・・・。
「・・・」
「どうですか?」
このクーデターを成功するかわからないのは勿論分かっている。
というか、個人的には則武さんが倒されているイメージが全くできないので成功する気があまりしていない。
ただ、正直な気持ちを言えば、則武さんにまた会って話ができるというのはかなり心が揺れた。
教えてくれるのかは知らないが則武さんの本当の気持ちや考えが俺は中学の頃からずっと知りたかった。
正直言えばどうして急にそっけない態度をとられないといけなくなったのか、その理由を知って納得したいとここ数年はずっと思っていた。
それに、一番はやはり、前哨戦であの2人に迷惑をかけたことの尻拭いがしたい・・・。
「俺は・・・」
立花の手のひらの上で踊っている気がしないでもないし
この判断が正しいのか、最後まで不安ではあったが、参加の意思を表明しようとしたその矢先・・・
「・・・と、そろそろ時間みたいです」
「え?」
受ける、と言いかけたところで突如、立花に話を中断された。
「実は今日ここに先ほどお話した"精鋭"も呼んだんですよ
さっさと顔合わせも終わらせておきたいなと思いまして」
何かに気が付いて視線を俺の後ろの方へ送った立花を追って俺も席に座ったまま振り返る。
カフェの入り口が開いて、扉に着けてあった鈴の音がチロン、と部屋に響いた。
そして、茶髪のパーマがかった髪をした180を超えているであろうスタイルのいい、白夜の制服を着崩した、いかにもチャラそうな見た目の男が入ってきた。
最初は、チャラそうな男が入ってきたことに嫌悪感を覚えたのだが、すぐに見覚えのある顔をみて思わず声が出た。
「奎悟・・・か?」
「あれ?まじ?久々やな、想」
「はあ・・・まーた同窓会かよ・・・」
陸斗、竜生ときて次は奎悟か
中学卒業してバスケ部の面々とは縁が切れたと思っていたのだが予想外のここ最近の同窓会ラッシュには正直辟易するな。
「改めて紹介する必要もありませんか
中学時代にチームメイト同士だったらしいですもんね」
今更自己紹介なんて勿論不要だ。
元御天中央中学バスケ部正スモールフォワードであり、俺の元チームメイト
元村奎悟が目の前にいた。
久々にあったが、中学の頃よりも髪も若干伸びてチャラさに磨きがかかっているように思う。
「てか、そもそもなんなん此処、こんなオサレな店あったんや」
奎悟もこの立花の店に来るのは初めてだったらしく物珍しそうに店内を見まわしたあと家具や、キッチンのあたりを凝視していた。
「ええ、此処は実は僕が趣味でやっているカフェなんですよ」
「おいおい、高校生が趣味でカフェ経営してるとか聞いたことねーぞ
流石は、有力五家・立花家の末裔様やな」
「お前、どうして此処に・・・?」
「いや、俺だって青月から助っ人がくるって立花にいわれて
此処に来てみたけども・・・なんだ、想かよって感じだわ」
あっつ、といいながら制服のワイシャツの襟を持って上下に動かして空気を服の中に入れつつ、奎悟は答えた。
手首にはブレスレットのようになった灰色の改造クローサー。
自分でカスタマイズしたのであろう、タータンチェックの柄まで入っていた。
つまりそういうことなのだろう。
「俺で悪かったな
てかお前もB判定になったのか」
「お前以外みーんなB判以上やぞ
陸斗は言うまでもなく竜生も、脩仕も、琥太郎も」
「はいはい、前も竜生に言われたわ
今更言われなくてもいいっての」
「それで、立花
具体的には俺は何をすればいいん?
あ、てかなんか飲んでええのん?」
立花の了解をとることなく奎悟は俺たちの座っていた机の近くにあった椅子をこちらに持ってくると、ドカッという効果音が聞こえてきそうなほど勢いよく座った。