表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
紅陽高校クーデター編
76/82

・・・仲直り、したくないですか?


立花はようやくアイスコーヒーに手をつけ、窓からの景色を眺めながらこう言った。


「ええ、しかも今回の前哨戦で2人とも思ったより活躍できませんでしたからね

副会長の新城さんは青月の副会長の西條さんに敗れ、会長の則武さんも雪峰さんを倒すことができませんでした

ヘッズの中でも自分ではなくどうして彼女たちが生徒会役員なのかと考えてる人が一定数いるんですよ」


「優秀な方々は競争がお好きなことで」


俺がその当事者にでも巻き込まれたら速攻で踏み台と食い物にされそうだな。

怖い世界だ。


「・・・そしてそのお手伝いを僕がしているというわけです

紅陽での内輪揉めが大規模化してもらえればこちらにもプラスなので」


クーデターの是非なんて立花には何の興味もないし、大事なのは自分にとって得かどうかなのだろう。

窓から夕焼けを眺めるのをやめた立花が整った顔と細くて長い首をこちらへ向ける。

無駄に様になっているのが腹立つ。


「なるほどな・・・」


「ただの内輪もめで終わってしまうとそこまで紅陽に大きなダメージを与えることができません

柊君の言う通り、その気になればクーデター勢力もすぐに鎮圧されかねない

則武さんは前哨戦で全力を出していないのは明らかでしたし

そこでうちのまだ顔の売れていない精鋭もそのクーデターに加勢してもらう、というわけです」


「その白夜の精鋭とやらにも則武さんに戦ってもらうのか」


「ええ、理想はそのまま則武さんを倒すことですが・・・

柊君がその場にいてもらうことで更に勝率を上げたい・・・」


口に細長い手を当て、初対面ならコロッと騙されてしまいそうな綺麗な作り笑いを浮かべた。

俺にとっては最早見慣れてきた感すらあるのだが。


「他の理屈はなんとなく分からないでもないが

俺がいることでクーデターの成功率が上がるというのだけは未だに納得できん

俺はその場にいるだけでいいのか

寧ろ俺みたいなE判がちょろちょろされるとクーデーターの邪魔になると思うが」


いつから俺の存在が則武さんにデバフ効果を持つようになったんだ。


あれか?俺が則武さんに嫌われているから、いるだけで目障りで戦闘意欲下がる効果があるのか?

言っててすごい悲しいなおい


「・・・恐らく当事者だから自分の価値の高さに気が付いていないのだと思いますよ

今回は僕を信じてそういうものだと思って下さい」


グレーの瞳で俺を吸い込むんじゃないかという勢いでまっすぐに見つめてくる立花。


「そういうもの、ねぇ」


そんなことされても、別に女子じゃないから喜ばないし、俺もお前を信じれるほど信頼なんてしているわけがない。

どちらかといえば西條側の人間ですぜ、俺は


俺を見るのも飽きたのか、立花は再び視線をコーヒーに落とすと、囁くような小さな声でこう言った。


「それに・・・何度も言うようですが、やはり前哨戦の挽回という意味でも

ここまでの機会チャンスはそうそうないと思います

僕も何度もチャンスを作れるほど力を持っているわけではないので

今回のこれも巡り合わせや事前準備が相当うまくいったところがありますから、次が来るというのも難しいでしょうし」



「そこについては別に否定する気はないがな・・・

これが成功すれば紅陽へのダメージは相当なものだろうし」



彼奴らに目に見える形で貢献したい気持ちに嘘偽りはないし、俺のようなE判定がそのような成果を出すためにはやっぱりある程度のリスクは仕方ないのだろうか?


「それと今日来てもらった本当の目的がありまして」



相変わらず逡巡するばかりで決断できずにいたが

立花は長い銀髪の前髪を指で弾き、いつもより更に一段階ほど低い声でにこやかに続けた。


「昨日の場ではあの2人がいたので言えませんでしたが・・・

もう一つ柊君にとって今回のプランに乗るメリットがあるんです」


「なんだ?

まだ何かあるのか」


病的に長くて細い足を組み直し、頬杖をついて立花は続けた。


「・・・柊君は中学時代に則武さんとは仲が良かったのに、最終的に疎遠になってしまったと聞きました」


「・・・よく知っているな」



俺の携帯番号といいどうしてこの軽薄笑顔野郎はここまで俺の個人情報に詳しいんだ。

どんな情報網を使って情報を手に入れているんだか。

純粋に気持ち悪い。


「・・・仲直り、したくないですか?」


「仲直り?どういう意味だ?話が見えないぞ」


俺が、武后様と?

立花が何を言い出すかと思ったが、やはり立花の発言は、俺の発想の斜め上を行くものだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ