それでもあの紅陽の会長様には勝てる気しないんだよな
「ええ、ご想像の考えで間違えていないと思いますよ」
俺の疑惑の眼差しにも悪びれる素振りはなく、ニッと口角を綺麗に上げた立花。
そのまま流れるような動作で無駄に優雅にアイスコーヒーの入ったガラスコップに手を付けた。
俺の想像が正しいのなら此奴はもしかして異能を使ってヘッズを操ってクーデターを画策させたのだろうか。
それぐらいのことは平気でやりかねない、だろう。
「ふふ、いい顔をしますね
柊君に、特別にもう一つしいて明かすなら・・・
僕の家はデバイスの開発という分野においてかなり主導的な立場にいますので、あるデバイスをクーデターするヘッズたちに提供した、というのもありますね」
「デバイスを?
武器商人みたいなことをしているんだな」
「別に儲けるためにこんなことしているわけではありませんがね
それに、最終決定権は彼らに委ねてますよ
前にも言いましたが、うちがこのクーデターを主導しているなんてことが表に出たら大変なことになりますから
陰ながらその支援をしているだけというスタンスです、白夜は」
完全に、ゲームの裏ボス的フィクサーのような発言だな。
裏で騒動を巧みに操っているのは実は・・・といった感じの黒幕のそれだ。
「それで具体的にはどういう計画でクーデターを起こすんだ?」
断りに来たのだが、なんとなく立花の考えが気になって思わず続きを急かしてしまっていた。
此奴の腹黒さを知らなければ朗らかな笑顔と形容してもおかしくない笑顔で、銀髪を指でいじりつつ立花は話続けた。
「クーデターの内容は単純明快です
ヘッズ会議の場で入れ替え戦を申し込むんですよ、則武さんと新城さんに」
立花は机の中にしまっていた某高級ハイエンドタブレットを取り出した。
そこから今回の計画について書かれたドキュメントを起動させる。
まず最初に見せられたのは、則武さんと新城の写真。そして次にクーデターを起こす予定のヘッズ数名の顔写真だった。
その中には、前哨戦で西條と戦って敗れたあの骨使いの黒メガネも含まれていた。
まさかこんな形で此奴の本名を知ることになるとはな。
「入れ替え戦?
ヘッズ同士で何を入れ替えるんだ?」
「勿論、通常はラボの身体審査を受けて、ヘッズになるにふさわしい人が選ばれて、晴れてヘッズと戦い、勝てば負けた人と入れ替えでヘッズになるのですが
・・・今回は生徒会役員の座の入れ替え戦を申し込ませる予定です」
「入れ替え戦で勝ったほうが会長になるってことか?」
「ええ、加えて副会長にも同様の戦いを申し込んで2人とも引きずり降ろそうというわけです」
ヘッズの総勢は15名、うちこの名簿を見る限り雪峰に反旗を翻す予定のヘッズは7名のようだ。
約半数が則武さんに挑むってことか。
「7人がかりで2人と戦うってわけか?」
「ですね、タイマンでは各々が勝つのは絶望的でしょうから
ちなみに、今回クーデターに乗らない他のヘッズについてはそもそも会合には参加しないように細工しました
なので今回会合に来るのは9名ですね」
「俺から見れば7人程度が束になっても武后様や新城には勝てるビジョンが見えないがな」
「ですよね、だからうちの異能力者も参加するわけです
更にヘッズではありませんがクーデター側に親しいB判定異能力者を協力者として数名参加してもらうことで内々に話をつけています」
「流石、用意周到なことで・・・
にしても・・・」
「なんですか?」
立花にタブレットを借りて、今回のクーデターに参加予定のヘッズたちのプロフィールを閲覧する。
御天でも有数の実力者集団というだけあって、プロフィールにかかれた異能力はどれも凄まじく強力そうなもののだ。
西條と戦った骨の異能や、木を自在に操る異能力なんかもいるみたいだ。
此奴らに加えて白夜からも相当強い異能力者が派遣されるのだろう。
それでも・・・
「完全に肌感覚だけど、それでもあの紅陽の会長様には勝てる気しないんだよな・・・
よくクーデターなんて起こす気になるな、此奴ら」
前哨戦の時目の前で見たから分かるが、あいつの持つ異能力はその辺のB判定が何人束になってかかろうが絶対に覆せないほどだと直感的に悟るほど大きなものだった。
「ヘッズに選ばれる人というのは、優秀な人の多い御天の中でもさらに一握りの選ばれし相当優秀な方々です
そして優秀であるが故に、プライドも目標も高く、自分は正当な評価を得ていないのではないかと考えている・・・」
「だから自分が則武さんを倒してのし上がりたいってわけか」
改めてタブレットに映ったヘッズたちの写真をみると言われてみればハングリー精神強そうな、競争が好きで、強そうな顔つきに見えなくもない。





