ご想像の考えで間違えていないと思いますよ
「今日は一人で来てください
青月の会長や副会長が僕が個人的に会っているなんて状況を、他の人に見られるわけにはいかないので」
「自分勝手だな・・・
ならうちの生徒会室にまたくればいいだろ」
なんで俺がお前に呼び出されてノコノコと行かないといけないんだ。めんどくさい。
「人目を気にしながら青月まで行くのも結構大変なんですよ
いつもは青月の生徒に目撃されないように放課後になる直前から生徒会室に行ってますからね
とりあえず今から位置情報をお送りするのでそこに30分後に来てください」
電話越しにあの余裕たっぷりの作り笑顔を浮かべているのが容易に想像できる声で立花は要件を伝えてきた。
「はいはい
わかったよ、ただこれっきりだぞ」
ため息を一つつきたい気分だったが、これ以上愚痴をこいつに行ったところ軽く流して消えてしまうのだろう。
まあ乗り掛かった舟だ仕方がない。
「はい、ありがとうございます」
電話を切った途端、携帯に立花のいう通り位置情報が送られてきた。
どうやら駅前の当たりらしい。
携帯で時刻を確認する。
30分後に駅前って時間的にも結構きついな。
マジでなんであんな男のために俺が急かされなきゃならないんだ。
こうして急な呼び出しを食らった俺は、生徒会室へ向かう前に学校を出て駅前を目指した。
◆
「・・・お待ちしてました」
そろそろ夏といった陽気の御天の街を早歩きで歩いたせいで少し汗をかいて俺は待ち合わせ場所に到着した。
立花が指定してきたのは、駅前の雑居ビルの最上階の一室だった。
中に入ると、室内はおしゃれなカフェのような、というかカフェそのもので窓からは御天の街が一望できた。
カウンターでは、店員らしき人間がおしゃれなカップにコーヒーを淹れている。
部屋の中央で、読書していた立花が俺に気が付くと立ち上がって入口までやってきた。
「此処はどこなんだ?
ぱっと見はカフェっぽいが入口に看板とか何もなかったし」
「正確に言えば僕が趣味でやってるカフェ、といったところですかね
招待制で、僕が許諾しなければ中には入れませんから
とりあえず座ってください、話をしましょう」
立花に促されて俺は明らかに大量生産で生み出されたものではなさそうなおしゃれなデザインをした木製の椅子に座った。
これまたシックな雰囲気の机を挟んで、反対側に立花が座った。
店内の冷気が心地いい。
「・・・御馳走しますので
好きなものを飲んでください」
「じゃあ、アイスコーヒー」
男に奢るといわれたら遠慮する必要もあるまい。
俺の乾いた喉の欲望に任せて、俺はアイスコーヒーを頼んだ。
「すみません・・・
アイスコーヒーを2つお願いします」
暫く店内を何となく観察したが、確かに客は俺たち2人しかいなかった。
間接照明に木製家具、そして眺めもいいとなると女子が喜びそうな店だが
立花に親しい人しか利用できないカフェというのはどういう意味なんだろう。
そうこうしているうちにしばらくと、オサレなカップに入ったアイスコーヒーが2つ出てきた。
喉が渇いていたのでブラックのまますぐに手をつける。
寝不足の脳にカフェインが投下されて覚醒する感覚が徐々に襲ってきた。
立花はそんな俺の様子に構うことなく、すぐに本題に入った。
「クーデターの件ですが・・・
次回のヘッズ会議の場で行うことになりそうです」
「ヘッズ会議・・・なんだそれ?」
また俺の知らない異能関係の固有名詞が出てきた。
立花は特に面倒そうな素振りも見せず、それで当たり前といった感じで解説してくれた。
「正式には選抜者会議というんですが
ヘッズに選ばれた人達が月1ペースで集まって開く会合があるんですよ」
「へー、そんな文化が紅陽にはあるんだな
何をする会議なんだ」
「基本的には入れ替え戦の結果、新しくヘッズに選抜された人の自己紹介
それと今後の紅陽の生徒会方針について話をするみたいですね
その他にも、異能関係の最近起きた出来事やラボの情報共有など内容は多岐に渡ります
そもそもヘッズ観覧の元で入れ替え戦をおこなうこともあるみたいですし」
「俺の知らない世界だな案の定
ヘッズはじゃあ、紅陽の幹部会みたいなイメージなのか」
「当たらずも遠からず、といったところでしょう
ヘッズにしか利用できない施設までありますからね紅陽には
会合の場で入れ替え戦を行う場合もあるので、その施設でヘッズ会議を毎月行っているというわけです
良くも悪くも一番総戦力の高い学校名だけあって強度の高い異能力者向けの設備や制度も充実していますよ
ヘッズは御天の土地では半ば特権階級のような扱いを受けることもありますし」
「ふーん、なんかあんまり俺の好きな話ではないけどな
にしても、前哨戦も終わってすぐのこんなタイミングで、そんなクーデターなんて都合よく起きたもんだな・・・いや」
「起きた」ではなく「起こした」のだろう。
目の前のこの男が焚きつけたんだ。ヘッズを・・・
それを改めて認識して背筋が凍った。





