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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
紅陽高校クーデター編
70/82

は?・・・俺?


「いえ、前哨戦での則武さんとの一戦も相まって、今の雪峰会長はあまりにも有名人すぎます

紅陽のクーデターにもしも白夜や青月が裏で噛んでいるというのがバレれば、それこそ則武さんや山縣君に攻撃する口実をこちらから与えているようなものですし、下手をすれば五校評議会で罰せられかねません

ただ、かといってクーデターする予定のヘッズだけではあまりにも実力不足

紅陽の女帝は倒せないでしょう

だから、うちのまだ名前の売れていない精鋭を派遣して秘密裏に加勢させる」


「じゃあ、西條にでてもらうのか?」


雪峰がだめとなると、この場にいる異能力者は西條しかいない。

西條に紅陽のクーデターを加担させるつもりなのだろうか。

真面目な性格の西條がこの計画に乗るかグレーなところだぞ・・・とそこまで想像を働かせたが、またもや空振りだったらしい

立花は再び小さく笑うと否定の言葉を口にした。


「いえ、西條さんも前回の前哨戦で紅陽の副会長に勝ったことでかなり名前が売れてますからね・・・

紅陽に顔を出そうものなら、それこそSNSで騒ぎになってもおかしくないです」


「雪峰もダメ、西條もダメとなるとじゃあ、誰が行くんだよ」


「まさか・・・」



雪峰と西條は何かを察したようだったが、俺にはまだその答えが分からない。

立花はゆっくりと白くて細長い右手の人差し指を伸ばして俺の方へ向けた。


「お察しの通り今回協力をお願いしたいのは・・・柊君、貴方です」


「は?・・・俺?」


タブレットの一件を指摘された時にシャットダウンした思考能力がようやく再び動き出したというのに、また訳の分からないことを言われて、俺の思考能力を奪おうとしないでもらいたい。


「俺にそんなことできるわけないだろう」


「寧ろ最適までありますよ

雪峰会長や西條副会長では今回の件に参加ができないですからね

その点、貴方なら紅陽にもほぼ知り合いなどいないでしょうし」


さっきから俺の方を向いて真剣にずっと話し続けている様子を見ても、立花は冗談ではなく真面目に俺に協力してもらいたいらしかった。



「いや、俺に何ができるんだ?

E判定バニラだぞ」



俺が協力したところで焼け石に水だろう。

バニラにA判定が協力を仰ぐなんて御天の常識で判断すればあり得ない。

正気か?こいつ?

ただ、立花のお願いは冗談でも、俺へのからかいでもなく本気のもだった。


「前哨戦を一緒に戦ってみて、発見したことがありまして・・・

それは、柊君、貴方がラームズにとってはかなり意識されている存在だということです

今回のクーデターの際、鎮圧するように動くであろう則武さんのペースを乱すという意味で、君ほど最適な方はいないんですよ

だから、素直に協力をお願いしたい・・・それだけです」


「意識されているっていうのが具体的になんなのか俺にはよくわからないがな」


目にかかるほど伸びた銀の前髪をかき上げて、おでこを出しながら立花は続ける。

無駄に爽やかなポーズをとらないでほしい。


「君以外の周りの人は何となくそれを理解していますよ

生徒会に呼ばれるきっかけになったのもそれじゃないんですか?

そうでしょ、雪峰さん」


「きっかけはそうね

ただもう今となっては全く違う別の、一緒に居たい理由がたくさんできてしまったけども

彼女に一目置かれている、というのは紛れもない事実だとは思うわ」


立花の言葉に雪峰も同調していたが、それでもやはり今の俺には納得も理解もできなかった。


「まさか、俺なんてLARMSあいつらにとっては道端の小石並みの存在感しかないし、何とも思われてるわけがない

だって、もし少しでも彼奴が俺のことを気にしているのなら・・・」


どうして、中学時代のあの日からずっと俺にあんなに冷たくてそっけない態度をとるんだよ、と言いかけて言葉を飲み込んだ。

何となく口に出したら情けない気がしたから。

これじゃまるで振られた男がみじめに縋っている気分だ。

別に振られたわけでもないのだが。


「貴方には俄かには信じられないかもしれませんが

それでも、今回は騙されたと思って僕を信じてほしい

寧ろ今の御天でLARMSを一番揺さぶれる存在は貴方ではないかすら僕は考えています」


腕を組んで淡々と話す立花はやはりいつも通りの冷静さを纏い続けている。

前哨戦に負けて、ご乱心になって俺に訳の分からない期待をかけているというわけでもなさそうだ。


きっと立花なりに根拠を持って俺に協力関係を持ち掛けているのだろう。

それは理解できるのだが


「そういうもの・・・なのか?」


立花に言われた言葉そのものはやっぱりうまく消化できていないのが自分でも分かった。

しいて言うなら、雪峰と西條に生徒会誘われた時の気分だ。

自己評価と他人の期待の乖離がその原因なのだろう。


「・・・柊?」



俺が暫く無言でいたのが心配だったのか西條が声をかけてくれた。

兎に角、俺の答えは初めから決まっている。


ただそれを口に出せばいいだけだ。


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