五校それぞれの代表者が五家の関係者っていう前代未聞の年だから
「やっぱり噂は正しかったのね
そして貴方もそのメンバーの1人だったと」
「まあ、メンバー扱いされるのはなんか嫌だけどな
ただ言っとくがな、俺は五校にはなんのコネクションもないぞ
そもそもこの高校(青月)を選んだのもあいつらと関係のない高校へ進学したかったからだしな」
紅陽なんてもってのほかだ。
死んでも行きたくなかったから俺は家から離れていたけど親に無理行って今、青月に通ってるわけだし。
「あと、噂で何言われてんか知らんが別に則武さんと付き合ってたなんてこともないからな
そこは強調させてくれ」
住んでる地域的には則武さんのいる紅陽高校や黄輝高校なんかが近かったのを親に頭を下げて無理やり青月に通わせてもらってるぐらいには俺は中学時代の五校関係者にはアレルギー持ってんだからな。
多分、半径2メートルいないにあいつらみたいな五校関係者がいると蕁麻疹出てきて死ぬレベルで
「で、ですよね~
すみません・・・」
俺の全力の否定に驚いたのか、西條さんは引き気味に納得してくれた。
「てか、そもそも
あの高慢で仮面優等生な則武さんが俺と付き合うわけないだろ
釣り合ってなさすぎる」
一体どんな噂が出回ってんだろう。
いつかそのうち絶対西條さんには追求してやる。今決めた。
「そんな必死で否定しなくても・・・
でも、紅陽高校には行かなくて正解だったのでしょうね
相当則武さんに拒絶されていたみたいだし」
俺の必死な様子がおかしかったのか口に手を当ててくすくすと雪峰さんが笑った。
西條さんと違って、雪峰さんは基本的に余裕を崩さないタイプらしいな
焦ったらどんなリアクションなのかちょっと気になる。
「正論だな、青月を選んで良かったよ」
「中学の頃から五校の実情をご存じなら話は逆に早いです。
今の私たちが今年の是が非でも五校祭に勝ちたいていうのはよくよくご存知ということですよね」
知らないはずがなかった。
そもそも俺たちが3年前に仲たがいしたのも五校とそして、五校それぞれの有力家、通称”五家”が原因だったのだから。
「そうだな、雪峰さんたちがどうっていうよりかは、そもそも五校の生徒会はみんなそうなんだろ?
俺は当事者ではないけど」
「そうね
なぜなら今年は、五校それぞれの代表者が五家の子供たちっていう前代未聞の年だから」
「散々噂には聞いていたけどやっぱそうなんだな
てことはやっぱ雪峰さんも?」
「そうね
私は青月高校の有力家、雪峰家の人間よ」
五家
御天という土地にはそれこそ何百年、何千年も前から強力な異能が出現しやすい一族が存在していたらしい。
異能は13歳~19歳あたりまでの子供にしか発現せず、しかも20歳にもなるとほぼ全員の異能は消えてしまうため、御天の名士的有力一族が異能教育目的で学校を始めたのがもともとの五校のきっかけだ、なんていわれていたりしている。
だから、五校それぞれの発祥と密接に関わっている由緒正しい一族を五家とか、なんとか高校の有力家なんて言われたりしている。
そして今年は、そんな五家の子供たちがそれぞれの高校で生徒会長つまり強力な異能力者として君臨しているという前代未聞の年なのだ。
噂によれば、古くから御天で君臨してきた五家同士はいざこざや小競り合いが多く遺恨が残っているらしい。
だから、その年にもっとも優秀な学校を決める今年の五校祭は、五家の代理戦争という側面もあって何年も前から御天地区内外どちらでもものすごい注目されてきた。
それこそ俺が中学の頃から俺たちが高2になったら大変なことになるというのは耳が痛くなるほど聞かされてきたのだ。
だからといって高2の初日から生徒会室が放火されるとまでは思ってもみなかったが。
「そっか
じゃあ今年はやっぱ大変な一年になりそうだな」
「そうなんです!しかも今年、私たちの世代には則武さんをはじめ数十年に一人しか出ないといわれているA判定の天才異能力者が複数人も出ているような状態で、火を見るよりも明らかに厳しい戦いが予想されています・・・」
「そう・・・
だから、その・・・」
「ん?なにかあるの?」
「・・・千織、どう思う?
個人的には柊君にならお願いしてもいいと思うのだけど」
言いながら雪峰さんはサファイヤのような青い瞳を西條さんへ向けた。
何の相談なんだ。
「私もいいと思います!
こうして話している感じも優しくていい人そうですし」
「そう、なら決まりね
柊君、もしよかったら私たち生徒会の活動に協力してもらえませんか」
優しい、それでも芯の強さを感じる声で雪峰さんはそう言った。
予想外の提案に言われた瞬間フリーズしてしまう。
目力が強すぎて吸い込まれそうな気分になる。
「え・・・
それってどういう意味?」
「そのままの意味
私たちと一緒に五校祭が終わるまで戦ってもらえないかなと思いまして
私だって、今年の五校戦は五家の人間として勝ちたいし、そもそも則武さんにあんなことまでされてひき下がりたくないわ
だから、勝つためには協力者は多いほうがありがたいの
五校関係者に縁のある人ってうちの学校でも私たち以外には案外少ないし」
おいおい
さっきまでの話ちゃんと聞いてたかよ、と咄嗟に言いたくなったが慌てて飲み込む
散々五校のいざこざに関わる気はないって言ったばっかだろ。
「いやだから俺は中学時代にちょっと仲が良かっただけで、そんなつながりは何もないって・・・
それに残念だけど俺はE判定、はっきり言って異能力に関しては完全に戦力外だぞ
そんなんで役に立つわけないだろ?」
「それでもあの日、貴方は現時点で御天で最強と言われている異能力者に一目置かれていました
きっと彼女を倒すために貴方の力が必要なんです。
私も青月の副会長としてではなく、紗希の親友としてお願いします。
五校祭まででいいので私たちと一緒に戦ってもらえませんか」
そういってまた2人は俺に頭を下げた。
なんか今日はこの2人に頭を下げられてばかりな気がするな。