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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
紅陽高校クーデター編
68/82

やられっぱなしも癪なんでね


「情報共有するぐらいなら、絶縁状態なわけはないですもんねー」


西條の言う通りだ。

立花の推論は個人的な気持ちで言えば、できれば賛同したくなかったが状況だけを整理すれば彼の言っていることはもっともだった。

恐らく、雪峰が同じ話をしてくれたならもっと素直に話を聞けたと思う。


「ええ、勿論仲がいいからではなく僕たち白夜と青月のように、ただ利害関係が一致したから協力した、というだけなのかもしれませんがね

少なくとも、裏で情報の交換ぐらいはしていたのでしょう、そして恐らく・・・」


「なんだ?」


言い淀んだ立花に続きを言うよう促したが、お家芸の薄っぺらい笑顔で躱されてしまった。


「いえ、なんでもないです

ただ、やられっぱなしも癪なんでね」


ソファから立ち上がった立花は再び紙袋を漁ると次は、白夜の校章のデザインが付いたファイルに入ったA4サイズの紙を一枚取り出し、俺たちに恭しく渡した。

代表して雪峰が受け取り机の中央に置く。


「これを見てください

先日開かれた五校評議会で立花家から報告させてもらったんですが・・・」


身を乗り出して、立花の渡した紙をのぞき込む。


「なんかよく分からないけど・・・

陸斗がGPS情報を乗っ取ってたてことか?」


資料をざざっと斜め読みしたが

名指しこそしていなかったが黄輝の某生徒が、前哨戦中に全員に配布されたタブレットや異能力者に配布されたスマートウォッチをハッキングすることで位置情報を把握していたのではないか、という疑惑について糾弾する内容だった。


知らない専門用語や固有名詞も多く、いまいち内容は頭に入ってこなかったが、次の立花の言葉で俺は急にハンマーで後頭部を殴られたぐらいの衝撃を受けることになる


「はい、そして恐らくですが・・・

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立花は立ったままで腕を組んでそういった。

その言葉を聞いた瞬間に俺は一瞬で目が覚めて背筋が凍ってしまった。


「え!?・・・まじ?

なんでそんなことわかるんだよ」


確かに俺は前哨戦の間、地図を確認するために自分のタブレットを鞄に入れて持ち歩いていたが・・・

それでも、バグや不具合は一切なかったはずだ。

俺の知らないうちに位置情報を抜き出されたってことか?


俺の動揺を見ても穏やかな態度を変わることなく立花は言葉を紡ぎ続けた。


「消去法ですよ

則武さんや山縣君が僕たちのところに来た際に、位置情報が分かるものを身に着けてた人は貴方しかいませんでしたから」


立花は淡々と自筒を羅列するが、俺の心は全く穏やかじゃない。

今すぐにでも大きなため息を吐きたくて仕方ないし、喉も乾いたので思わずお茶を口にした。


「まじか・・・

余計なことしたな、俺のタブレットの位置を監視されていたなんて・・・」


否定したい気持ちは山々だが如何せん何も反論する材料が見つからない。


むしろ、言われてみれば今までの疑問が完全に腑に落ちてしまった。


くっそ、俺が彼奴らを引き寄せていたのか。

立花は兎も角、雪峰に申し訳なくて、罪悪感が湧いて、雪峰の方を向けなかった。


雪峰や西條が何か言おうとはしてくれているのだろうか、それすらも今の俺には分からない。


沈黙のなか、立花は言葉を発し続ける。


「・・・先ほど言いましたがこの資料はもう五校評議会に提出しています

つい先日、この資料に基づく検証結果が出ていて結果、黄輝は警告を受けました

表向きなにも発表を受けていませんが」


「私もその話は耳に入っていなかったわ」


「・・・僕たち五校生に言ってもあまり有意義な結果を生まないことが容易に予想できる情報でしょうからね

五校評議会も当主同士の話し合いで収めてこの話を外に漏らさないよう取り決めたみたいです

そして、さっき柊君に言ったように紅陽も本当は、山縣君からある程度情報提供があったんだと思います

でなければ、河川敷に急に則武さんが来るなんて事態、起こりえませんから

残念ながら証拠をつかむことができなかったのでそこまでは今回切り込むことができませんでしたが」


前哨戦が終わってまだ10日程度しかたっていなかったがここまで色々な話が俺の知らない間に展開されていたなんて。


「・・・転んでもただでは起きないんだな、お前は」



この無駄に爽やかな軽薄笑顔野郎のことが嫌いというスタンスを今後も崩す気は一切ないがそれでも立花がここまで色々な行動を起こしていた、というのは素直に感心してしまった。


ただのニヒルな二枚目気取りかと思ったが此処に一人で来るのも含めて、実は行動力のかなりある奴なのではなかろうか。


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