表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
紅陽高校クーデター編
67/82

紅陽と黄輝は恐らく


雪峰と再会してから数日後の休日

休日にも関わらず俺たちは生徒会室にいた。


休日に集まったのだから当然、今日は全員私服だ。

西條はイメージ通り女の子らしい花柄のワンピース。

雪峰も、灰色のチェックのトップスに、濃い青のフレアスカートという二人ともいかにも清楚な見た目だった。


当然ながら二人ともものすごい似合っている。


まあ、今までもたまに休日に集まって勉強したり、生徒会の仕事を手伝ったりしていたから、今更といえば今更なのだが。


そもそもどうして休日にも関わらず、俺たちが生徒会室にいるのか


勿論、その目的は俺たちの目の前にいる前哨戦で散々見飽きた、長身痩躯で結婚詐欺師でもできそうな薄っぺらい笑顔を張り付けた男を生徒会室で迎え撃つためだった。


「久しぶり・・・ですね

西條さんは五校懇親会以来ですが」


人目を避けて会いたい、といって休日を指定してきた立花は、机に座った俺たちに向かって、挨拶をするためにソファから立ち上がった。


ベージュのチノパンに白のシャツといういかにも爽やかな青少年といった見た目なのが一周回ってムカついた。


そもそも、こんな奴、ソファになんか座らせないでその辺に立たせておけばいいと俺は割と本気で思っているが、雪峰がソファに座るよう促したから仕方がない。


「そうですね、もう結構前のことになりますけど」


「・・・久しぶりだな」


「ですね、前哨戦以来ですか」


「で、今日は何の話をしに来たんだ」


「ふふ、相変わらず柊君はそっけないですね

まずは、雪峰さん、A判定異能力の発現おめでとうございます

これはつまらないものですが・・・」


俺の冷たい態度もものともせず、立花は持ってきていた無地の紙袋から、包装された長方形の箱を雪峰に手渡した。


「なあに?これは」


手渡された雪峰も特に心当たりはなく、珍しいものを見る目で箱を眺めていた。


「・・・開けてみてください」


「なんだろ・・・

え、これは・・・デバイス?」


丁寧に包装された紙の包みを雪峰が剥がす。

箱の中から姿を現したのは透明なタンブラーのような筒状の物体だった。


「ええ、A判定にしか扱えない特別なデバイスです・・・」


「どういう効果があるデバイスなの」


「起動してみてください」


「・・・水?」


雪峰が異能を流し込むと、淡い青色で発光した筒の中に徐々に水が満たされていった。

見たことない種類のデバイスだ。


「はい、このデバイスは周囲の空気を取り込むことで効率よく水を生み出せるデバイスなんです

ただ、特殊な専用デバイス故、起動するだけならD判定でも扱えますが、かなりの水を一気に生み出すにはA判定並みの異能力が必要なんです

A判定の雪峰さんなら数秒でかなりの量の水を生成することが出来るはず」


「・・・どうしてこんなものを私に?」


「実はこのデバイスはラボではなく、山懸君のお父さんが代表者を務めているgifuterの開発したデバイスです

あの会社には立花家も一枚噛んでましてね

というか、立花家にはラボ含め異能研究者やその関係者との繋がりが多いんです」


「なるほどね・・・」


「雪峰さんの異能なら近くに水がある環境のほうがより強い効果を発揮します

ですが常に河川敷ように水のある環境で戦えるとは限りませんから」


「それを補うのがこのデバイスってわけですか」


「ありがとう

わざわざこんなものまで用意してもらって」


雪峰もいきなりのプレゼントに戸惑っていたが、それでも喜んではいるようだった。

なんなんだこいつ今度はプレゼントで雪峰に取り入るつもりなのか

そんな嬉しそうな様子の雪峰をみているだけで腹立ってくるのだが。


「いえいえ・・・

前哨戦に勝てなかったお詫びもかねてですけどね」


「結局あれから白夜で何か進展があったの?」


「そうですね・・・

白夜で、といいますか

まず、今回の一件ではっきり確信を持ったことが僕にはありまして、それは・・・」


「うん・・・」


立ったまま立花は腕を組んで左手で口元を抑えながら立花はこちらを見てはっきり言った。


「・・・紅陽と黄輝は恐らく裏でつながっている、ということです」


「え・・・!?」


「・・・でしょうね」


衝撃の事実に驚いて、思わず声がでた俺とは対照的に雪峰は案外冷静に答えた。

まるで、元から知っていたかのようだ。


「紗希もそう思っていたんですか?」


「まあ、タイミングがタイミングだったしね

あんな都合よく、A判定が私たちの行く先々で先回りするなんて普通はありえない」


「そっか

が俺からすれば全く信じられないな

中学時代にあんなに犬猿の仲だったあの2人が今更協力している、なんて」



中学時代、仲良しグループだったラームズはとある事情で瓦解したが、それからのあの二人は目も合わせないほどの仲だった。

中学の卒業式でさえ、会話なく、写真を一緒に取るなんてもってのほかなぐらいには



「柊君が中学時代見ていたころから関係が変わったのかもしれませんし、そもそもその中学時代の喧嘩すらを周囲を欺くものだったのかもしれないですね」



「そう・・・か」



立花に指摘されても俺には俄かにはいまだに信じられなかった。

中学時代にあれほど五家の対立の象徴のようだった、武后様と餓鬼大将が実は絶縁関係ではなくなったなんて

でも、前哨戦のあのご都合主義なレベルでのエンカウントの連続は確かにそれ以外の明確な理由が思いつかないというのもまた、如何ともしがたい事実だった。


「ただ、僕の方でも細心の注意を払って位置情報を特定されないように注意してきました

恐らく、タブレットやスマートウォッチの個人情報を山懸君が抜き出して、則武さんと共有していた

だからあのような芸当ができたのでしょう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ