表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
前哨戦篇
61/82

僕が裏切ると思っていたんでしょう?

御天神社はこの御天という土地の市街地でも、ド真ん中に位置しており、しかもこの町で一番大きな神社なだけあって大きなショッピングモールがまるまる一つ入るぐらいの広大な敷地面積を持つ。


当然多くの五校生が前哨戦でここを捜索したことだろう。


「やっと入口までついたな」


敷地がでかいだけあって、入口から本殿まではそれなりに距離がある。

まだもう少し警戒しながらの移動が必要だ。


「ただ、やはり他校の生徒がちらほらいますね

誰かに見られると非常にまずいので早く本殿へ向かいましょう」


予想していたことだが、かなりの数の五校の連中が神器を探しているのを見かけたし、中には神社のなかで異能力者バトルを開始している生徒もいた。


兎に角、見つかると色々面倒だ。

俺たちは人目につかないように、できる限り御天神社を取り囲む木々の陰に隠れながら本殿を目指した。


「・・・ついたな」


「ですね

さて、問題はどうやって中に入るか、ですが」


物陰を縫うように移動してついに本殿の前に到着した。

潜んでいる茂みから人の気配がないことを確認した立花は走って本殿正面の階段を駆け上がり、賽銭箱を向こう側、更に奥にある本殿の引き戸に手を掛けた。


「・・・鍵がかかっていないようなので柊君も早くこちらへ来てください」


立花の合図を見て、俺も本殿へ向かって走った。


神社の、それも御天神社の本殿のなかか

こんなところにズカズカと入ろうとは確かに普通の人は思わないだろう。


入って正面にあった本殿の扉には立花の言う通り鍵がかかっておらず俺たちは靴を脱いでそのまま本殿の内部に侵入することができた。

中は電気がついてなく薄暗い。


「灯り・・・は、なさそうだな」


「携帯のライトを使いますね」


立花は携帯を取り出すとライトを使って本殿の内部を照らした。

本殿の内部は意外にも、ガランとしただだっ広い空間が広がっており、入ると木のいい匂いがした。

神社の内部なんて初めて入ったけど案外質素なつくりなんだな。


そして、その大きな空間の一番奥にはご神体を祀っているんであろうこれまた巨大な神棚が鎮座していた。


「確かにここは予想できないし隠し場所にふさわしいかもな」


「・・・ですね

そして、あの桐の箱が・・・」


部屋の中央に無機質に置かれた木製の机の上に置かれた小さな箱。


「・・・この小さな箱か」


神器なんて大それた名前をしているから一体どんな仰々しいものかと思っていたが・・・

近くでよく見ると桐の箱に入った升サイズの小さな正方形。

これが恐らく神器なのだろう。

俺が箱を手に取る直前、立花が唐突に声を発した。


「ご存知ないかもしれませんが

神器は、一度触ってしまうとその触った人に所有権が移転します」


「どういう意味だ?」


所有権?

移転?

もう少し一般的な高校生にも分かるような言い方をしてもらいたいものだ。


「要は横どりはできないってことですよ

この箱を柊君が触れば、そのあと他の人が触ってもこの前哨戦の勝者は青月のままってことです」


「つまり、最初に触った人の学校が勝者になり、そのあとに誰が触ろうがそこは変わらない、ということが」


「ですね」


「へー

なるほどそんなルールが・・・」


携帯のライトで箱を照らし続けながら立花は話し続ける。


「一般生徒にはそんなマイナールール説明されていませんがね

ただ、五校評議会が先生向けに発出した通知には記載があるんですよ」


この木箱を最初に触ったほうが前哨戦の勝者になる・・・

そしてこの場には俺と立花の二人。


瞬間に俺は嫌な予感がして立花の方を振り返った。


「ん、じゃあ、俺とお前どっちがこの箱に触るんだ?」


「どうぞ

・・・柊君が触ってください」


立花はニヒルな二枚目の微笑を顔面に張り付けて、手のひらを下からこちらに向けつつそういった。



「え、いいのか?」


わざわざ俺にそのようなことを説明するぐらいなのだから、正直ここからひと悶着ある気がしたので拍子抜けだった。

やはりこいつの考えていることは分からない。


「ええ

僕が裏切ると思っていたんでしょう?ならちょうどいいじゃないですか

君が触れば僕の疑いも晴れます

勿論、あの協定は有効ですが」


なんなんだよ、こいつ結局最後は譲るのか

何が狙いなんだ。

もしかしたら逆に案外いい奴なのか

もう何が何やら分からないがとにかく早くこの戦いを終わらせたい。

俺がその箱を手に取ろうとしたその瞬間・・・


「!?」


「いっ・・・!」


小さな光が指先で光った後

静電気の超強化版といった電撃の痛みが急に指先に走って箱を触ることができなかった。

何が起きたのか理解できなかったが、電撃が俺の指めがけて飛んできたのだと徐々に理解した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ