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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
前哨戦篇
55/82

自分勝手だな相変わらず



俺たちを追い立てながら則武さんは尚も話し続けた。


「・・・ただ、さっき逃げていった白夜生たちのスマートウォッチはリタイア表示をしていたわね

で、あるのなら、そうね、予想だけど()()()()()()()()()()()()()()()()、なんてところかしら」


まじかよ

この短時間にこの少ない情報でそこまで推論が届いてしまうなんて化け物かよ・・・こいつ



「ふふ

半分ぐらいブラフで言ったのだけど、柊の反応を見る限り図星みたいね」


「・・・まじ?」


しまったやらかした。

思わず驚いた顔をしたがそれを則武さんは見逃さなかったのだろう。

よくこれだけの情報で正解にたどり着いたものだと感心していたがそんなことをしている場合ではなかったらしい。


中学の頃から思ってはいたがやっぱりこの人は賢い。

雪峰や立花も相当だが、やはり勝るとも劣らないレベルで。



雪峰と立花は肯定も否定もせず、ただ黙ってポーカーフェイスのままだ。

則武さんはそんな二人を交互に見ながら話を続けた。


「・・・恣意的に異能力使って自分のスマートウォッチを攻撃するのは前哨戦の規約違反

五校評議会とラボに話をすれば一発アウトね」


「・・・もしその仮説が正しかったとしても、それをどうやって証明するつもりなんですか」


則武さんの脅しにも顔色一つ変えず立花が視線をまっすぐ向けて答える。

この追い詰められた状況下でも立花はポーカーフェイスを崩していない。

お互いまだまだ腹の探り合いといったところなのだろう。


「正攻法なら、さっき逃げた白夜の生徒たちに事情を聞くのだけど、貴方のことだから用意周到に証拠を消しているのでしょうね

ただ・・・ぶっちゃけ私も貴方たちと同じようにあまり大人を信用していないから、チクりたいとも思わないわ

・・・かといってこのまま見逃すつもりもないも当然ないのだけど」



則武が再び異能を使い、更に炎の壁を厚くする。

最早360度周りを火で囲われてしまい、完全に外に出れないなってしまった。



「柊、いや・・・ねえ、想・・・

そのタブレットを私に渡して、外部と連絡を取らないでこの場にい続けるなら、最終的に見逃してもいいわよ

もっとも拒否権は貴方たちにないのだけどね」



想・・・?

いきなり則武さんの俺の呼び方が苗字から名前呼びになったことに違和感を感じる。

中学の頃に戻ったのか?よくわからない。

しかし、そんなことよりもこんなところにずっといたら体力も消耗してしまうし

どうにか打開策を考えたい・・・が、今の俺にはその手段が思いつかなかった。



「・・・えらく暴力的な手段に出るんですね、紅陽の会長さんは

僕や柊君のような今は異能力を使えない人もいるというのに容赦ないですね」


「今はそれから今後も、貴方の挑発に乗る気は永遠にないわ、立花君」


「はは、えらく嫌われてしまいましたね・・・」


どうやらこの二人は初対面ではないらしい。

立花の挑発も虚しく則武さんに軽くあしらわれてしまった。

冷静沈着な則武さんには口撃で調子を崩す、というのも難しそうだった。

にしても則武さんにここまで嫌われるって以前に立花の奴何をやらかしたんだか・・・


「やっぱり渡す気にはなれなさそう?」


優しい、まるで中学時代の仲が良かった頃みたいな声で俺に話かけてきた。

則武さんみたいな美少女にそんな風に気にかけてもらえるのは素直に嬉しい。

ただ、俺の気持ちは絶対に変わらない―――


「・・・則武さん」


「なあに」


「どうであれ、お前にこのタブレットを渡す気はねえよ・・・」


はっきり目を見て言い切った。

俺はもう青月の生徒であって、お前の協力者ではない。

今の俺の行動原理は雪峰紗希を助けることだけだ。


「そう・・・なら、この件をラボと五校評議会に通報することになる

そしたら、想の大好きな青月の会長さんに大きな傷がつくことになるけど

それでもいいの?」


「それは・・・」


雪峰にこれ以上危害は及んでほしくない。

そう思った俺は様子を伺うために雪峰の方へ顔を向けたが


「いいの、そのくらい

柊は気にしなくていいから・・・

だからタブレットは絶対渡さないで・・・」


雪峰が小声で俺に呟いた。

俺の決定は少なくとも雪峰の意志には反していなかったようで少しだけ安心感を覚えた。


「・・・ねえ、想」


「なんだよ」


雪峰の回答には何も反応もしないまま、則武さんは俺に話し続けた。


「想はどうしてそこまで青月に肩入れしているの?

貴方は、別に五校の関係者ではないのだから五校の争いなんて関係のないことだわ

想が欲しかったのは平穏な生活だったのでしょ?

なら、私にそのタブレットを渡すか、もしくは神器の場所を教えて

そうすればあとは私がその2人の生徒会長の今後も含め、このしょうもない五校の争いをうまく収めるから

私も別に雪峰さんと対立したいわけではないし」


則武さんの発言からは自分の行為は善意からくるものであり、俺にとっても則武さんに協力することこそが最善だ、というニュアンスを感じた。

しかもそれが俺にどうして理解できないのか、といった感じの言い方でもあった。



確かに俺個人は五校と関係はないしどの学校が五校祭で勝とうがどうでもいい。

それに賢い則武さんのことだから、五校の生徒会長が五家の人間というこの前代未聞の年で五校の対立をうまく収める方法を考えているのかもしれない。

ただ、直接関係ないとはいえ、俺だって五校に色々振り回されてきた人間だし、そんな風に上から知った様に決めつけられるのは素直に腹が立った。


いい加減イライラして言い返したくなって我慢できなくなり、俺は中学時代からの溜まってきたもやもやを気が付けばぶつけていた。


「・・・自分勝手だな相変わらず」


我慢の限界だった。

いい加減この数年言われっぱなしだったから今まで我慢していたけど、いい機会だ、この際則武さんに溜まった気持ちを言い返してやる。



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