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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
前哨戦篇
54/82

なんだか楽しそうなことをしているみたいね


途端、スマートウォッチの画面が割れ真っ赤に染まる。


同時に地図アプリでも異能力者が倒されたことを確認したようで、通知が届いた。

しかもどうやらB判定だったらしい。

此奴一人倒しただけでも結構な範囲の地図の靄が消えてしまった。


何となくわかってはいたがB判定すら思い通りに操れるのか立花のやつ。


スマートウォッチからナイフを引き抜くと先ほどのリーダー格らしき男は次の生徒へナイフを渡す。

こうして、一人づづ自分のスマートウォッチを攻撃し、リタイアを確認すると次の人に渡していった。

目の前で見ているとなかなか異様な光景だったが、そのおかげか持っているタブレットの地図の靄は少しずつだが着実に消えていった。

そして、ちょうど用意した40人ぐらいがリタイアしたあたりで地図がついに神器のありかを表示した・・・


「こ、ここは・・・」


地図の靄が少しづつ薄くなり、消えていった結果、赤色の点で表示された神器の場所が徐々にクリアになっていく。


「これは・・・御天神社みたいね」



ぼんやりとだが御天神社が紅く染まった。

ただ、まだ靄が少しかかっているので御天神社のどこにあるのかまでは分からない。



「問題は神社の中のどこにあるかでしょう

境内の中を探した参加者なんていくらでもいます」


立花の言う通り、御天神社は市街地の中心部に立地してある。

多くの生徒が境内の内なら探し切っているだろう。

その後も白夜の生徒が自身のスマートウォッチを毀損し続けることで、ついに詳細な位置が分かった。


「・・・どうやら神器のありかは、地図上だと御天神社本殿のちょうど中心部にあるみたいね」


「神社の本殿に無許可でいきなり侵入するような五校生徒は恐らくいないだろうしな、ここなら余程自信がないと探さない

そりゃ普通に探しても見つからないわけか」


神器のありかは御天の市街地にどうやらあるようで、立花の読みが当たった格好だ。

兎に角、ほかの人の地図にも表示される前に早く俺たちで神器の元へ向かわないと。


「よし、じゃあ早速行きましょうか」


「他の人を代わりに派遣できないの?

私たちが行くより早く神社まで向えるでしょ?」


「情報は漏らせば漏らすほど、意図していない所へ漏れるリスクも高くなる

タブレットの情報同期を切っている以上、神器のありかを知っているのはこの場にいる僕たち3名だけ

横取りのリスクを考えればこのまま僕たちで行くべきでしょう・・・!?」


言い終わると突然、立花のいつも冷静な顔が珍しく大きく強張った。


「プランEです!」


急に立花が叫ぶ。

その瞬間、蜘蛛の子を散らしたように一斉に白夜生たちが橋のたもとから走って逃げていった。

白夜生たちは立花の指示に特に反抗することなく、まるで事前に説明があったかのように何の混乱もなく数秒で綺麗さっぱりいなくなってしまった。


何があったのか理解できず振り返ると人影がみえる。

紅陽の制服を着た女の子のようだ

スタイルのいい肢体から徐々に視線を上にあげていくと、紅の長髪と見覚えのある整った顔面。



「・・・なんだか楽しそうなことをしているみたいね」



言うまでもなく、人影の正体は紅陽高校生徒会会長、則武文だった。


こんな人気のない場所、意図しない限りは来れないだろう。

それも、A判定がわざわざ出向いてだなんて普通ありえない。


つまり、此処に俺たちがいるという情報をどこかで手に入れたのだろう。

それでも、どうして此処にいるのがバレたのか皆目見当がつかなかった。


しかもこの場に西條はいないし、おまけに則武に立ち向かえるような異能力者は誰一人としていなかった。

最悪の状況だ。

「紅陽の会長が何の用があってこんなところにわざわざ来たの?」


雪峰も則武に気づくと、そう言って前に出で対峙した。

目つきが鋭く睨むような眼をした雪峰を見たのは以前の邂逅以来だ。


いくら普段は穏やかな雪峰でも則武さんには流石に態度が変わるか。

因縁の相手だからそうなるのも仕方ない。



「・・・このあたりを散歩していたら、偶然貴方たちを見かけたから話しかけただけよ

貴方たちの方こそ、こんな人気のないところで何をしていたの?あんな大人数で」



雪峰に睨まれても則武さんは、特に動じることもなく相変わらず飄々とした様子だ。

強者の余裕、というやつなんだろうか


「・・・50人の白夜生が彼女を襲ったんですが、1人で返り討ちにしたんですよ

ついさっきね」


そう立花が答える。

しかし、この嘘は、則武さんには通用しないことを俺は一瞬で察していた。

何故なら・・・


「流石、青月の会長さんね・・・

ただ、私は雪峰会長このひとの異能強度を知っている

そして、それだけの力もないことも・・・!」


「きゃッ!」


「っつ!?」


則武さんはなんの前触れもなく、突然異能を使ったらしい。

気が付けば河川敷は俺たちを囲むように一面炎で覆われてしまった

ここまま橋の下にずっといたら酸欠の上、蒸し焼きにされてしまう。


「仕方ない!

一端、外に出ましょう」


立花に導かれ、やむを得なず俺たちは後退し、炎を避けながら、橋の下からでて、開けた場所に移動した。

熱さからどうしても川の方によってしまう。

逃げ道を徐々に塞がれ、完全に誘導されているのはわかっているがやむを得ない。


則武さんも逃げていく俺たちを追ってゆっくりと前進してきた。


ほんの少しだけ口角を上げてにやりと笑った。

相変わらず余裕の表情だ。



則武さんは左手で右ひじの下を持つ妙な腕の組み方をする癖を持っているのだが

それを久々に見たのでなんだか懐かしい気持ちになった。


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