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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
邂逅篇
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正式名称は”文部科学省研究開発局異能課”所管の”異能開発利用研究所”

「ああ、そうそう

あの日は担任の高木先生に書類を生徒会まで届けるように頼まれて、それで生徒会室に行ったんだよね

で、ノックしても返事がなくて部屋に入ってみたらなぜか則武さんがいて、目があったと思ったら、視界が真っ白になって、それで気が付いたら部屋が無茶苦茶になって・・・

もうそれどころじゃなかったからすっかり忘れてたよ」


事件の後、先生方からはみっちり事情聴取を受けたわけだけど、この2人には結局言えないままだったもんな。



「あそこまでの騒動があったのに、一切警察沙汰にもなってないしそれどころか音沙汰なしでしかも先生からも説明がないのが怖くてさ

俺はてっきり傷害沙汰にでもなって紅陽の会長さん(則武さん)が捕まって、ネットニュースになるぐらいあるかと思ってたから」


「柊君はあれからあの騒動がどうなったか知らないよね・・・

えっと、あの日、先生たちからの事情聴取があって柊君は帰ったと思うのだけど

それが終わった後に学校に来たのは、警察ではなくラボの職員だったの」


「・・・ラボっていうと、異能研究所のことでいいんだよな」


「ラボ」というのは御天みあまでは「研究所」の隠語であることは常識だ。

異能研究所は俺たち高校生にとってはお世話になりたいような、なりたくないような微妙な機関でもある。



「そうです!

異能研究所がどんな所かは知っていますか?」


「いや、お恥ずかしながら俺はE判定で異能が発現していないからからあんまり詳しくない。

異能が発現したら強制的に数日間収容されて、異能の制御方法や異能に関する教育を受けクローサーを持って帰還してくる施設だってこととか、勿論、この土地独特の異能について研究している国立機関ていうのは知っているけど」


「それだけ知ってれば十分。

正式名称は”文部科学省研究開発局異能課”所管の”異能開発利用研究所”ていうのだけど

兎に角あの後ラボの職員が数名生徒会室に来て現地調査を行いその結果、則武さんの焼ききれたクローサーを見つけたの」


クローサー・・・

異能力がでかすぎる、具体的に言えばB判定以上の強力な異能力を持つ生徒が強制的に着用を義務付けられている装置だ。

開発元は勿論ラボとそして関連する民間企業。

強い異能を持った者同士が戦うことも珍しくない御天みあまでは異能力で生徒が大きなケガをしないようなストッパー装置が必要で、その役目を果たすのがクローサーというわけだ。


見た目は基本的にバンド型だが様々な色や形があり、異能を使いすぎると強制的に異能を使いづらくなるような仕組みだったと記憶しているが無能力者の俺は詳しくは知らない。


ただ、裏を返せばクローサーを持っているというのは自分が強い異能を持っているということの証明でもあるので俺たちみたいな高校生の間では一種ブランド化されていて

通常は、あまり人に見せないように二の腕や太ももに巻くのだが、あえてミサンガのように短く詰めて手首や足首に巻けたりチョーカーのように首に巻いて見せつけるやつ性格の悪い奴もいる。

余談だが我々E判(無能力者)にとってはそういうことする奴は嫉妬や僻みの対象でしかない。

素直に腹立つ。


「で、クローサーが今回の騒動と何の関係があるんだ」


「今回、則武さんが生徒会室が焼けるほどの異能を発動してしまったのは

本来なら異能の出力を抑える役割を持ったクローサーがうまく機能せず

結果異能が暴走してあのような事故を起こしてしまった、という風に異能研究所ラボは結論付けたの

つまり、今回の騒動で悪いのは異能を使ってうちの生徒会室を燃やした則武さんではなくて

うまく機能せず異能を暴走させてしまったクローサー、ひいてはその開発元であるラボや御天大学そして企業側であるという、という結論に落ち着いたみたい」


淡々とまるでそれが当然であるかのように雪峰さんはそういった。


「は?

いやいや悪いのは異能を暴走させてクローサーをぶっ壊して他校で暴れた則武さんだろ、普通は。

じゃあなんだラボが泥を被って、結果的に則武さんは御咎めなしってことか?

そんな馬鹿なことあんのか」


想像の斜め上を行く展開すぎて思わず鼻で笑ってしまった。

あの時去り際に則武さんが「異能課が何とかする」的なことを言っていたのはこのことだったのか

何でもありだな本当。

A判定は貴族扱いか何かか?


「勿論、紅陽(こうよう)高校の先生が則武さんを口頭で注意ぐらいはしたのかもしれないけれどね

ただ、今回の一件で特に大きな処罰はないと思う

燃えてしまった生徒会室の修繕も文部科学省異能課が出資している外郭団体が請け負うてことで青月高校側とも話がついてる、て高木先生から聞いたわ」


「まじか・・・なるほどなそこまで話がついてんならそりゃ大きな話にならないはずだ

権力とずぶずぶじゃねーか」


放火自体はラボのせい、壊れた生徒会室の修繕は異能課の外郭団体が持つから則武さんにもうちの高校にもなんの迷惑も掛けさせないってことか。

異能そのものがすごい力だってことはもちろん知ってたけど、国も動かせるんだからとんでもねえな


「万が一メディアから今回の件が注目されたとしてもクローサーの不具合ということで話をするでしょうしね

それに大人に真実をもしチクったとしても、先に則武さんに手を出したのはうちの千織なの

だから則武さんに完全に非があるか、といわれたらそうでもないて所も苦しいところね

今回の一件で則武さん、ひいては彼女が会長を務める紅陽高校にダメージを与えるのは難しそう」


淡々と雪峰さんは話し続ける。

まるで、こんなことは割とよくある話だとでも言わんばかりでちょっと怖かった。


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