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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
前哨戦篇
40/82

なんかがっつきぎみだよな

「・・・今更かもなんですけど、どうして篠崎さんは異能力者狩(あんなこと)をしていたのですか?」




出会ってまだ10分ちょっとぐらいしか経過していないように思うが、竜生なら受け入れてくれると判断したのだろう。


西條は早速、竜生に俺たちがずっと考えていた謎を単刀直入に聴いていた。




「・・・期待に応えられなくて申し訳ないが

わしにも分からん。陸斗が何を考えているのかはの」




申し訳なさそうな竜生の声が弱々しく響く。

しかし、残念ながら陸斗の真意は竜生にもわかっていないようだった。

結局空振りか。




「・・・てことは、あの1件は100パー陸斗の指示か」




「わしが自発的にやると思うか?逆に」




「まあ、そうだな・・・」




竜生に懇切丁寧になぜB判定の異能力者を狩ることにしたのか説明する優しい陸斗なんてまったく想像できないしな。

大方、無理やり連れまわされて異能を使わされた、なんてところなんだろうなこの感じだと。

一緒に行動していた竜生でも知らないのなら仕方ない。

これはいよいよ、陸斗に直接会って聞き出すしかない、か。




「・・・それでどうするつもりじゃ

その紅陽の副会長とやらをどうやってみつけるんじゃ」




「一応、雪峰経由で、紅陽の副会長がここまでどこに出現したのか場所は聞いておいた。

どうも、紅陽の周辺から青月に向けてどんどん移動しているらしい。

それでこの公園を集合場所にしたってわけ。」




「なるほど、にしてもピンポイントでどこにいるのは分からんのじゃろう?」




「そうだ

ただな、これも雪峰の情報だが、この近くの高架下で紅陽の生徒が集団で宝を探してるらしい。

だからまず竜生の異能で俺たちの姿を隠して高架下まで行き、紅陽の生徒が油断した隙に

西條に奇襲をしてもらって、新城さんをおびき寄せようってわけ」




「・・・

それでわしの異能が必要なわけか」




「そういうこと

普通に近づいても今の西條なら即逃げられそうだからな」




それと本人には言わなかったが、万が一なにかあったときにもB判定の竜生なら俺よりはるかに西條の助けになりそうだしな。

共闘するにせよ、勝てそうになくて逃げるにせよ、こいつの異能は必ず役に立つはずだ。




「そういう作戦です!

大丈夫ですか?」




「わしの異能の話ならそれぐらいお安い御用じゃな。

西條さんと想と自分の姿を消すぐらいなんて朝飯前じゃ」




「さすがB判定

にしても、陸斗といいお前ら変わったなー」




いじられキャラの竜生ですら、今となってはここまで差がついたのかて思うと悲しいな。

隔世の感すらある。




「中学バスケ部の一軍はお前以外は全員B判定以上だからな、想」




「言うな・・・」




いやほんとなんでこんなことになったんだろうな。

自分で言うのもあれだけど俺は陸斗と比べても遥かに日ごろの行いいいはずだぞ。

他のバスケ部メンバーとそんな大きな差があったようには思えないんだがなあ、自分でそう思っているだけなのだろうか・・・




「すみません、そのじゃあ時間もないですし、紅陽の生徒がいるうちに早速行動に移しましょうか!

想、何度も申し訳ないんですけど・・・」




「分かったよ、でも高架下についてからのほうがいいだろ。

時間制限もあるわけだし」




「す、すみません!それもそうでしたね

先走りました」




「てか、なんか西條はさっきからがっつきぎみだよな

しかも顔もちょっと嬉しそうというか楽しそうだし」




なんかさっきからちょこちょこ思ってたけど、俺の血を西條がやたら欲しがってんだよな・・・

なんか事情があるのだろうか、面と向かって聞きづらいが・・・




「そ、そんなことないですから!!!

そんな目で見ないでください!」




必死に否定する西條に疑惑の目を向けつつ、俺たちは紅陽の生徒がたむろしていると噂の高架下へ移動した。




「おーほんとにいますね」




「だな・・・」




高架下に到着してみると雪峰の情報通り、紅陽の生徒数人がタブレットを持って宝を探していた。


全員の手首にはスマートウォッチ、どうやら全員異能力者らしい。

竜生のおかげで紅陽の生徒たちとは数メートルしか離れていないし、全く隠れてもいないのに気付かれる気配すらなかった。


索敵にはこれ以上ないってくらい便利なたつおさんの異能なことで。




「じゃ、じゃあ柊・・・」




ずっとお預けを食らった小さな子供のような顔の西條にせかされる。

分かったからそんな焦んなよ。

俺の血がそんなに飲みたいのかね。それともさっさと異能状態になりたいからなのだろうか。




「はいはい

あんまり見んなよ、たつお」


「で、ですね、篠崎さんには申し訳ないですけど・・・」



「いいから!わしに気にせずはよしろ!」



後ろを向いた竜生をよそに、俺は再び肩口を露出させた。

西條は待ってましたといわんばかりの勢いで俺の肩を掴むと、大好物を食べる前みたいな嬉しそうな顔で俺の肌に歯を立てた。

注射をされているような鋭い痛みの後に、ねっとりした温かさが遅れてくる。




「いっ・・・つ・・・」


「・・・ありがとうございました」


血を吸った西條は数秒もしないうちに、耳としっぽを再び発現させた。

最初は慣れない西條の見た目だったけどもう慣れてしまったな。

噛まれるのは慣れそうにないが。



「おわったか?」


「ああ、すまんかった」



「しかし、人の血がないと異能が発動しないというのは珍しい発現条件じゃなあ」


「やっぱり珍しいのか?」


「少なくともワシの周りはきいたことはないの

いわゆる代償型異能力者は珍しくないがそれが血、というのはの」



「代償型異能力者、ていうんだな、知らなかった」



「お前は本当に御天の人間か?想・・・

代償型異能力者の大概は異能を使うと普通の異能力者よりも遥かに体力が消耗される、というパターンが多いんじゃよ」



「うっせ、興味ねーだけだよ・・・」



そんな呆れたみたいな顔してんじゃねーよ、竜生のくせに。

異能のこととか、ラボのこととか、俺もいい加減勉強したほうがいいのかね。

せめて一般常識ぐらいは知っておくべきなのだろうね。意欲はないけど。



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