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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
前哨戦篇
38/82

紅陽の副会長っていうと・・・


再び西條はポケットから小さなナイフの柄の部分を取り出す。

異能力を流し込むことで起動する短刀型デバイスだ。

それを3つ起動させた。


うち1本を黒縁メガネに思い切り投げつける。


「また同じ手?

懲りないね」


黒縁メガネの注意を引くためという意図は変わらない。


残りの2本の短刀も投げつけ、黒縁メガネに隙を作らせた西條は再び日本刀型デバイスの射程圏内に踏み込んだ。


「はあああ!」


腰の回転を使って思い切り斬りかかる!

しかし、ここまでの戦闘で傷がついてしまっていたせいだろうか

左手を守る骨にぶつかった瞬間、ガラスが割れるように木っ端微塵に日本刀デバイスが折れてしまった。


「あーあ、得意の得物が折れちゃったみたいだね」


「いえ、全く問題ありません

これで、あなたも逃げれなくなりました」


デバイスが折れた時の隙を使い

西條は骨の隙間を会いくぐって骨の刀を持っている黒縁メガネの右手首を左手で掴んでいた。


「ふーん・・・

捕まえたところで何になるの?」


「あたしのデバイスが折れたのは貴方の骨の方が硬いからですけど

でも、私の拳と貴方の骨はどっちの方が硬いんでしょうね!」


「な!?」


何かを瞬間で察した黒縁メガネは腹の間にバリケードのように多数の骨を生やして防御態勢をとりはじめた。

無数の骨が服を突き破って、服がズタズタになっているが、緊急事態だと思ったのかそんなことは気にしていないようだ。


そして西條は黒縁メガネの手首をつかんだまま、思い切り両足を開いて腰を回した。

そのまま一発拳をお見舞いするつもりだ。


「は?まじ?馬鹿なの?

いやいや、最高硬度の僕の骨はチタン並みの硬さを誇るんだぞ!

それを腕力だけで破壊なんて無理に決まってる!」


「無茶かどうかはすぐに分かりますよ!」


「君の拳の骨が折れて終わるだけだぞ!」


「はあああああ!!!」


思い切り振りかぶった西條の右腕はそのまま黒縁メガネの腹めがけてまっすぐ飛んでいく。

そしてその鉄拳は腹の前にあった骨の盾を突き破り黒縁メガネの脇腹に深々と刺さってしまった。


「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・」


悶絶の表情で前かがみになって声にならない悲鳴をひとしきり上げた黒縁メガネはそのまま地面に突っ伏した。

勝負あり、か


「どうですか!

って・・・気絶してます」


「スマートウォッチが赤く点灯しているしどうやら勝負あったみたいだな」


敵ながら同情する。

内臓でも破裂してんじゃねーのかこれ、大丈夫なの?

救急車でも呼ぶべきなのか

いや、この場合の正解はラボの職員か。

可愛そうだし、あとで電話しといてやるか。


「ですね、これで無理なら次は腕か足を握力で握り潰してやるつもりだったんですけどね」


「まあ、制限時間的にはギリギリだったみたいだから今の一発で倒れなかったら、厳しかったかもな」


「あ、本当ですね、もう異能が・・・」


狼の耳も尻尾ももう跡形もなく消えていた。

本当にギリギリだったらしい。


「とりあえず倒せたんだからよかったじゃねーか」


こんなごり押し戦法で倒すのはなんとなく西條らしい気もするな。


「ここ最近ラボに入りびったっているときに、格闘技のコマがあったんで履修してみたんですよね!おかげでパンチの威力もかなりアップしました!

強くなりましたよあたし!」


「そういう問題なのかよくわからんけど

本当強くなったよ、色んな意味で・・・」


「このまま則武さんも山懸さんもぼこぼこにして百倍返しにします!・・・

て、柊!携帯が鳴ってますよ」


ホントだ

ぼっちの俺には珍しく携帯が鳴っている。

戦いが終わって一息つく暇もないのかね。


俺の携帯が鳴るときは大概の場合親からの連絡か西條からの勉強のお誘いと相場が決まっているが今回は違うようだ。

それでも、待ち受けにはいつもの名前が表示されていた。


「もしもし?」


電話に出ながら、西條にも電話の声が聞こえるようにスピーカーに切り替えた。


「お疲れ様、どうも順調みたいね」


落ち着いて涼やかで穏やかな声。

何度聞いても癒される。

電話の声の主は勿論我らが会長、雪峰紗希だ。


「よく知ってるな

ちょうど今、紅陽のヘッズを西條が倒してたぜ

ごり押しで」


「ヘッズを?それは凄いわね

ただ、厄介なことが起こってるみたいだからちょっと電話させてもらったわ」


「なにかあるのか?」


俺の問いかけに一呼吸分の沈黙の後、少し低い声で雪峰が答えた。


「・・・今、ほかの地区の子から連絡があったのだけど

千織の活躍を聞いて痺れを切らして紅陽の副会長が前線に出てきて色んな学校の生徒を倒して回ってるって話よ」


「紅陽の副会長っていうと・・・

もしかして新城さんですか!」




「うん、彼女、自分の異能力を使って、ワープして色々な場所に顔を出して、他校の生徒を倒して回ってるとか

しかも、倒した生徒に千織がどこにいるのか聞いて回ってるそうよ」


「紅陽の副会長ていうと・・・誰だ?」


西條はピンと来ているみたいだが

ついこないだまで陰キャぼっちをしていた俺が有名人であれ他校の生徒なんて知っているはずがないのだ。

そもそも興味もないし。

別に、開き直ってなどない。絶対に。


「始業式の日に、則武さんを迎えに来た子がいたでしょ、あの子よ」


「です、あの前下がりボブの子です」。


「ああ、言われてみればそこはかとなく」


始業式の日に生徒会室を燃やした則武さんは突如現れた光の扉をくぐって紅陽にお戻りになられたわけだけど

あの光の扉を出現させた女の子が実は副会長だったわけか。

へー、あの子もなかなかかわいい子だったけどあの見た目で副会長か。

強いな、色んな意味で。


「それで、その子はどんな異能を持ってるんだ?」


「あの方とは何度かお会いしたことがあるのですが、テレポート系の異能を持っているはずです。

このあいだも則武さんをうちの学校から連れて帰るときに異能を使っていたのを覚えていますか」


「ああ、あの光の扉が、その新城さんって子の異能なんだろ?

また、見るからに厄介そうではあるな」


「そうなのよね

それで、これからどうするつもりか聞いておこうと思って

新城さんに鉢合わせてしまう前に一旦、青月に帰ってくる?」


雪峰の提案も至極当然ではある。

もう既に西條は序盤の主導権争いという意味では十分すぎるほど活躍しただろう。

ちょうど異能も切れたタイミングではあるし一旦青月に帰って休息を、というのも分かる話だ。

ただ、―――

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