骨の絶対防御
高速移動し一気に加速した西條は気が付けば身を縮め、黒縁メガネの左斜め下に潜っていた。
そのまま日本刀デバイスを居合切りの要領で突っ込む勢いを利用して切りかかった。
シールドを貼りなおす時間もなかったし、西條の攻撃が通るのは確実だったはずだ。
「ふふ・・・」
「っ!?」
しかし、黒縁メガネは西條の攻撃を左手の前腕で防いでいた。
普通なら素手であんな攻撃受けていたらそのまま腕を切断されておかしくないはずだ。
それでも斬れていない。
それどころか傷一つついていなかった。
咄嗟に骨で西條の攻撃を凌いだのだと察する。
こいつの骨はどんだけ硬いんだ。
「僕の骨はデバイスなんかより遥かに硬いからね
普通に攻撃しても、届かないよ!」
日本刀が刺さった前腕をそのまま振り放す。
その勢いで腕の中にあった何本もの骨が一気に露出した。
まるで太い木の枝が何本も腕の色々ところから腕を守るように生えているような見た目だ。
「見た目ぐろいな、その骨」
「・・・気持ち悪いですね」
「僕もあまり好きな見た目ではないけどね
でもこれで左腕はどの角度からでも守られる。」
確かに四方八方色々なところから骨が枝のように生えているから、どの角度で切りかかろうが骨が邪魔して腕に攻撃は通らないだろう。
陸斗や則武には圧倒的な攻撃力のせいで西條が近づけなかったから勝てなかったわけだが
そしてこいつの場合には、体が硬すぎて西條の攻撃が届かないってわけか。
「僕の異能は体内で自由に超硬度の骨を無数に生み出し、そしてそれを露出させることができる・・・
君の攻撃スピードは確かに凄まじいけど
肝心の攻撃がダメージを与えれないのなら何の意味もないよね!」
黒縁メガネは、その後も骨を飛ばす遠隔攻撃を西條へ向かってしつこく繰り返してきた。
西條は当然その程度の攻撃はすべて見切れるし、攻撃の隙間を縫って黒縁メガネの懐に入って日本刀型デバイスで攻撃を入れるものの、体に刀が当たる直前、骨が生えてきて攻撃を弾き無効化し続けていた。
かといって黒縁メガネの攻撃も、身のこなしが軽い西條にはまったく当たる気配がない。
どちらの攻撃もまだ相手に致命傷を与えることはなく、時間だけが過ぎていく。
それでも、黒縁メガネは遠距離での攻撃であり、西條はどちらかといえば近距離の攻撃を得意としているからか、いつの間にか徐々にだが確実に西條の余裕を削っていっていた。
「これでどうです!・・・」
再び西條が黒縁メガネの懐に入り今度は短刀型デバイスで肩口あたりを狙って攻撃してみたもののやはり、肩口から制服を突き破るように骨が生えてきて骨にナイフを突き立ててしまった。
結果、ダメージゼロ。
「何度やっても同じだよ
僕の骨の絶対防御を西條さんが破ることはないよ」
「くっ・・・」
そしてこのような膠着状態が続くのは西條にとって非常にまずいのも事実だ。
なぜなら、黒縁メガネと西條の異能力の最大の違い・・・
「あとさ、君の異能力のことはヘッズ限定であった事前の対策会議で聞かされたよ!
異能に時間制限があるそうだね!」
言いながら再び骨の弾丸を打つ黒縁メガネ。
もはや目が慣れてしまったのか西條は最小限の動きでそれを難なく躱していた。
「このまま膠着状態が続けばいずれ君の異能は時間制限が来る
そうすれば僕の勝ちってわけか」
「く!」
黒縁メガネがしゃべりに夢中になって隙ができたところを見計らって西條は一気に間合いを詰める
正面からの斬撃では攻撃力が足りないと判断したのだろう。
目と鼻の距離まで正面から近づいたのちに急旋回し黒縁メガネの後ろをとる。
そのまま背中へ思い切り刀を突き刺す構えに入った!
「おおっと、焦ったね!」
「おい、西條!危ない!」
完全に背中、それも死角をとったのは間違いなかった。
しかし、なんの予備動作もなく急に黒縁メガネの背中から、木刀サイズの大きな骨が勢いよく制服のブレザーを突き破りながら生えてきた。
そして骨は刺し殺さん勢いのまま西條に向かってまっすぐ伸びていく。
「・・・!」
命の危険を察知し野生の勘が働いたのか、直前で攻撃をキャンセルした西條が急に方向転換し避けたため何とか攻撃に当たらず済んだ。
「危なかったっ・・・!」
「ん、捉えたと思ったんだけどな」
「骨が出てくる勢いを利用した攻撃もあるってわけですか」
「まあね・・・でも
今生えてきた骨はそのためだけではないけどね・・・
こんな風に・・・」
西條を攻撃しようと背中に生えていた骨を黒縁メガネは右手で引き抜いた。
まるでそれこそ木刀のような見た目の骨が姿を現す。
「次はこいつで相手してあげるよ」
言いながら黒縁メガネは靴と靴下を脱ぐ。
何をしているのか一瞬分からなかったが。
裸足になった黒縁メガネは裏から骨をにょきにょき生やしているようだ。
相変わらずグロい見た目の異能なことで。
「今度はこっちから斬りかかってみようかな」
どうやら足に生やした骨をバネのようにして一気に近づいてきたようだ
近づいて切りかかる。
当然刀で応戦する西條だが、武器の硬度が違いすぎるのと、剣を持った右手と、360度骨の生えた左手をハンマーのように使い、両手で攻撃してくる黒縁メガネに対応が後手後手になっていく。
デバイスと骨がぶつかるたび西條が弾かれてしまい。
いつの間に、押されるようになってしまった。
「強い・・・!」
「大丈夫か!西條!」
連続攻撃をなんとか受け切った西條だったが弾き飛ばされた勢いで数メートル後ろに後退してしまう・・・
流石にこのまま俺も見ているだけというわけにもいかない気がしてきた。
とはいえ戦力外の俺は他の人にどうにかして助けを呼ぼうとしたわけだが西條の思いは俺の考えとは真逆だったらしい。
「大丈夫です!柊はそこで見ていてください!」
「いいのかそれで?」
「あたしもここ最近ずっと鍛えてきたんで!
ヘッズの一人ぐらい、あたしだけで倒さないと修行の成果を証明できません!
見ていてください!」