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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
異能力者狩篇
27/82

企業名はgifture(ギフュチャー)

「そっか、じゃまたなんかの機会に返して

それで、昨日の陸斗の件は先生に伝えたのか?」


引き下がらない西條を軽くいなしつつ、言いながら雪峰の様子を伺った。

昨日は取り乱していたがどうやら今日は少なくとも表面上はいつも通りの雪峰だった。

穏やかで感情が乱れそうな気配など微塵もない。

ほんの少しの不満気を添えて雪峰は答えてくれた。



「昨日の件はもう先生方に伝えたわ・・・

けど、やっぱり異能に関することだから学校側はあまり本気で取りあってくれそうにないわね」


「まじか、人に見回りまでさせておいて冷たいんだな

則武さんが襲撃したときみたいな感じか?」


「そうね

そもそも改めて考えてみると昨日のあの先生方の見回りも外向けのポーズな側面が大いにあったのかもしれないわね

自分たちが見回りを続けることで異能狩り事件を解決させようなんて本気では思っていないのだと思う」


声と表情は至極いつも通りの雪峰なのだが、それでもほんの少し隠し切れない不満がにじみ出ているような気がした。

というかここ一か月でそれが分かるくらいに彼女のことが分かりだしたのだと思う。


「冷たいな、そりゃ」


「役割の違いなのかもしれないけどね

結局、具体的な解決策については文科省異能課に任せるみたい」


そういえば以前に言っていたな。

一介の公務員でしかない五校の教師たちに勉強や生活指導に加えて異能教育まで行わせるのは重荷過ぎると。

だから、役割分担のために文部科学省研究開発局異能課の出先機関、異能開発利用研究所ラボが存在しているんだ、と


「異能課に任せるってどういう意味だ?」


「異能課が出資している外郭団体に対異能力者向けの治安維持機関があるの、いわゆるキーパーね

そこに御天全域の警備を依頼して、今後被害者が出ないよう見回りをするみたい」


「見回りねえ・・・

ってそもそも陸斗を捕まえればそれで終わりな話じゃないのか」


昨日の様子では陸斗と竜生の二人しか犯人はいないようだったし、黄輝に乗り込んであの二人捕まえてしまうのが一番手っ取り早いだろうに。


「そこなんだけどね

山縣君がこの騒動の犯人では?て話は勿論職員室でしたし、今日もこれから職員会議に行くから改めて言うつもりだけど

学校サイドや異能課的には複数犯の可能性もあるからまだ警戒を、ってことみたい

まあどうせ建前なのでしょうけどね」


雪峰の不満の原因は十中八九これだな。

昨日あんなことまでされておいて陸斗に御咎めなしならそりゃそうなるよな


「まじか

じゃあ則武さんに続いて陸斗に対して何の処分もないのか?停学ぐらいには出来そうだと思ったんだがな」


「どうなんでしょうね、ただ先生方のリアクションを見る限り

望み薄のような気はしたわ

一応あんなことしてても五家の御曹司だし

なかなか面と向かった処罰はされない気がするのよね

もしかしたら今回の騒動を山縣陸斗が犯人だった、で終結させたくないのかもしれないわ」


「いやいや、治外法権かよ」


「えー!ありえないです!

私だって結構ひどいことされたのに!」


西條の言う通りだし

このままだと完全に泣き寝入りか

異能絡みは相変わらずの闇の深さだよほんと

てか、ほんとここまで西條は損な立ち回りだよなあ

報われてほしい。色んな意味で。


「もっと悪質なことをしてくれれば他にもやりようはあるのかもなんだけどね

基本的に彼のしていることはクローサーの改造のみ、しかももっと言えば異能の出力を抑えてるだけなの。

私たちへ危害を加えようとしたのは例外的に悪質だったけど結局未遂で終わってしまったし

捕まえるにはやっぱり現行犯しかないのかも

ああ、あとねどうも異能力者狩りには大人も少なからず関わってそう」


「どういう意味だ?」


「柊が言ってた山縣君のお父さんの件、昨日おばあさま経由で詳しく調べてみたのだけど」


「どうだったんですか?」


「彼が私に着けようとした特注クローサーの件

やっぱり柊の予想通り、山縣君の父親の会社の作ったクローサーみたい

彼の父は御天大学で異能に関するベンチャーを立ち上げて、その代表をしているようだわ」


やはりそうか

中学時代から餓鬼大将の父親の会社の話は時々話題になっていたからな。


「ベンチャーていうのは具体的にどんなことをしているのですか」


「企業名はgifture(ギフュチャー)

gifted future(異能化された未来)をもじった会社名みたい

異能力をヘルスケアやエネルギー分野へ活用させることを目的とした大学発のベンチャー企業みたいね

あとは御天大学と共同でクローサーやデバイスの開発に対する技術支援なんかもしてるみたいね

あの強力なクローサーもその研究の一環みたい」


「ヘルスケアとかエネルギー分野て具体的に何をするんだ?」


話を聞いただけではいまいちイメージが使いなかったので雪峰に聞いてみた。

中学時代には興味も特になかったので聞き流していたが、そんなことしてたんだな陸斗りくとのお父さんて。


「要は異能力で人を健康にできるデバイスを開発したり、異能力をエネルギー源にした乗り物を作ろうとしているみたい

まだ実用化まではこぎつけていないみたいだけどね」


「へー

異能って色んな分野に応用されてんだな」


そう聞くと異能って夢のある力だよなあ

当事者である俺たちは現在進行形で振り回され続けているから全くいいイメージはないのだけど。


「他分野への応用が期待されてるからこうやって国ぐるみで研究しているわけだしね

あと、giftureは大学発のベンチャーで、出資元には当然御天大学やラボもいるわ

だから企業って言っても国が大きく関わってる。

そういう意味でもそんな企業の代表を務める大物の息子の彼自身が今回の件でしょっ引かれることをいいと思わない人はそれなりにいるはずよ」


「はは、そりゃまあそういうものなのかもしれないけどさ」


「納得は全くできないですね」


「だな」


どうにかして陸斗には昨日の一件の罪を強制的に償わせたいし、一発やり返したいのだが今の俺たちの実力でも社会的地位でもそれを強制できるだけの力はないのか

残念すぎる。


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