なんとか逃げれたな
「そうはいってものお・・・犬がこんな寄ってきた時点で陸斗もお手上げなんじゃろ・・・」
竜生は陸斗ほど過激ではない、というかかなり常識人だ。
ボロボロの西條と元気のない雪峰という美少女二人に更に危害を加えるようなどこぞの頭のねじが飛んでるやつとはわけが違う。
恐らくこの状況なら俺たちの味方をしてくれるはずだ。
長い付き合いだから何となくそれは確証を持って言えた。
「しょうがないの・・・
想!此処から出たいのなら来た道をそのまままっすぐ帰れば大丈夫じゃ
あくまで変わるのは見た目だけで地形そのものは変わらんからな」
「OK
雪峰、西條!この隙にさっさと逃げよう!」
「おいこら待てや
まだ終わってねえぞ!このまま帰すのはありえん!
くそがあ!!」
「いきましょう!わんちゃんたちは私たちが逃げてもう少ししたら解散してくださいね」
「すまんな、たつお!」
竜生の話通り俺たちは犬の大群を残し公園の入り口からこの異能空間の外を目指すことにした。
俺が来た道を帰ればいいのであれば視界は真っ暗でも直線だし、道に迷うはずはないはずだ。
公園の外に出た瞬間再び視界を奪われ真っ暗になるが、携帯のライトで道を照らしまっすぐ突き進む。
日も暮れてしまいあたり一面暗くはなってしまっていたものの
しばらくすると現実に戻れたのか、再び住宅街に戻ることができた。
思わず安堵のため息をついてしまう。
「なんとか逃げれたな」
「いや助けてもらえてよかったです」
「マジで一時はあいつに殺されるかと思ったわ」
「ですね、あの電撃は強烈すぎました流石はA判定ですね
電撃食らった時はほんとに意識飛びかけました。」
「山縣君の弱点ていうのは、犬だったのね」
則武さんといい、陸斗といいほんとしばらく見ない間に変わっちまったよ。
この調子じゃ他のLARMSの奴らもどんな感じになってんのか想像もつかなかったが
それでも、陸斗の苦手なものはあの頃から変わってなくて少し懐かしい気持ちになってしまった。
「まああいつが生粋の犬嫌いてことを知ってるやつは少ないか
動物アレルギー持ちだってことも」
それでも今回、陸斗から何とか逃れれたのは西條が常識はずれな方法でたくさんのわんこを呼べたことが一番大きな理由な気がするけどな
「想がいなかったら私たちも狩られて紗希もあの特注クローサーを無理やり付けさせられていたのかと思うと本当に感謝しかないですよ」
「とりあえずは逃げれてよかったな、さっさとここから離れよう
にしても、犬はあのままでよかったんかね」
陸斗から逃げるためにわんこたちには殿としてあの公園に残り続けてもらったわけだけど今思えばかわいそうなことをしたかもなんて今更少し思ってしまった。
「此処から逃げたらおうちに帰るようにお願いしたので多分大丈夫だと思います!」
「いや、やっぱり会話できてんじゃねーか、すげーな
これはA判定待ったなしだな」
「え、ほんとですかね!
それはすごいうれしいです!」
いや、冗談半分で言ったんだがな・・・
本気でうれしくて喜んでいる西條を見ていたらそんなこと言う気は完全に失せてしまった。
そういえば西條は真面目過ぎて冗談が効かないタイプだったな
雪峰もそんな西條を見て少しではあるが静かに笑っていたのでまあ結果オーライってことにしておくか
「とりあえず学校に戻るか?」
とりあえず安堵した二人の表情をみて俺も安心した。
もう結構遅い時間だったが一旦学校で一息つかいないか、と提案すると二人とも賛成してくれた。
「はー、疲れました~」
陸斗から逃れた俺たちは再び生徒会室へ戻ってきていた。
先ほどまでの出来事があまりにも非現実かつ衝撃すぎて、あのまままっすぐ家に帰りたいとは誰も思わなかったからだ。
俺が一旦生徒会室へ帰ろうって言った時にも二人とも賛成してくれたんだと思う。
「まじつかれたな・・・
今日のこと、今から先生に言いに行くのか」
「いや、さすがにちょっと疲れました今日は少し休ませてください~
これからこないだみたいな長い取り調べ受ける気にはなれないです」
「そっか」
真面目な性格の西條ならすぐにでも陸斗のことを青月の先生にチクるのかと思ったのでそのリアクションは意外だった。
「正直、青月の先生に何か言ってもなかなか解決に向かわないのは前回の則武さんの一件で散々痛感したので」
そして理由がかなり悲しいのも今知った。
「なんか飲むか?」
生徒会室の中央のソファで伸びてる西條に話しかける
さっきまでの激戦を終えてもうくたくたなのだろう。
「いえいえ、お気遣いなく!
想も疲れてるでしょう?」
「いや、今日のMVPは間違いなく西條だからな・・・
インスタントでもいいなら
雪峰もなにか飲むか・・・?雪峰?」
「え、あ、ごめんなさい」
「紗希、今日はもうずーっと元気ないですよね
あんなことあったらそりゃ疲れてますよね、今日はもう帰りますか?」
「ううん、そんなことないわ・・・ごめんなさい」
「無理はしなくていいんだからな
じゃあとりあえずカフェラテにするぞ?」
「あ、うん・・・ごめんね、ありがとう」
あの場ですぐに解散せずに一旦学校に戻ろうと俺が提案した大きな理由―――
それはこの元気のない雪峰の様子だった。
何となくあのまま帰ってしまうとよくない気がしてそれでここまで引っ張ってきた。
どうにか元気づけたいものだがどうしたらいいのかわからない。
問答無用で部屋の中央にあるソファーに2人を座らせた俺は机の上にカフェラテの入ったカップを置いた。
「ほら」
「ありがとうございます・・・」
「あ、ありがとう・・・」
「あったかいですねー、おいしい」