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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
異能力者狩篇
22/82

狼ってさ、犬と仲いいのかな


「色々な特徴があるのだけど一言でまとめると体質変化ね

千織は信頼する人の血を吸うことで、一定時間だけ身体能力が大幅に強化されるの

その代わり見た目が狼化してしまうのだけどね」


そうか初めてあったときの西條への違和感はこれか

あの日則武さんに最後に突進したときの西條は狼化してたから微妙に見た目が違ったんだ。


「要するに狼男の女の子版てわけね」


「端的に言ってしまえばそうね・・・」


ちなみにここまでの会話でも雪峰は俺と目を合わせようとはせず、うつむいたままだった。

やはり何か思うところがあるのだろうか。

ちょっと心配になる。


「はああああ!」


このまま回避を続けても進展しないと判断したのか

西條が銃型デバイスの攻撃の一瞬のスキをついて再び陸斗へ突進した。


「近寄るなって警告したのにな」


「きゃあああ!」


「千織!」


「西條!!!」


陸斗へ殴りりかかったもののここまでで一番の強烈な稲妻が西條を襲った。

眩しすぎて一瞬目を閉じてしまうぐらいの明るさだった。

恐らく一般人なら即死しそうな衝撃とともに破裂音が聞こえてくる。


「どうやら青月の副会長は今日でE判定に格下げみたいだな」


電撃を落とした衝撃で青白い火花を周囲に出しながら、陸斗は見下すような目で笑いながら西條を見ていた。


「おい、大丈夫か!」


あまりにも大きな衝撃に雪峰はあまりの衝撃に放心状態でその場に座り込んでしまったが

俺は吹っ飛ばされた西條が見てられず思わず駆け寄ってしまった。

則武の攻撃を食らったときにも西條は吹っ飛ばされてたみたいだし、損な役回りだなお前も。


「うう、なんとか・・・ただ、もう食らいたくはないですね」


制服が砂と泥で汚れ、腕に擦り傷をつけた西條はそういいながら俺の肩をつかんで上体のみ起き上がる。

とりあえずどうやらまだ気絶はしていない。

あれだけの攻撃を食らっておいてこの程度のダメージで済んでいるのはある意味奇跡だろう。


「・・・ケガしてるな」


「仕方ないです。相手が相手なので

正直どうすれば勝てるのかあたしにも全く思いつかないです。」


「俺も思いつかない・・・けど

俺ももうかわいい女の子が傷ついる姿はこれ以上みたくないわ」


「え、今かわいいって・・・?」


仕方ない、こうなったら中学時代のこいつの弱点を刺激してみるしかないか

高校になって克服されてたらもう一瞬で終わりだが



「西條・・・

陸斗に勝てる方法は俺は知らんが、中学時代に一緒にいたから

陸斗が苦手なことなら俺は知ってる」


「え、一体なんなんですか?」


「狼ってさ、犬と仲いいのかな」


「?

どういう意味ですか?」


俺は陸斗に聞こえないように耳元で陸斗の苦手なことと今回の作戦を伝えた。


「は!?想!何を言ってるのですか!

そんなことやったことあるわけないじゃないですか」


「まあ、俺もやったことあると思って言ってはないな

ただ、俺が思いつく方法がそれってだけだ他にあるんなら全然そのやり方で構わん」


「うううう~~~~~」


「ち、おいこら根暗。いつまでそこにいんだ

これ以上、副会長を庇うんならお前ごと撃つぞ、こら」


俺たち二人の相談にしびれを切らした陸斗が銃口をこちらへ向けながら叫んでいる。

ただもう、これで十分だ。俺の思いついた作戦はもう西條に伝えたからな。


「柊!

もしこれで勝てなかったら覚悟しててくださいよね!」


「はいはい」


「はあ・・・恥ずかしいけどしかたないです。

これしか思いつかないのなんて悲しくなりますね」


観念した表情で西條は俺に回していた腕を離して上半身を起き上がらせた。

俺の作戦がうまくいくかは知らないが、とりあえず西條は俺の言う通り行動してくれるようだ。



「はあ・・・仕方ないですか」


俺の提案に渋々従う気になったらしい西條は四つん這いになると大きく息を吸い込んだ。


「わ、わおん、わんわんわーん」


泣いたわけではない。犬の鳴きまねだ。

にしても俺は犬を呼んでくれとは言ったが

鳴きまねをしろは言ってないし、四つん這いになれなんて1ミリも言ってないんだがな・・・

まあ、可愛いから全然いいけど


「わん!わん!わんわん!」


続けざまに西條は犬の鳴きまねを続ける。

もしこれで効果なかったら頭おかしい人でしかないな・・・

提案しておいてなんだがもう既に結構申し訳ない気分になってくる。


「おいおい、雷を食らって頭いかれたのか?

それとも負け犬の遠吠えてやつか?ああ?」


流石の陸斗もリアクションに困っているのか、片方の口角を挙げて蔑んだ目でこっちをみるだけだった。

気持ちはわかる。

攻撃する気も失せるわな


「西條、これ効果あんのか」


「・・・いや、私が聞きたいぐらいですよ・・・

とりあえず気持ちはすごい込めさせていただきましたけども」


ひとしきり鳴き散らしてみたが今のところは何の変化もない。

残ったのは陸斗との間に流れている気まずい空気だけだ。


「やっと終わったのか?

まあ、もう時間切れか

じゃあ、遠慮なく打たせてもらうぞ」


「はあ・・・やっぱ流石に無茶ぶりだったか」


陸斗が銃口をこちらに向けた銃型デバイスの引き金に手を掛ける

西條に恥をかかせただけで何の意味もなかったかななどと諦めかけた

・・・その瞬間



わん!


西條の声真似とは明らかにクオリティの違う犬の鳴き声が聞こえた。

いやこれはもう本物のそれだ。

そう思いながら後ろを振り返るとやはりわんこが一匹広場の入り口からこちらへ向けて走ってきている。

・・・来たか救世主


「え?」


「まじ?」


わん!わん!わん!


どうやら西條の犬語SOSが通じたらしい。

先頭のビーグルを皮きりに数匹の犬が大挙して西條めがけて押し寄せてきた。

恐らくここら一帯の飼い犬なんだろう。

西條のSOSが届いたらしく助けに来てくれたのだ。

この空間への侵入方法を人間が見つけることはほぼ不可能だが

わんこなら音を辿ってこの異質な空間を特定できるらしい。

そういう意味でもこの作戦はかなり有効だったらしい。



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