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ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
邂逅篇
2/82

ハイスクール・コンプレックス

地方都市 御天みあま




大した観光地も、商業エリアもない日本によくあるありきたりな地方都市だ




・・・異能に目覚める子供が次々現れる土地であるということを除けば






「ハイスクール・コンプレックス」





端的に言えば


旧友との2年ぶりの再会とか何だろうけど


素直に喜べそうにはなれそうにないななんて思う。






目の前には中学時代の同級生がいて


どうやら彼女はうちの高校の生徒会室を焼き尽くしたようだった。



異能という存在は御天にいる人間として様々な形で触れてきたわけだが

ここまで圧倒的に破壊できる人間を現実に目の前で見るのは今回が初めてだった。




俺が最後に見たあの日からこの人はいろんな意味で大きく成長したらしい




一方の俺はまだなんの能力も発現していないところから考えるとえらい差がついたもんだな




則武のりたけ あや


彼女に異能が発言して進学先の紅陽こうよう高校で生徒会長になったというのは風の噂で聞いていたけどこの生徒会室を見る限りマジだったらしい。




カーテンは燃えてるし、机は焦げてるし


金属製の本棚は歪んで、中に入ってあった本もボロボロになっている。


大規模な爆発でもあったみたいに教室は荒れに荒れていた。



ここまで荒れてんなら

映画の撮影にでも使えそうだな、なんてちょっとそんな場違いなことをつい思ってしまった。



「えーと、久しぶりだな、則武さん」


「そうね、久しぶりだわ、柊くん」



生徒会室をこんなふうにした張本人は俺が中学の卒業式で見た時より少し大人びて見えた。


中学時代は緋色の髪をポニーテールにまとめていたが今は下ろしている。


ただ、顔は相変わらずの猫系で、大きな目が特徴的なところは変わっていなかった。



すらりと伸びた肢体はモデル体型といって過言ではない。


その割にはセーラー服の上からでも、でるべきところはでているのがよくわかった。



彼女を見た人は10人中10人彼女のことを美人だというだろう。


ただ一つ、俺を見下しているかのような-20℃ぐらいの表情が怖すぎることを除けば


「この教室を燃やしたの、お前の異能なんだろ

A判定の火炎系異能力者になったていう噂は聞いてたけど、マジだったんだな」


ただ、正直言えばこんな風にいとも簡単に部屋を滅茶滅茶に荒らせるレベルの力を持っていたなんてもっと早くから知っていたかった。

俺は則武さんとはそれなりに仲がいいはずだって勝手に思っていたから。


「まあ、そうね

柊君は何か異能には目覚めたの?」


「残念ながらまったく

俺はE判、無能力者バニラだ」


「そう、なら私たちとは距離を置くことね

無能力者バニラが近づいたところで貴方にも私たちにも何もいいことないわ」


冷たいもんだな

もう少し俺と再会して喜んでくれとまでは言わないけど

それでも昔は仲が良かったと勝手に思っていたから

少しは気にかけてくれたのかも知れないなんて、そんな淡い希望を抱いていたわけだが

残念ながら木っ端微塵に砕かれてしまった。



「・・・てか、まだ五校祭は始まっていないのに随分と派手な事をしたんだな

ここまで焼き払っちゃったらうちの学校(青月)から何言われるかわからないぞ」



もしかしたら次の瞬間には俺もこんな風に燃やされちゃうかも、なんて恐怖心と緊張感が上回ったせいか


飛び火してまだ燃えている炎の暑さや煙の臭さはそこまで感じれなかった。


冷汗が首を伝う。


何かしゃべらないと間が持たない気がして脊髄で会話を続けた。


「・・・不可抗力。

別に私だってわざわざ他校の生徒会室でこんな暴れるつもりなかったわよ。

そもそも先に手を出したのはそちらだしね」



「なるほどな、でうちの学校に何しに来たわけ

わざわざ他校の教室放火しに来たわけじゃないんだろ」



「青月の会長さんにちょっと用があったの

次の五校祭、紅陽に協力してくれないかなってお願いしにね

まあもう断られちゃったんだけど」



則武さんが一瞥した方向へ目を向けるとそこにはうちの学校の生徒が2人

部屋の隅の二人で抱き合ってペタリと座っていた。

隅にいたからさっきまで気づかなかったな

ってかどっかで見たことあると思ったら多分この子たち、生徒会の役員だったはずだ。




あんまり学校行事には関心を持ってないから詳しくは知らないけど

生徒会演説してたのをちらっと見た気がする。





「へーなるほどね

てか、お願いしてる側がこんなに暴れるんか

さすが、武后様は違うな

断られてヒステリーでも起こしたのか?」




「皮肉のつもり?

だから別に私から手を出したわけじゃないって

あと、「武后様」っていうあだ名は中学の頃にやめてほしいって言っていたつもりだったのだけれどね

柊君こそ中学の頃あれほど私たち(五校)の戦いには高校生になってから首を突っ込まないでって忠告してきたつもりなのだけど

どうしてここにきたの?」



「ああそうだな、そういわれたのは覚えてる

まあ、俺も別に積極的に参加したいとはおもわないよ

今回は半ば偶然ここに来ただけだ」




「そう・・・3年前から気が変わってないようで安心したわ

・・・それで、雪峰さん、最後にもう一度だけ聞きたいのだけど

やっぱり私たちとは手を組めそうにない?

そんなに悪い話でもないとおもうのだけど」




「何度聞いても同じです!

私たちは、紗希は、あなたなんかの力を頼ったりしないでこの五校祭を戦い抜きますから!!」



先ほどの爆発のダメージがまだ残っているのか

本棚にもたれたままうちの高校のブレザーを着た生徒が声を枯らし、叫びぎみにそう答えた。

確か俺の記憶が正しければ、この子はうちの生徒会長ではなかったはずだけどな。


この子は多分副会長で、名前は・・・なんだっけか。



「私は西條さんではなくて生徒会長の雪峰さんに聞いているのだけどね

雪峰さんも反対?」



「・・・そうね、私もあなたに協力するなんてこと体が拒否しちゃって生理的に無理みたい」


西條さん、といわれた副会長を優しく抱きとめているうちの生徒会長も言い方は優しいものの主張は副会長のものと同じだったようだ。

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