表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイスクールコンプレックス  作者: 折原
異能力者狩篇
16/82

紗希は絶対に私が守りますからね


思い返して見れば教師が異能に関して俺たちに必要以上に聞いてくることはなかったように思う。

異能の存在そのものは否定しないが深く関与もしないというスタンスをどの先生も貫いている


「異能に関することはラボが一括して管理するっていう建前になっているから、学校側もそこまで深入りできない。というかできないの。

異能力に関する情報なんて機密情報の塊だし、特定の異能は持ってるだけで悪い大人に狙われる可能性があるからね。

そんな機密性の高い情報を学校の教師に管理なんてできるわけないし

生徒指導はしても異能教育はラボに丸投げだわ。異能の授業だってラボの職員がうちの学校に来て授業するでしょ?

だから学校と異能が密接に結びついていうのは五校祭の時ぐらいなの

その五校祭でさえ、管理、運営は基本的にラボと大学がしているしね」


西條の淹れたコーヒーに手を付けた雪峰が解説してくれる。

雪峰の使っているマグカップは先日3人で帰り道雑貨屋によったときに買ったものだ。


「言われてみればその通りとしか言いようがないな。

特に異能を持ってもいない学校の教師に生徒の異能についてのことまで管理しろていうほうが酷か」


そして異能について詳しくないがゆえに雪峰に見回りなんて危ないことを悪意なく頼めるわけか。

雪峰はどうせA判定の異能者なんだからそれくらい頼んでも大丈夫、なんて割と本気で思ってるのかもな。

困ったことだな。むしろこの子は自分の異能の期待と現実のギャップに御天で一番苦しんでいる子なのに

そんなことを考えながら浮かない表情で伏し目の雪峰をぼんやり眺めた。


「で、どうするつもりだ

見回りして犯人に出会ったら最悪だろ」


「紗希、断りましょうよ

危なすぎます!」


西條もどうやら俺と同じ気持ちらしく、普段のようなノリの良さはなく寧ろ逆だ。

今回の話には乗り気でないどころか反対している。

心配そうな表情がすべてを物語っていた。


「私も乗り気になれないのは確かなんだけども・・・

ここで断って異能について先生に怪しまれるわけにも行かないし、今までの努力を無駄にするわけにもいかないから」


そうか、教師たちは雪峰は強力な異能を持っているって勘違いをしているからそんな訳の分からないことを平気で頼めるのか

俺も心情的には西條と全く同じだしできるだけ雪峰には危険なところに近づいてもらいたくなかった。

青月高校の生徒会長が異能力者狩りにあったなんてことになればそれこそビックニュースだし、今まで雪峰が築いてきたものが一気に崩れかねない。

五校祭が始まる前に今までの努力が水の泡になる可能性もゼロではないだろう。


「そうは言いますけど!万が一紗希に何かあったら私は・・・」


「それにね、千織

今のところ襲われているのはB判定だけしかも被害もクローサーが壊されるだけだしね

そもそもB判定ではない私には関係ない話だわ

クローサーだって本当は私は持ってないしね」


「それでも・・・」


「千織、わがままかもしれないけど今回はこうさせて

そもそも見回りをするだけで、絶対に異能狩りの犯人と戦わないといけないというわけではないのだから」


「わかりました・・・」


普段は自己主張の少ない雪峰がここまで押すのも珍しい。根負けしたのか明らかに反対の表情の西條だったが最後は不満そうではあったが雪峰の提案を受け入れていた。


「対策は考えてるのか?

異能狩りに青月の生徒会長があったなんてことが起きたらそれこそ大騒ぎになるぞ」


「考えてる

まず千織には一緒に来てもらうつもり、いいよね千織?」


「勿論ですよ!

紗希は絶対に私が守りますからね!」


細い腕をまくりながら西條が言う。


見た目で言えば背も低いし体の細い西條はいまいち頼りないけど、異能力を考えれば西條はマストだろうな。

雪峰の護衛としてこれ以上頼もしい奴もいないだろうし


「あとこれも、先生方からもらったの」


「防犯ブザーとスタンガン・・・

痴漢対策みたいになってんな」


「あながち本質はとらえているんじゃない?

これが有効なのかどうかは甚だ疑問だけど」


「暴漢みたいなものではあるけど・・・」


にしてもうちの教師陣はもう少しましな対策を打てないのだろうか、と言いかけて飲み込んだ。

言ったところで西條と雪峰の顔を更に曇らせる効果しか恐らくないだろうから


「そうね、

あと・・・最後はこれを柊君に」


言いながら雪峰は俺に意外なものを渡してきた。


「なんだこれデバイスか?

初めて見る形だけど」


雪峰が俺に渡してきたのはクルミサイズの球体だった。

基本的に剣とか銃の武器型デバイスしか見たことがない俺にとっては初めて見る形のデバイスだった。何に使うんだろ。


「・・・これは位置情報通信デバイス。

分かりやすくいうとなんて言ったらいいんだろ

現在地を確認しあえるデバイスよ

2個で一対になっていて異能を流して起動するとこんな感じで、デバイスを触っている間だけ2つのデバイスの間に糸が見える

この糸を辿れば2つのデバイスのうち自分の持っていないデバイスの居場所がどこかわかるの」


雪峰が自分の持っているクルミ型デバイスに異能を流し込むことでデバイスを起動させた。

電源が付いたみたいに青白い淡い光が小さな球体を包む。

すると呼応するかのように俺の持っているクルミ型デバイスも起動した。

E判定バニラで無能力者の俺と違いD判定の雪峰ならデバイスも起動できるもんな。


起動させたデバイスを持ったまま雪峰は立ち上がると後ろへ下がった。

雪峰の言う通りデバイスとデバイスの間には青白い糸が見え、雪峰が移動すればそれに連動して糸も動く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ