変わった事件があるもんだな
「へー
変わった事件があるもんだな
てかクローサーを改造されたらなにか不都合なことでもあるのか
実害とか」
「クローサーを着けているとはいえ、B判定ともなればそれなりに異能が発現できるのが普通なの
柊は見ていないだろうけどこの間の千織や則武さんがクローサーをつけたままでも異能を使って戦えたようにね
でも、クローサーを改造されちゃうとそれこそD判定やE判定、つまり、デバイスがやっと起動できる程度や一般人とほとんど変わらなくなるくらいの異能しか使えなくなってしまうてわけ」
「なるほど、それで異能狩りってわけか
でもクローサーを外せば、元に戻るのだろ?」
「一般の方に危害を加えないように、B判定以上の異能力者は普段からクローサーを付けることが御天の条例で義務化されているわ
だからクローサーは着脱が自由にはできないし
確か外すだけで自動的にラボに連絡がいくようになっていたはずよ
クローサーをつけてないのが学校にバレたら即補導だしね。
しかも、クローサーはパーソナルな個々の異能に対応するためにオーダーメイドだから
則武さんみたいな特別扱いの異能力者でもなければ、そうそう簡単に取り外したり、新しいものに取り替えたりできないの
だから一旦改造されちゃうとしばらくは実質的に異能はほぼ使えない状態になるでしょうね」
「なるほど、それで異能力が使えなくなるから異能力者狩りってわけなのか
にしてもそいつの目的ってなんなんだろうな」
今の話だけ聞いてると、異能力を持たない俺からすると別にそこまで悪いことをしているように正直思えなかった。
ていうかE判定からするとむしろもっとやれという感想しかない。
イキったB判定の異能力者に正義の鉄槌が下ってるとしか思えないのだが。
「一応、他校の異能力者から異能力を奪うことで戦力を削ぐという目的なのかなんて言われてたのだけど
どの高校もまんべんなく被害にあっているの
目的がわからなくてみんな頭を悩ませているのが実情みたい」
そんな露骨にわかりやすいことするわけないもんな。
異能力者狩りなんて非現実な事件に興味津々だった俺はもう少し雪峰と話て情報を手に入れ色々と考察したいと思っていたのだが
「・・・て、柊!
いつまで雑談しているのですか!
勉強!勉強しますよ!」
俺とは違い、西條はいつの間にか異能力者狩りに対する興味はすでに薄れてしまっていたらしい。
俺に勉強をさせるべく再び身を乗り出して俺の近くに教科書とノートを広げていた。
ち、いいところだったのに
「あー、わかった!わかった!
勉強はちゃんとこれから頑張るから
てか、雪峰さんも傍観決めこまないで少しは救いの手を差し伸べて頂けませんかね」
ダメもとで隣で俺たちのやり取りを見てさっきの真剣な顔から、柔らかい笑顔に戻った雪峰さんに助けを求めてみた。
改めてみても、深い青の長髪と目、通った鼻筋に薄い唇と青月の制服が合わさって実は女子高校生モデルなんですて言われても納得しかなかった。
こんなにかわいい子が会長何ならなんでもっと早くから注目してなかったんだろ俺。
今こうしてこんな至近距離で話ができているのが夢みたいな感じすらある。
「ふふ、ああなった千織は私でも止めれないわ」
俺の懇願もむなしくそういって腕を組んだ雪峰は西條へ目を向けていた。
視線の先にはスパルタ教師と化した副会長様が俺の模試の成績を見つつ何か考え事をしている。てかいつまで晒されてんだよ俺の成績。そのうちこの部屋に貼るとか言い出しそうな勢いだな。
「いや、そんな軽く諦めないで・・・」
「とりあえずは次の定期テストが目標ですね!
休日は1日10時間は勉強してくださいね最低でも!
これから私も横で一緒に勉強するので分からないことがあったら何でも聞いてください!」
「地獄じゃんそれ・・・」
「これも強い異能を発現させて紗希を助けるためです!」
それを出されると俺も何も言い返せなくなってしまうな。
まあ成績がこれで本当に上がるのなら転校危機も回避できるわけだし俺にとっても悪い話ではないし完全に悪い話でもない、か
「お手柔らかにお願いしますね・・・」
この日はこのまま西條のマンツーマンレッスンで脳みそが溶けるぐらい勉強させられたため「異能力者狩り」についてもすっかり忘れていたわけであるが、数日後生徒会室で再びその話題が上がることになった。
理由は単純、うちの高校で更に被害者が出たからだ。
◆
初めて異能狩りの話を聞いてから数日後
放課後いつものように生徒会室で西條から勉強を教えてもらっていると、雪峰が生徒会室に入ってきた。
先生に職員室に呼ばれていたようでそのせいでいつもより遅れての登場だ。
「おつかれさまー」
「おつかれ、今日は遅かったな」
「紗希!お疲れ様です!」
「紗希、今日はなんだか疲れてますね・・・
コーヒーでも飲みますか?」
「ありがと、千織
でも気を使わなくてもいいよ自分で淹れるから」
「お湯はもう沸かしているのでそんなに手間でもないので大丈夫ですよ
気にしないで下さい」
「そっかありがと」
一度は西條の申し出を断った雪峰だったが結局押し切られたようだ。
雪峰は軽い溜息をつくと荷物を棚の上において椅子に座る。
それだけの動作ですら何となく絵になってつい見惚れてしまう。
ただ、西條の言う通り心なしかいつもより疲れているように見えた。
西條はてとてとみたいな足音がしそうな歩き方でポットの前に立ちコーヒーを入れて雪峰の前に置いた。
こいつはこいつで相変わらず小動物的な可愛さを発揮している。
「ん、ありがとうね千織」
「それで、職員室に呼ばれてたみたいだったけどなにかあったの」
「また狩られたらしいわ」
「何の話ですか?」
「異能力者狩りの話よ」
「へー、そういえばあったなそんな話
まだ終わってなかったのか」
前回の模試の成績が悪かったせいか
ここ数日、放課後は西條に半強制的に生徒会室へ連れ込まれ、みっちり勉強を強要され帰りも遅いためいまいち世間の情報が追えてないしな。
そうでなくても友達がほぼいない俺には噂とか情報なんてほぼ入ってこないわけだけど。
「終わってないどころか絶賛継続中
昨日も被害者が出たの、しかもうちの生徒」