流石は会長様だなほんとに
「勉強はともかく、千織に部活に入るように勧められていたよね
結局どこか部活には所属することにしたの」
「いや帰宅部のままだな」
熱中できるものでないんなら部活なんて時間と体力の無駄だと思っている俺の選択は帰宅部だった。
合理的判断の上での帰宅部ということを一応強調しておきたい。
「なるほどなるほど
・・・中学の頃も帰宅部だったの?」
「残念ながら中学の頃はバスケしてたよ
それこそ黄輝高校の生徒会長たちと一緒にね」
運動することはそこまで好きではないのだがバスケだけは別だ。
それなりに練習はきつかったし最後の公式戦にも悔いは残ったがトータルで考えたらかなり充実していた。
俺の人生の中で一番輝いていた時間かもしれない。
「全然残念ではないと思うのだけれど
それなりに身長は高いしバスケしてそうな感じするもんね
なんで高校ではやめちゃったの?」
「なんで・・・うーん、やっぱ一番は本気でスポーツするのって体力的にしんどいから中学までで終わりにしたかったていうのと
あと、中学時代に一緒にバスケしてた仲の良かった連中が高校でバラバラになっちゃって青月にはいないから、かな
あのメンバーだったからバスケ続けれたんだと思う。」
バスケそのものも勿論好きだったが、中学時代にバスケを続けれた一番の理由はメンバーに恵まれたからだと思う。
青月に入ってから実は一年の時にバスケ部を覗いたことはことはあったのだが、何となく肌に合わなそうだと感じたのでバスケ部には入らなかった。
決して陽キャの集まりだったからではないぞ。陰キャはそんな環境には長居できない。
「帰宅部なら尚更!勉強を!頑張るべきです!!!
寧ろ紗希を見習ってください!こんなにも努力しているんですから!」
言いながら西條はとんでもないものを俺に見せてきた。
西條が俺の机にたたきつけたのは雪峰の今回の模試結果だった。
いつもの間に雪峰の鞄からパクったのだろう。
いや西條がこんなスパルタ教育ママみたいな子だとは思わなかった。
出会ってまだ一月だが既に俺のおかんより俺の成績を気にかけているのではなかろうか。
というか絶対そうだ。ありがたいようなありがた迷惑のようななんともいえないな。
「いつの間に・・・
いやてか、勝手に私のテストの成績見せないでよ、千織!」
どうやら無断借用らしい雪峰さんの成績表を覗いた・・・覗こうとしたけど、ちょっとよく見えないや涙で
なんだこれ、同じ人類とはおもえないのだが
志望校も俺とは明らかに違う階層の学校を書いてるしそれで圧倒的A判定てどういうことなんだ。
これがスクールカースト最上位の方の実力か。
「勉強は勿論、それ以外にも紗希はものすごい努力をしているんです!
運動だってスポーツテストはいつもトップクラスの成績ですし、ずっと水泳をやってて去年も御天の選抜に選ばれてます!
あと足も滅茶苦茶早いです!」
「足の速さはそんなにアピールするところではないけどね・・・
小学生じゃあるまいし」
なるほど
どうやら見た目通り雪峰紗希という女の子は文武両道の完璧秀才タイプらしい
それでこのかわいい顔面とスタイルなんだから天は雪峰紗希に何物与えてんだよ不公平だろ。
「流石は会長様だなほんとに」
言いながら西條ではなく雪峰に模試の結果を返す。少し恥ずかしそうに受け取る雪峰の姿も可愛かった。
それでもこの子には異能力だけは今のところまだ恵まれていないらしい。
どうして目の前にいるこの美少女はここまでで優秀なのにまだ異能力はD判定なんだろう。
文字通り異能以外のすべてを手に入れてはいるが裏を返すと異能だけは手に入れていない理由が滅茶苦茶に気になる。
ここまで勉強ができて運動神経がいいのにD判定しかないなんて御天全体で探しても逆に珍しいんじゃないのか。
A判定まで行くかはともかくとしてB判ぐらいなら楽にいきそうなものだが
雪峰より優秀じゃないのにB判定の奴なんていくらでもいるだろう
実際、今回の模試の成績もB判定の異能を持ってる西條より上みたいだし
何か特別な理由があるのか?
例えば、両親が御天出身でないからとかか?
いや、その線も違うか
確かに両親が共に御天の人間であることも、子供に異能が発出する条件の一つではあるが
D判定をだしている時点で異能そのものは発現できてるてことだもんな。
つまり、異能そのものは持っているという時点でA判定になれる可能性は少なからず持っているはずだ。
「ほんとです、少しは紗希を見習って真面目に勉強してほしいです。
それにずっと柊がE判定のままで、そのことで紅陽の則武さんに今後も笑われるのも嫌じゃないですか?」
「いわれると確かになあ
てか、そもそも西條の異能って何だっけ」
D判定の雪峰と違って西條はB判定だ。
つまり、自分特有のオリジナルな異能を持っている。
こないだの生徒会室爆破事件の時も異能を発現していたようだったが展開が忙しすぎてよくわからなかったし改めて知りたいと思った。
「私の異能ですか?
今はまだ秘密です」
「なんで」
すんなり教えてくれるのかと思っていたが西條の反応は予想外のノーだった。
「ちょっと諸事情あって人前ではあまり見せたくない異能なんです恥ずかしいので」
「なんか逆に気になるけどなその言い方だと」
人前で見せたくないって一体どんな能力なんだろ。
そんな風に含みのある言い方をされると逆に気になってしまうじゃないか
「な・・・!もしかして変態ですか!?」
途端に西條の顔が赤面し、睨むような目でこちらを伺う。
なんでこんなリアクションされなくちゃならないんだ。





