三話、双翼の迷い
前回から数ヶ月経って夏休み目前の話です。
その日も、見事に撃ち抜かれた・・・。
―男子寮自室―
この日は月に二回の学内ランキングの更新日だった、怜斗は自身のデバイスで確認していたランキングは350位から355位に下がった。
「はぁ。」
怜斗は溜め息をつき落ち込んだ、自室には一人で自身のベッドに沈みこむ。
「はぁ。」
怜斗は再び溜め息をつき静かに眠りに落ちた。
聖マギアナ学園魔導科には学内ランキング制度がある、学内ランキングにはさまざまな特典が有り、400位以内だと奨学金の額が上がり、350位以内だと外出時間の延長、300位以内だと夏季休業中の学外の魔法及び固有魔装の使用を許可され100位以内だと常時学外の魔法発動を許可される。
怜斗は最近実戦の勝率が下がってきている、最近では遠距離攻撃系の固有魔装持ちに全く勝てていないのだ。
「・・・。」
心身共にボロボロの怜斗をルームメイトである東堂 虎は見守っていた。
「風呂にも入らずに…。」
トラはそう言い毛布を怜斗にかけた。
―数日後―
月日は完全に真夏を迎えた七月、魔術による温暖化軽減はしているがやはり夏は暑い。
今日はランキング戦の行われる日だ、ランキング戦は週に三回行われて二週間の勝率を計算し二週目の週末に発表される。
怜斗は第一訓練室に立っていた。
「よし。」
怜斗はそう言い深呼吸し対戦相手を見た。
「よろしくな、的。」
対戦相手は同じクラスの納見 冬弥、遠距離系の固有魔装を使用しこれまでも怜斗を負
かし続けている。
「ランキング戦、如月 怜斗対納見 冬弥、いざ尋常に…始め。」
審判の掛け声と共に両者は固有魔装を展開する。
「輝きの翼。」
怜斗の背中に光翼が開き、怜斗の足が床を離れる。
「王の弾丸。」
冬弥の片手に拳銃型の固有魔装が現れた。
「今日も踊ろうゼ、俺の銃声と硝煙と共に。」
冬弥がそう言い、拳銃が火を噴く。
「くっ。」
怜斗は短く唸りギリギリで銃弾を避ける。
「良く避けたな、ならこれはどうだッ。」
冬弥は再び引金を引いた、今回は二回連続で銃声が響く。
「ぐぁ。」
怜斗は初弾は避けたが二発目に対処できず、銃弾を右肩に喰らい叫んだ。
怜斗の右肩から流血のエフェクトが流れた。
「おいおいどうしたよ、これで終わりか。」
冬弥は引金を引き怜斗の右足のに命中。
「ぐぅ。」
怜斗は唸り膝を着く。
「これじゃ射撃の練習にもならないよぉ。」
再び銃声、今度は左肩。
怜斗は左肩を撃ち抜かれ倒れる。
「これで、終わりだ。」
冬弥はそう言い銃声、銃弾は怜斗の頭をヒットし終了のサイレン。
「勝者、納見 冬弥。」
怜斗は横たわったまま動かなかった。
―第一中庭―
怜斗はベンチで座り込んでいた、この頃の自身の無様さを振り返っていた。
怜斗の不調は六月の始めあたりからだった、初めは遠距離系の固有魔装持ちの勝率が下がりだした、それが溝になり段々と勝率が落ちて今では勝率10%以下になっていた。
「はぁ。」
怜斗は溜め息をつき下を向いた。
怜斗はこれからの事を考えたいた、このままやって行けるのかどうか。
「どうするか…。」
怜斗が頭を抱えていると自分を呼ぶ声がした、その声は柔らかく可愛らしい聞き覚えのある声だった。
「如月さん。」
その声の持ち主は怜斗が数少ない心を許している人物、クーデル・パシスティだった。
「よう、クー久しぶりだな。」
ここ一ヶ月間怜斗は自身の不調を改善するべくずっと特訓していたためクーと会う機会がなかった。
「はい、久しぶりなのです。」
クーは笑顔で答え怜斗の隣に座る。
「大丈夫ですか、顔色がよく内容ですけど。」
クーは心配そうに怜斗の顔を覗き込む。
「あぁ、大丈夫だ…少し実戦の戦績が悪いだけで。」
怜斗はそう言いまた顔を地面に向ける。
「元気出してくださいね。」
クーはそう言い怜斗を見つめる。
「最近自分の限界が見えてきた気がするよ、これ以上は無理な気がしてきた。」
怜斗は自身でも驚いていた、今まで弱音を吐いたことなどあまり無く、吐いても他人に聞かれることは
全く無かったからだ。
「如月さんなら大丈夫なのです。」
クーは今まで以上に大きな声で言った。
「何故わかる。」
怜斗はクーを横目で見て言った。
「だって如月さんは私に言ってくれました、人間は努力すれば可能性は広がると、人間に絶対は無いと、だからそれを私に教えてくれた如月さんならきっともっと先に行けるはずなのです。」
クーはそう言い顔を真っ赤にした。
怜斗は思い出した、自分の大切な人の言葉を。
(なぜ、忘れていた…俺が絶対に忘れてはいけない事を。)
怜斗は心中で呟いた。
「そうか…そうだよな…。」
怜斗はそう呟きベンチから立ち上がる。
「魔法に絶対はない、忘れていたよ、思い出させたくれてありがとな。」
怜斗はそういい口元が緩んだみクーの頭を撫でて言った。
「次のランキング更新までに300位以内に入る。」
―第一訓練室―
トラは自分のランキング戦の準備をしていた。
「あいつは大丈夫だろうか。」
トラは呟き窓を見る、その方向は怜斗とクーが居る第一中庭だった。
「あの少女には心を許しているからな。」
トラはそう呟き戦闘用ステージに立つ、相手はクラスメイトの綺堂 或真だった。
「ランキング戦、東堂 虎対綺堂 或真、いざ尋常に…始め。」
審判の掛け声と共に試合が始まった。
「光の細剣。」
或真は怜斗との初戦で見せたレイピアを出した。
「月光。」
トラは右手に刀を出した。
「セヤァァァァ。」
トラは素早く床を蹴り或真に詰め寄る。
或真も待ち構えるようにレイピアを向ける。
「「トリャァァァァァ。」」
二人の声が重なり或真は鋭い突きを繰り出す。
「閃!!。」
しかしトラは或真のレイピアを振り下げで弾き、尽かさず刀を振り上げた。
振り上げた刀が或真の右脇ばあらから左肩にかけて切り裂き、或真は大きな流血エフェクトを出しのけ
反る。
「クッ。」
或真は唸り体制を取り直すが既に遅く、トラの刃はすぐそこまで来ており刃は或真の心臓部分を一突き
にし、試合終了のサイレンが鳴った。
「勝者、東堂 虎。」
トラは勝利を喜ぶ隙もなく訓練室を出て行った。
―第一中庭―
トラは怜斗の様子を見にいったが、そこには怜斗がクーの頭を撫でていた。
(フッ、うまくやってくれたようだな。)
トラはそう心の中で思いその場を後にした。
今回も読んでいただきありがとうございます。
今回は怜斗のスランプを書いてみました、随分急な展開ですが早く怜斗の真の力を開放するためにご了承ください。
次回は今回の続きです。
こんな私の下手くそな物を読んでいただきありがとうございます、これからもよろしくお願いします。
※2018/04/13、一部修正。
※2018/06/12 文の書き方変更