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お楽しみいただければ幸いです。

 今の私には家族にも仲間にも会わせる顔が無い。


 私の能力を知っている人は私に鞭を使わせようとしてくるが、全てを透過するので遠心力が働かずに間合いの長さを活かせない。

 最近になって気が付いたのだが、黒鉄翠さんが私に持たせてくれたこの旗槍は特別だった。

 これは他の旗に能力を発動させたから分かった事だが、旗の帆が軌道を添うような動きをする事は本来ありえない事だった。

 旗がはためくという理を透過し能力を発動した状態でアストラル体に変換され固定されるのだ。

 旗が軌道を添う仕組みは黒鉄翠さんの能力に関係しているのかもしれない。

 詳しくは分からないけど。




     「殺したよ」




 復活させた二つのトランシーバーのうちの一つを使いバスの皆に声を飛ばす。

 透視して位置を確認して壁越しに一突き、あまりにも容易くピエロを殺せる。

 理を歪めた不死身に近い怪物であるピエロだからこそ、理をも透過し本来ならば何の影響も与えない透過の能力だからこその結果だ。

 怖い。


     『了解です。途中で拾いますので、待機でお願いします』


     「了解です。ピエロはもうこの付近には居ないので焦らずにお願いします」


     願うなら、叶うなら、ゆっくり来て欲しい。


 短い時間の間に殺し過ぎた。


 今の私には家族にも仲間にも会わせる顔が無い。


 怖い。


 透過の理が歪みピエロが私に流れ込んでくる。


 怖い。


 皆が来る前に抑えなければ、怖い。


 怖い。


 怖い。


 怖い。


 怖い。


 私はピエロじゃない、怖い。


 怖いよ、皆。


 皆。


 助けて、皆。


 皆。


 皆。


 皆。


 皆。


 でも、


 でも、


 でも、


 でも、


 でも、会わせる顔が無い。


 今の私の顔はピエロだ。







   *







 世界には限りがあり、世界を世界で廻さなければならなかった。

 その廻りを人は、

 運命とも、

 輪廻とも、

 律とも、

 定めとも、

 呼んだ。

 そう読んだ。


 だが、幾多もの名を持つその激流に身を任せてはいけない。


 その激流の理を信じてはいけない。


 理を、地点Fを超えて行け。


 さもなくば、この世界に凪と平穏は訪れえない。


 俺は口を開こう何度でも、何度でも、口を開こう。


 俺は魔王だ。


 俺は、魔王は、神であろうとも ClownクラウンLordロード であろうとも歯向かう存在だ。


 凪の海は死の海だ、酸素の雑じらぬ死の海だ。


 俺は魔王でその凪の海を望む。


 もう、石が、意思が、意志が、激流で削れる様を見たくはない。


 殺した者の力を得る力、膨れ上がるこの果実を俺は刈り取る。


 原始の味を知る為に。


 この世界で、この樹で、いや、全ての樹々の中で初めて実った果実。


 レベルアップの概念を初めて与えられし存在、東雲 夏希。


 ピエロを殺す事で神をも超える力を得た唯一の存在、特異点。


 それは、ClownクラウンLordロード


 この果実が弾ける衝撃は激流を加速させてしまう、止めなければならない。


 神よ、俺は貴方を怨みはせずとも憎みます。


 この代償は大き過ぎる。







   *







「大丈夫ですか?」

「顔色が良くないですね」


「大丈夫だよ、埃っぽいのとカビっぽいのが苦手なだけだから。 心配してくれてありがとう、心配かけてごめんね」


「分かります!私もかび臭いの苦手なんですよ」


「アハハハハッ」


 嘘だ。

 私は嘘つきのピエロだ。

 一時的な嘘で回りの安心をかい、私の心を抑えているだけだ。


 私は今どんな顔をしているのだろうか。


 怖い、鏡を見るのが、鏡に映った私の顔を見るのが怖い。


 ピエロを殺す事に何も感じない。


 私はいったい何を求めていたのだろうか?


 分からない。


 分からない。


 分からない。


 分からない。


「ん? 佐藤特等兵、頬に何か汚れが付いていますよ」






     原始のその力はシンプルが故に強力であった。


     まるで呪いの様に彼女を蝕んでいった。






 共喰い計画は実像の有る計画であり、噂でとどまってほしかった計画でもある。

 共喰いのピエロは人間が嫌いで人間に興味が無く強さを求めて強きピエロ、更により強きピエロへと興味の対象を移して彷徨い歩く。

 だから、ここにこのピエロが来たのは必然であった。


 全ては唐突に、


 放たれた弾丸のように。


 だが、


 弾丸とは誰かに造られそして放つ為にに込められるものだ。


 全ては準備されたものなのだ。


「コンテナのヤツ!」


 丸山特等兵が叫ぶよりも早く、佐藤 夏希は旗槍を突き出した。

 反射的に、誰かに導かれるように、自分に向かって飛んできたピエロに旗槍を突き出し突き刺し殺した。

 透視とソナーの効果範囲外から飛んできたピエロ、共喰いをしてきたピエロ、計画の為に強化されたピエロ、背筋が冷たくなるほどの強きピエロ。

 そのピエロを殺した事で果実は熟れた。


 ピエロが覆いかぶさった事で出来た影、硝子に反射し映った顔には身に覚えの無い痣の様な文様が、見覚えのある痣の様な文様が、浮かんでいた。

 穴の開くほど目を通した資料、そこにその存在の特徴として書かれていた文様と同じだ。

 あの日見た本物と同じ文様が自分の頬にも浮かび上がっていた。

 放置されていた為にくすんだ硝子とピエロの造った影が今の自分が何なのかを教えてくれた。


     『私が私を嫌ってどうするんだい?』


 私が私、私は私。

 私はいったい…


     『君の望むままに生きてくれ』


 私は…







   *







「ヘリ操縦士2名、通信班二班8名、一般兵6名、特等兵1名、計17名の帰還を確認しました」

「そうか、帰ってきたか、良かった」失ったものは大きい、しかし、それでも帰って来てくれて良かった。

「佐藤特等兵が帰還途中で行方不明となった事と黒鉄研究所所長が行方不明になった事、関係がある様に思えます」

「早計だな、まだ分からない」帰還した者達に詳しい事情を聴かないといけない。


(これ以上旭君と紫さん、そして皆の大事なものを失うわけにはいかない)


「行方不明」まだ生きている可能性が有るのなら、探そう。

「百合大将、どうかなされましたか?」上の空になっていたようだ、気を緩めていたわけではないが部下に失礼だな。

 位が高かろうとも、こうべは低く。

     『実るほど頭が下がる稲穂かな』

 師の教えの一つだ、短い期間であったが良い時間であった。

「いや、何でもない、大丈夫だ」探す準備をしなくては、な。

「黒鉄様、佐藤特等兵、両名の捜索指示を出します」コンテナを運んでいたヘリに乗っていた隊員達の死亡は確認している。

「誰があのコンテナの中身を入れ替えたのかについても調べておいてくれ」そんな事をできるのは、軍の上層部の者達だけだ。

「我々の中にも反逆者ピエロが居るのですね」皮肉なものだ。


 だが、


「ピエロっていうのは本来は人がなるものだからな」今も変わらずだな。

 時代は繰り返すと師はおっしゃっていた。

 不変の平和が繰り返しの中に訪れる事は無い、とも。

「古株が倒れる事を恐れてはいけない、か」栄養は必要なのだ、人は巨木に魅了されるが巨木は苗木が育つために必要な光をも奪い去る。

 日陰で育つは寄生植物と苔ばかりだ。

「責任は私が持つ、探してくれ」身を切り枝を切ろう。


「かしこまりました」


 ピエロの王は見つからず、身内のピエロがあぶり出される。

 ピエロが何を考えているのか分からない。

 答はいったい何処にある?







   *







 紫色の光が眩い。

 だが、眩いのは魔力を込められた金剛石の輝きの為なのかもしれない。

 そう思えるほどの輝きを讃える金剛石がこの空間には存在している。

 だが、この空間には金剛石以外にも輝きを放つ存在達が居た。


「この先に私を感じますね」

「スゴイでござるな」

「私もなんか感じるなぁー」

「拙者は何も感じないでござるよ」

「バカなのー?」

「酷いでござるよ!」

「私も感じるのー」

「スゴイでござるな」

「あの、僕も何も感じません」

「わ、私もです」

「何だか人が増えてきましたね」

「ちょくちょく増えてるよね」

「いつの間にかなのー」

「此処は何処なのでござろうか?」

「わかりかねます、しかし、こちらから私を感じます」

「僕を感じる事は無いのですが、あの人の匂いは少し感じます」

「それには同意するでござるよ」

「取り敢えず行ってみましょう」


お読みいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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