分解とアサシン
挿絵が有ります、苦手な方はお気を付けを。
お楽しみいただければ幸いです。
コンテナから伸び出た白い手の様な、口の様な物体は輸送していた大型のヘリを呑み込み、包み込み押しつぶした。
黒煙の中に浮き上がったソレが白いモノの正体を教えてくれた。
何故、ピエロを運んでいる事を教えられなかったのか。
私は、噂好きのカレンさんとの会話の記憶からある言葉を引っ張り出していた。
【 共喰い計画 】
直感的にだが、これが答えなんじゃないかなと思った。
人間がピエロを物理的に殺すのは不可能だ、能力がなければ人間はピエロを殺す事が出来ない。
腕を切ろうが首を切ろうが死にはしない、切断、分断、細断、された分だけ増えるだけだ。
だから、ピエロを殺せる能力者は特別扱いを受けるのだ、私達にしかピエロは殺せないから。
だが、ピエロにピエロは殺せる。
光と光がぶつかり合う様に、ピエロとピエロはぶつかり合い喰らい合う。
王が居るからまとまりをもっているだけで狂気に統一性は無い。
反乱分子のピエロ達、共喰い計画はそれを利用した計画だそうだ。
あの王に反乱するピエロが居るとは驚いた。
しかし、ピエロはピエロだ。
人間に扱えるわけがない。
ピエロの考えている事なんて分からない。
私はピエロじゃないから、私は頭が良くないから、分からない事だらけだ。
エネルギー系、念力系、アストラル系、幻覚系、等々、非科学から科学の領域になったばかりの特殊超機能研究、まだまだ分からない事だらけ。
だが、分かっている事も有る。
私はある事をよく理解している。
それは、
私の能力、アストラル系能力では物理的な攻撃が出来ないという事である。
畑中大将の様に己の肉体をピエロと素手でやり合える程に強化出来るなら良いのだが、私にはそれが出来ない。
だから、
錐もみ状態で落下するヘリから脱出する事は、私には出来ないのだ。
ピエロの伸ばしてきた体の一部がプロペラ部分に当たりこのざまである。
このままでは海面に叩きつけられて全滅、ヘリの操縦士2人を含めて18名の死が迫っていた。
「分解します!!!」
機内にその声が響くと同時にヘリが一瞬でバラバラに、パーツだけ切り出されたプラモデルの様な状態になった。
ピエロに対して有効打にならないだけで一般兵の持つ能力が使い物にならないとは限らない。
空気のベールを感じる事無く無数の部品とそしてご遺灰達と共に私達は海に撒き散らされた。
「大丈夫か!!!」岸に着き丸山特等兵が叫ぶと陸に上がった順に声を返していった。
「全員無事みたいだね」良かった。
「だな、 ところでさ、さっきの能力は誰のだ?」今回の任務で私達と行動を共にする小隊の者の能力ではない、丸山特等が通信班兵士達に目を向け、私は機内に響いた声が誰のものか知っていたのでその娘を見た。
「わ、私です」落ちる事を怖がっていたのにも関わらず見事な判断力だ。
「名前は?」
「う、霧曇 双葉です!」珍しい姓だ。
国が変わったので姓を変える者が多く出た、そして与えられた者も。
この娘はおそらく孤児、孤児には花の名前など植物に関係する名を付けられることが多い。
しかし、
どこかで聞いたことの有る名前だ。
「能力は電子機器の分解、効果範囲は半径5mの球体空間内です」大型のヘリをも瞬時にいとも容易く分解できる能力、敵が機械仕掛けの生命体であるならば最強クラスの能力だ。
「スゴイ能力だな、操作性はどの程度ある?」丸山特等兵の質問に霧曇 双葉は目を伏せた。
「調節は出来ません、すみません」彼女の手には棒状のパーツを含む細々とした部品が握られている、通信機の部品だ。
「あ」私の通信機も壊れている。
「あぶねー、俺達の武器がばらされなくて良かったな」不幸中の幸いだ。
「すみません… 、 私のせいで通信が取れなくなってしまいました」
「ん? 双葉ちゃんのおかげで全員助かったんだよ?何で謝るの?」既に名前呼びとは軟派だ。
「君を責める者は此処には居ないよ」事実だ、皆が私の意見に頷く「謝るのはこちらの方だ、礼を言うのが遅れたすまない、そして、ありがとう助かったよ」私に続いて皆の感謝の言葉が彼女にかけられる。
「私達は通信班だよ!パーツ見つけて修理して通信出来るようにすればいいんだよ!」仲間の声が一番助けになる、私にも分かる。
「うん… 、 そうだね、ありがとう。 私、頑張るよ!」少し頼もしく思えてくる笑顔だ、私には出来ない笑顔だ。
「状況を確認しよう、まず、此処が何処だか分かる者は居るか?」
「四国の徳島県周辺だと思われます」ヘリの操縦士が答える。
「確か、大阪の梅田に先週末に投下した物資が回収されずに残っています」もう1人の操縦士が口を開く。
「回収されずに、か」全滅したのだろう。
「はい… 」少し空気が重くなってしまった、余計な一言だったと反省する。
「通信基地局の修理に向かったチームへの物資だったので、確実だと思われます」難しい話だ。
「廃墟に入って探るよりかは安全だが、距離がなぁ… 」徒歩ではキツイ。
「迎えが来るかどうか分かりません」通信班の1人が重く口を開いた、その重さが説得力を持ってのしかかってくる。
通信班だ、色々と嫌な事を聞いてきたのだろう、『まさか自分達が』と言う考えも視野に入れて行動を考えて取らなければならない。
「任務失敗などの連絡は入れなければなりませんが、それでも、自力で帰る事を視野に入れて本土に入っておいた方が良いのではないでしょうか?」これが通信班二班の総意だ。
「だなぁー… 」私も、私達も同意した。
本部にとっても私達の任務よりも、私達自身よりも、コンテナの中身が重要だろうからその事を伝える必要性もある。
どういうことなのか知りたい、4人の特等兵に事情を伝えずに生贄にしたのは何故なのか、そもそもはそんなつもりは無かったのか、知りたい。
ピエロは海を嫌う、でも嫌うだけであって入ったら死ぬわけではない。
あのピエロが生きていると思うと背筋が冷たくなる。
あのピエロは私が殺してきたどのピエロよりも不味いオーラを放っていた、不味いことにならない事を祈りながら私達は帰還の為の行動を開始した。
先ずは食料、そんな事を言う兵士は三流だ。
エネルギーメイトを1週間分は常に携帯しているし、ろ過ストローも3本は常に懐に入れてある。
ピエロ戦での常識、ヘリの操縦士でさえも携帯している。
そもそも、移動が前提なので此処で食料と飲料は探さない。
此処でするのは移動手段の確保だ。
「分解して車を組み立てるのはどうでしょうか?」
「電気自動車なら分解できますが、動力エネルギーも知識も素材もありません」
「ですよねぇ~」小隊の男性メンバーは丸山特等兵の影響か、軟派とまでは言わないが少しだけ口調が軽い。
「・・・・・・」
「どうしたんですか丸山特等兵」小隊長の声と目線につられて私も丸山特等兵を見た、丸山特等兵は何故か拗ねている。
「いや、お前らが俺の能力の事忘れているんだなって思ってさ」
「あ」忘れていた「超速回転」丸山特等兵の能力だ。
丸山特等兵は手裏剣の様な刃を念力で回転させて飛ばしたり、内部に回転トリガーの付いた刀のそのトリガーを超速で回転させて超速振動を起こし刀を高周波ブレードと化したりして戦っている。
【 アサシン 】、これが丸山特等兵の二つ名だ。
念力の込められた武器でならピエロにダメージを与えられる。のだが、人の力で与えられるダメージはそう大きくはないし防がれてしまう。
それなのにピエロと戦いピエロを殺せるのだから、尊敬に値する。
軟派な男だが実力は確かだ。
念力はこもっていればピエロにダメージを与えられる。
衛星兵器、その動力は念力だ。
だから異常な速度で突っ込んできたのだ、そして、Clown=Lord にはそれさえも効かなかった。
衛星軌道上にまで能力範囲を伸ばせる名前も知らないその念力系の能力者には驚くが、Clown=Lord の異常さに対する驚きはそれ以上だ。
強過ぎる、私達に勝てるのだろうか?
「バスの後ろにタイヤを通したフックを取り付けて、そんでもって上からスプリングで押さえつけて常に地面と接触するようにしてくれたら大丈夫だと思うぜ」私が悩んでいる間にも話は進み解決の糸口が見つかる。
丸山特等兵が一度に回転させれる物の数は1つなので、それは適案だと思い私は頷いた。
「ブレーキは逆回転で掛けれますか?」丸山特等兵は軽く縦に頷いて返す。
「ならブレーキとかが壊れているバスでも大丈夫ですね」タイヤと車軸さえしっかりしていればいいという事だ。
「思ったよりも早く帰れそうですね」
「帰るよりも先に本部への連絡だよ、双葉さん」丸山特等兵の様にはいかないが、いや、丸山特等兵の様にはならないように、私は彼女の名前を呼んだ。
「・・・・・・・・・・」
また、やらかしてしまった。
全員に見られている。
私はまるで反省していないな、改めなければならない課題が山積みである。
「と、取り敢えず探しに行こう!」
私達は、帰る為のバスと機材を探した。
お読みいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。




