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撒かれるご遺灰達

短いですが、お楽しみいただければ幸いです。


 アンリさんは車の運転が上手い、短い移動距離でも微睡に靄される。

 到着した空港の滑走路には大型バスが1台と私が乗って来た車と同じ黒塗りのセダンが5台停まっていた。


(今日は私含めて6人、もう揃ってるなぁー)


 ピエロを殺せる能力者である特等兵6名、サーポート系能力者8名を含む一般兵26名が今回の作戦に割かれた人員である。


「佐藤特等兵!おはようございます!」

「「「「「 おはようございます!!! 」」」」」

 一般兵の一小隊6名が私に大声で挨拶をしてきた。

「お、おはようございます」苦笑いになっていないことを祈りながら口角を上げた。


「「「「「「 ・・・・・・・・・・ 」」」」」」


 黙り込んでこちらを凝視してきている、やはり、だ。

 笑顔が引き攣っていたのだろう。

 苦笑い以外の笑顔を覚えたいところである。

 今度カレンさんに教わろう。


「俺この隊で良かった」

「死んでも悔いは無い… いや、佐藤特等兵にキスしてもらえたら悔いは無い」

「不敬だが、あのおっぱいに触りたい」

「男はこれだから… でも、分かるわ」

「いい子いい子して欲しいです」

「キュンキュンムラムラします」


 何かを話している様だが内輪話に首を突っ込むほど野暮ではない。

 それに、私の悪口だった場合耐えられそうにない。

 私は心を落ち着かせながらバスに背を預けた、まだ集合時間には早い。


「オッスオッス」この小隊を私と共に率いる丸山特等兵、一見軟派だが気の利くいい奴で男にも優しい。


 私も軽く手を振り返して挨拶を交わす。

「私が最後みたいですね」20分前なのに特等兵が全員揃っている事に軽く驚いている。

「別小隊の4人はアレの護送で早く来ていたらしい、俺はランニングしたくて早く出てたんだ」確かに滑走路ならランニングに丁度いい、私も今度真似しよう。

「あれは何ですか?ご遺灰ではないですよね?」貨物用の大型コンテナがヘリ輸送用のトリガーを取り付けた状態で置いてある。

「分かんねー、あいつらも分かってないらしいぜ。 あと、まだ今日投下する分のご遺灰はまだ届いていないぜ」特等兵4人を護送に付ける程の代物が何なのか気になるが、まぁいいか。

「もうそろそろ並びますか」

「だな。     お、丁度来たぜ」昨日の午後10時から今日の午前10時までの間に届けられたご遺灰達が護送車に載せられてやって来た。

 灰になっても死体はピエロになってしまうので、九州からなるべく離れた海に撒くことになっている。

 私達はご遺灰達を受け取り二小隊12名と特等兵4名の16名、と、一小隊6名と通信班二班8名に特等兵2名の16名の二手に別れヘリの到着を待った。


 任務に出ていたヘリが帰って来て隊員を下ろす。

 殉職者が出ていない事にそっと胸を撫で下ろすと私達の出撃の準備に取り掛かった。

 点検と給油を終え二小隊が乗るヘリに大型コンテナを取り付けた後、私達は通信班と共にそしてご遺灰達と共にヘリで空港を発った。


 毎回思うのだが随分と移動速度の速いヘリだ。


「高度も高いし積載量も大きいのに速いね」小窓から海を眺めながら通信班の少女に声を掛ける。

「は、はい!私もそう思います!」緊張している様だから声をかけたのだが、逆効果だったようだ。

「高いところ怖い?」それとも私の顔かな… 。

「い、いえ!   でも、飛び降りるのは怖いです… す、すみません」怖いのが私の顔じゃなくて良かった。

「謝る必要なんてないよ、それに私も少し怖いから」少女の目が丸くなる「でも、一時落ち続けると空気のベールで包まれるような感覚になるのは私好きだな」

「あ、それ分かります」目から驚きは無くなっている「そっか、そうですね… ありがとうございます!」まだ少し恐怖の色が残っているが、先程よりは薄れている。

 緊張の色も薄れているようで良かった。


 私は微笑んでみた。


 結果は言うまでもない、先程の二の舞だ。

 少女は私を凝視して震えている。


(ごめんね)


 何で、また懲りずに笑顔なんて作ってしまったのだろうか、悲しくなってきた。

 周りの空気もなんだか変だし気まずいので、私は再び小窓に視線を戻した。


「何にあれ?」


 私が視線を戻した先、二小隊の乗るヘリが黒煙を、異変の狼煙を上げていた。

 だが、それよりも先にあるものが目に入って来た。

 輸送しているコンテナから何かが出ていたのだ。


「手?口?」


 私達の乗っているヘリが墜落したのは、私がこの異変に気が付いたすぐ後の事だった。


 私達はご遺灰達と共に海に撒き散らされた。






お読みいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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