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その死神は白き旗を携える

お楽しみいただければ幸いです。

 鮮やかな青色の空を黒くくすめて反射する墓石に私は手を合わせる。

 何回目の事だっただろうか、線香の香りに慣れてしまったのは。

「また一つ手を合わせる所が増えちゃったな」

 もう増やさないと誓っていたのにな。

「また私だけになっちゃったね」


     【 死神 】


 私に関わった周りの者達が死んで逝く事からついた私の別称だ。

 ピエロを殺せる怪物になりたい。


 私は、手にした五輪の花束に力を込めて墓石に透した。


「皆も知ってるでしょ、佐藤 旭中将。私ね、お父さんと同じ様な能力に目覚めたんだよ」

 輸血による能力の継承なのか、この世の歪み、Clown=Lord に会った事が要因になったのかは現在調査中だけど、私が二つの能力に目覚めた事は確かだ。

「皆、墓石の下には居ないんだね」戦死者達の墓標、此処に居なく当然である。

 しかし、私が仲間達に会える場所、仲間達を供養できる場所は此処しかない。


 私は再び誰も居ない誰も眠っていない墓標に手を合わせる。


 家や個人で墓石を立てれるのは一部の者達だけなのだ、だからこそより旭お父さんと紫お母さんへの感謝は大きいのだ。

 十代の小娘が一人で何不自由無く暮らしていけるだけのお金と人脈を残してくれた二人には本当に感謝している。

 でも、二人が残してくれたものはそれだけではなかった。


   【 透過 】と【 透視 】


 手に持った10㎏未満の物に対して効果を付与する透過能力、そして、直径1.2㎞の球状空間内が効果範囲である透視能力だ。

 でも、オリジナルである二人の能力に比べるとやはり劣っているとしか言いようがない。


 佐藤 旭:生涯ピエロ討伐数 2619体

 佐藤 紫:討伐サポート回数 3523回


 一定時間だが、手から離れた物にまで透過の能力を付与できた旭お父さんは銃でピエロに対抗できた数少ない人物の一人であり、5㎞先まで透視できた紫お母さんとの相性がとても良く驚異的な討伐体数を叩き出していた。

 普通の銃弾ではピエロにかすり傷も与えられないが、透過する弾丸では致命傷を与えられた。

 普通は透過した弾丸では傷付く事は無いのだが、この世の理を歪めた存在であるピエロに対しては効果的だった。

 本来であれば死ぬ事の無いピエロと呼ばれる醜悪な怪物の歪みと理を透過してダメージを与える事が出来たのだ。


 そして、私にもそれが出来るようになった。


「二階級特進した隊長よりも上の階級になってしまいましたよ」


 能力者は貴重であり、この国において、軍においてはより優遇される。

 そして更に、ピエロを殺せる能力者への優遇対応はその上を行く。


「夏希特等兵、お迎えに上がりました」

「私の運転手ってアンリさんなんですね」特等兵、能力者は一般兵と分けられそう呼ばれている。

「御父上様に引き続き私が勤めさせていただきます。 お久しぶりですね」父が死んでからはたまにしか会わなくなっていたが、知っている人で良かった。

 正直言って運転手とか居ても困る、だから知っている人で良かった。

 対応に困る事はなさそうだ。

「お久しぶりです」私は会釈した。

「ええ、本当に… 、 ご立派になられて… 」驚いた、涙ぐんでいる。

 監視の意味でも就いており少し距離を感じる人だと思っていたが、違ったようだ。


「あはははは… 」再会して早々に対応に困る事になってしまった。




   *




 アンリさんの運転する車に運ばれて到着したのは軍の管理する研究所だ。


 黒鉄くろがね すい、驚愕級の天才と人は彼女を称賛する。


 そんな女性が所長を務める研究所であり、ピエロに対抗する為の兵器の開発から個人レベルでの能力をサポートする器具の製造開発までを行う研究所だ。


「黒鉄様より貴女の担当を一任されました、カレンですよろしくお願いいたします」名前の通り可憐な女性だ。

 メイクも何も知らない傷だらけの顔で同じ女を名乗っていることが恥ずかしくなる。

 これ程に可憐な女性だと白衣の下から透けて見えるTシャツの柄が奇怪であってもさまになる。

(いや、やっぱりその柄は無いと思います。すみません)

 何処か残念な美女だ。


「私は佐藤 夏希です。こちらこそ、よろしくお願いいたします」互いに会釈程度のお辞儀をしあう。


「あ、そうでしたそうでした、黒鉄様から貴女への伝言が有りました」今思い出したかのように手を叩き聞いてきた、天然が入っている様だ。

「はい、何でしょうか?」

「『君は Clown=Lord は死んだと思うかい?』、だそうです」

 私は首を横に振った。

「傷を負っているかどうかも怪しいです」

「フフフ、私もそれに同意しますね。 お答えいただきありがとうございました、黒鉄様に貴女のお答えを伝えておきますね」

「いえいえ、礼には及びません」何も分かっていない奴の答えなど何の役にも立たない、ありがとうに価しないものである。


     【 不幸が楽園 】《ネガティピア》


 Clown=Lord の持つ詳細不明、絶対無敵の能力。

 人が不幸を感じる限り、人が何かを恨む限り、Clown=Lord に終わりは来ない。

 だから、死ぬなんて事は起こりえない。

 だから、肉体を滅ぼす手段を模索しているのだ。


「あの円形の大地に貴女は居たんですよね、どうでしたか?」衛星兵器の衝撃で派手に吹き飛んだ大地、その中心は何故か直撃前のままの姿で形を残していた。

「分からないです。 何も憶えていなくて… 」誰かと話していたような気が微かにする様な程度にしか憶えていない。

 私を殺す気力も無いくらいに消耗した、と、上の者達は考えている様だけど、私はそうは思わない。

(私の居たあの空間だけが別次元に有った、又はなっていた、って感じだよね)

 そうでなければ、大地がえぐれているのに爆心地だけが無傷だなんて事は有り得ない。

「なるほど、空間支配や時間止めを使われると基本的に意識を保てなくなるそうなので、Clown=Lord がそういった力を持っている可能性が有りますね」

「厄介ですね… 」本当にあの円形に保護された大地ならぬ台地は Clown=Lord の力によるものなのだろうか?

 もっと別の何者かが関与しているのではないのだろうか?

 Clown=Lord が私を護る理由が無い気がする、皮肉って遊んでいるのかもしれないけど… 、 分からない。

 そもそも、Clown=Lord は衛星兵器の直撃程度じゃ死なない気がする。

 絶対にそうだ。


「こんな感じでどうですか? 締め付けきつくないですか?大丈夫ですか?」上目遣いの可憐な顔に見つめられてドキッとしてしまう。


「あ、はい!大丈夫です!」拡張エクステンドスーツの調節中の間を繋ぐ会話に考え込んでしまって恥ずかしい、スーツを着る為に裸を見られているので、何だかより一層恥ずかしい。

拡張エクステンドスーツと言っても、貴女は念力系の能力ではないので、超高性能の耐ショックスーツ程度に考えていただけると良いかと思います」なるほど、「貴女の身長と体重でしたら、自重落下の限界値を超える衝撃を受けても平気ですので、パラシュート無しでのスカイダイビングをしても大丈夫ですよ」

「え!?凄い!!!     あ… 」素で驚いてしまい、思ったよりも大声を出してしまった。

「フフフ、これが黒鉄様の力ですよ。 フフフ」私の大声については気にしていないようだ。「強化パーツを搭載しない分、動きやすさと耐ショックに力を注いだ結果ですね」

「ありがとうございます。 凄いですね」色もブラックで落ち着いていて、体のラインは出ているが恥ずかしさはあまり感じない。

「以前から温めていた案でしてね、三日で仕上げましたよ、三徹です三徹」ある意味ではこの人も能力者なのかもしれない。

「ありがとうございます」深くお辞儀した。

「で、ですよ。 こちらをご覧ください!」何だか嬉しそうに2m程あるアタッシュケースを取り出して4つ付いているロックを開け始めた。

 おそらくは私の武器だ。

 片手で持ち上げたところを見ると軽い事が窺い知れる。

「黒鉄様が特別にお作りになられた貴女専用の武器です!」テンションが高い、本当に黒鉄 翠さんを慕っているのだろう。


 しかし、銃以外の武器を扱った事の無い私の近接武器を勝手に決められてしまって何だかモヤッとしてしまう。


「じゃじゃーん!」本当にテンションが高い、急にテンションを上げられると対応に困る。

 カレンさんから目線を落とし開けられているアタッシュケースの中を見る。

「何ですかコレ?」アタッシュケースの中には白色の布に包まれた、おそらくは袋に入れられた、何かが有った。

 ケースの中で更に袋に入れられたマトリョーシカ状態の私の武器を見るべくその布を引っ張り上げた。


      驚いた


     「 旗!? 」


 布は袋ではなく、旗の帆であった。


 私専用の武器は、白色の帆を讃えた旗槍であった。


「     軽い… 」そして脆そうだ。


     これが私の武器?


「『近接向きの透過の能力には強度や切れ味は関係無い、間合いの長さと武器の幅そして持ち易さが重要だ』とのことです」なるほど。

「つまり、この帆の部分も剣で言う所の刃になるんですね」透過するので取り回しに注意を払う必要性が無いのでこの長さであり、透過させるので強度も必要が無いという事でもある。

「持ち運びや、10㎏未満という制限の事を考えて旗だそうです。 先端に付いている刃物は念の為にだそうです」旗という衝撃が大きく見逃していたが、確かに30㎝程の刃が持ち手の逆、先端部分に付いている。

 ピエロに対して振るう武器なので、使う事は少ないだろうが、武器としての安心感と重みが出てホッとする。


 最初は困惑したが、話を聞いている内に何だか納得させられてしまった。


     それに…


「初めて持った感じがしない」もの凄く手に馴染んでくる。


「黒鉄様がお作りになられましたからね!」職人技というものなのだろうか、違うような気もするが、分からないので置いておこう。

 取り敢えず、これが私の武器であることに異論も不満も不安も無い。

「ありがとうございます」何だか嬉しくなってきた、私専用の拡張エクステンドスーツと私専用の武器、私もテンションが上がって来た。

「黒鉄様にお伝えしておきますね!喜ばれるかと思います!」旭お父さん達と黒鉄 翠さんは顔見知りだったそうで、2~3回顔を合わせた事が有る。

 直接お礼を言いたいところだが、忙しいので無理だろう。

 これといった特殊機能は無い様だが、私の為に特別に作ってくれた事には感謝の言葉も無い。

「よろしくお願いします」私は深く深く頭を下げた。

「はい!任されました!」何だか楽しそうな人だ。

 しかし、可憐で美人で良い人だなんてズルい。

「能力を発動させて振った感じとかどうですか?」あ、忘れていた。


 私も人の事は言えないな…


「おお、凄い」不思議な感じだ。

「凄いですね、違和感を感じてしまいます」カレンさんの言う通りだ、旗の帆は違和感を感じてしまう動きをしている。


 能力を発動させた為、重力、空気の流れ、等々、全ての物質を透過する旗は、その帆は柄の軌道を添うように、まるで、質量を持たない色のみが動いているような感覚を見れる者に与える。


 視覚で捉えられているのは、能力を発動している間は対象の物質がアストラル体化している為だ。


 だからアストラル感性の弱い者には見る事も出来ない、透明化の能力と言って騙せる程に見えない者も居る。


「カレンさんは見えているんですね」


「ええ見えますよ、見えるだけですけどね」フフフ、と笑顔を見せるカレンさんを見た私は(美人ってズルいなー)と思い苦笑いを浮かべてしまう。


 持つ者と持たざる者の差は大きい。


 でも、対等な立場で寄り添おうとしてくれるカレンさんとは仲良くできそうだ。


「これからもよろしくお願いいたします」


「こちらこそよろしくお願いいたします」


 互いにお辞儀をし合い今日は家路につく事にした。







 アンリさんに送ってもらっていた事を忘れていた私は電車で帰ろうとしてしまいアンリさんに涙目で注意をされたのだが、その話しはまた別の機会に。


 本当に人の事を言える立場ではなかった、でも、だからといって、私が天然という証拠にはならない。


 きっとそうだ!

お読みいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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