表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もぐらの逆襲  作者: oga
もぐら編
9/24

道場にて

 大分から熊本を通過し、サイゴウの住む鹿児島へと目指す。

道中、交番でどの程度かかるかを尋ね、3日はかかるだろう、と説明を受けた。


「ありがとうっす!」


 四国出身を悟られないよう、訛りの無い弁蔵に話をさせ、旅のトラブルを避ける。


(絡まれるのはゴメンぜよ)


「それよりアニキ、今日はどこかに泊まらないっすか?」


 体は泥まみれだが、それ以上に、足腰にも限界が来ていた。

 この付近は、温泉街となっており、至る所から湯気が立ち上っている。

 適当な宿の暖簾を潜ると、女将が顔を出した。


「いらっしゃーい。 何名様でしょうか?」


「2名で」


(女はごわす、って言わないのか)


 どうでもいい事を考えながら、中へと通される。


「お金の心配がないって、最高っすね!」


 案内された部屋は18畳と広々しており、真新しい畳の匂いがする。

しばらくくつろいでいると、弁蔵が立ち上がった。


「ひとっ風呂浴びましょうか!」


 





「ふぅ~、生き返るぜよ」


 温泉は少し温く感じたが、長時間入るには適した温泉である。


「最高っすね」


 弁蔵は首(どこが首か分からないが)にタオルを巻いて、壁にもたれた。

その時、誰かが扉を開けて中に入ってきた。


「うう~、さっぶ! 早く湯に浸かるぜよ」


 その声に、もぐらはすぐに反応した。


(嫌なやつと会っちまったぜよ……)


「よぉ、おめーも来てたか!」


 サカモトであった。


「二人とも、知り合いっすか?」


「おうよ、同じ便所で用を足した仲ぜよ。 ワシはサカモトだ」


 それ以前に会っている、と思ったもぐらであったが、口に出さず、代わりに仏頂面を作った。


「サカモトさんは、旅行でこちらへ?」


「ワシは九州のサイゴウに用があってな。 やつはそこの道場に剣の稽古を付けに来とるらしい」


「サイゴウが来てるのか!」


 ザバ、と立ち上がり、サカモトの方を向く。


「お前、サイゴウのファンか。 なら、明日道場に来たらいい。 面白いもん、見せてやるぜよ」







 翌朝、サカモトに言われた通り、温泉街の外れにある道場へとやって来た。

爪の弾ける音と、気合を発する怒号が外から聞こえる。


「中、入れるんすかね?」


「サイゴウさーん!」


 ファンと思しき女性が声援をかけたが、サイゴウは男にも人気がある。

その姿を一目見ようと、様々な人がここに押し寄せていた。


「もう少し下がるでごわす!」


 扉には弟子が立ち塞がり、ファンを押しとどめている。


「皆さん、どいてくれぜよ!」


 ファンをかき分け、男が叫んだ。


「サイゴウに伝言だ! サカモトが来た、とな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ