採掘作業
壁の補強されていない地帯まで戻って来ると、二人は採掘作業を開始した。
ザクザクと穴を掘り進める。
もぐらには宿代すら無いため、ここでお宝を掘り当てる以外にない。
「……あっ、何か出てきた!」
土の中から現れたのは、女性物のバッグ。
「どこのブランドぜよ?」
弁蔵が土を払いのけると、Vの字が見て取れた。
(まさか、ヴィトン!?)
「ヴィ…… ヴィヴィッドのバッグっす」
「……」
ぱちもんのバッグに気落ちせず、更に掘り続ける。
泥まみれになり、体力が底を尽きるまで作業を行い、数種類のアイテムを回収することが出来た。
ヴィヴィッドのバッグ、豚の貯金箱(中に5万入っていたが、人間の紙幣のため使用不可)、たこ焼き器、である。
(豚の貯金箱はある意味惜しいぜよ)
「このバッグは売れないと思いますから、たこ焼き器を使うしか無いっすね」
幹線トンネルなら、いくらでも客はいる。
小麦粉も近くのコンビニに売っているため、後はタコさえ用意すればいい。
「タコか……」
ふと、横を見る。
採掘作業で、時刻は深夜になってしまったが、正月明けでトンネルは混雑している。
その中に、タコも紛れていた。
(……あれを、捕まえるぜよ)
もぐらは、弁蔵に300モグーを渡し、小麦粉を買ってくるよう命じた。
「俺がタコを捕まえるから、小麦粉は任せたぜよ」
「大丈夫っすか?」
「いいから、早く買ってくるぜよ」
ここでタコを仕留めれば、名誉挽回である。
しかし、迂闊に攻撃すれば、墨によるカウンターでこちらがやられかねない。
もぐらは、渋滞で身動きの取れないタコに近づくと、爪を構えた。
「北辰一刀流、風属性、トルネイド!」
爪を頭上に構え、回転する。
「……おわっ!?」
激しい回転により、その場に渦が発生。
タコはそれに飲み込まれた。
「一丁上がりぜよ」
渦が消え、眼を回したタコは、為す術もなくもぐらに捕獲された。
たこ焼きは飛ぶように売れ、売り上げは10万モグーに達した。
「渋滞で混雑してるのが、逆に良かったっすね」
小腹を空かし、たこ焼き食べたいなー、と思っている所に、丁度それがある。
需要と供給が一致した瞬間と言えよう。
検問に向かい、4万モグーを支払うと、2人は大分へと足を踏み入れた。
たこ焼き器の電源はアンコウです