渋滞
「いい質問だ」
ブリは弁蔵の問いかけに答えた。
「泳げば1日、歩けば2日、といった所だ。 他に質問は?」
「いいえ、十分っす!」
親切なブリと別れ、そのまま直進すると、幹線トンネルと合流。
しかし、予想外に道が混み合っている。
「一体、どういうことぜよ?」
この日は正月であり、通常、道が混み出すのは2日以降である。
すると、列に並んでいた2匹のカクレクマノミが毒づいた。
「ったく、せっかちなマグロの野郎が珊瑚礁に突っ込みやがって、こんな所で正月を過ごす羽目になるたーナァ」
「しかも、道が復旧するのは明日以降って話じゃねーか。 俺ら、泳がねーと酸素取り込めねーんですけど!?」
この渋滞の正体は分かったが、別な意味でもぐらは驚いた。
(ガラの悪いカクレクマノミって、新鮮ぜよ)
2匹のもぐらも一応列に加わるが、やはり一歩も進まない。
「……明日まで待つのもしんどいぜよ」
3DS持って来ればよかったかなぁ~、などと考え始めた時だった。
チラ、と弁蔵の方を向くと、腕を組み、真剣に思考を巡らせているではないか。
「事故渋滞を抜けるには…… ブツブツ」
(や、やべーぜよ……)
何か手はないか? しかし、先に案を閃いたのは弁蔵の方だった。
「アニキ、新しいトンネルを掘って、事故渋滞を抜けましょう」
「あー、それな! 今、丁度思ったとこぜよ」
食い気味で返答するもぐら。
実際は何も閃いていなかったが、横穴を開けて事故渋滞を抜ける案が採用されることとなった。
四国から九州へのトンネルは、ほぼ直線であり、幸い、事故渋滞は遠目から確認できる位置にあった。
更に、トンネルを掘るのはもぐらの得意としている分野である。
硬い横穴さえ開いてしまえば、後は簡単だった。
事故渋滞を抜けた先はスムーズで、ブリの言った通り、2日もあれば、九州へと上陸することができる。
「今日はここで止まって、明日、九州に上陸するぜよ」
「了解っす」
もぐらは、道中にある簡易ホテルへと足を踏み入れた。