亀
「ぎゃああああああああああ」
爪が砕け散り、四方八方に飛び散った。
「これ、ダメだ! 一旦カメラ止めてーっ」
弁蔵が叫び、画面が暗転した。
「随分、派手にやられたな」
今、もぐらが訪れているのは、四国でも有名な刀鍛冶の店である。
店内には、大小様々な刀が飾られている。
「亀の甲羅にも対抗できる爪に付け替えてくれぜよ」
「……それなら、菊一文字という名刀があるが、値は張るぞ?」
「……」
もぐらは、今回のためにお年玉をポケットにねじ込んで来ていた。
その額、実に3万モグー。(1モグー1円)
「その爪にするぜよ」
「……分かった」
奧の仕事部屋に通され、早速、折られた爪に新しい爪(刀)をつなぎ止める作業が始まった。
爪を高温に熱し、ハンマーでガンガンと叩く。
火花が眼前に飛び散るも、懸命にもぐらは耐えた。
そして……
「できたぜ!」
仕上がった爪を光にかざしてみると、刀身には美しい波紋が描かれている。
「いい爪ぜよ」
「一本100万モグーで、合計600万モグーだ」
(……は?)
金を支払う事が出来ず、結局安物の爪に付け替えた。
(新しく生えてくるまでは我慢するしかないぜよ……)
改めて、弁蔵と共に閉鎖されたトンネルの元へとやって来た。
岩の影に隠れ、前方を伺う。
「弁蔵、あの亀いるか?」
「……いますね」
ノシノシの辺りを徘徊する亀。
「……引き返すぜよ」