ラストモグラ
「くそっ…… 忌々しい人間にまでなったのに、この様か」
タカスギは、ふらつきながらそう呟いた。
「……おめーのやり方は間違ってるぜよ」
「金を稼いで土地を買う。 それが正しいやり方だって?」
もぐらは驚いた。
なぜ、自分たちの計画を知っているのか。
近江屋でサカモトが話していたのを聞かれていたのか? そんな風に思ったが、真相は違った。
「俺のオヤジも、人間になって土地を買うと息巻いていたよ」
「……!」
「年内には戻ると言って、オヤジは出て行った。 お袋と2人で、俺たちは寒い冬を越さなきゃならなくなった。 オヤジはいつまで経っても帰らず、ある日、お袋は嫌気が差して、別なオスのもぐらと駆け落ちして消えちまった」
タカスギの口からは、これまでのことが語られた。
放浪し、流れ着いたのカツの所で、人間のことを学んだという。
「働き方も、何もかもが違う人間社会に、もぐらは順応できねぇ。 誰かが戦って、土地を強奪するしかねぇんだ!」
「……」
その話を聞き、もぐらは複雑な心境になった。
自分は人間界のテレビを見ていたから、少しは地上のことを知っていたが、そんなことをしているもぐらは少ない。
(……だからって、勝ち目の無い戦争なんかする意味ねぇぜよ)
もぐらは、タカスギを組み伏せ、そのまま交番へと連行した。
「こっちは準備出来たぜ!」
道路の真ん中に、案内人が購入した殺虫剤のスプレーとガスボンベが山積みにされている。
そこに、タカスギの乗っていたバイクのガソリンを上からかけていく。(灯油とかを抜く赤いポンプを使った)
すると、上空を覆い尽くしていたイナゴの群れが、一斉にその場目がけて飛んできた。
「ギリギリまで引きつけるぜよ!」
輪島は、ロケット花火を持って、イナゴが集中するのを待つ。
道路がイナゴで埋め尽くされると、ガソリンのまき散らされた床目がけ、ロケット花火を放った。
シューッ、と音を立て飛んでいく。
それが、床に命中すると、火が燃え広がり、ガスボンベに点火した。
「くっ……」
もぐらの耳の奧から、キーン、という耳鳴りが聞こえる。
(爆音で耳が……)
周りにはイナゴの燃えかすが大量に転がっていた。
(……イナゴは全滅できたか?)
地響きに気付いた人たちが、店の外に出てくる。
徐々に、音も聞こえるようになってきた。
「あーあ、下界に穴を開けちゃったじゃない」
「……どうやら、内側と外側から、同時に強力な衝撃が加わったようだ」
誰かが、喋っている。
突然、煙の向こうから男女が二人、現れた。
「……ま、マナカ!?」
現れた女子の方は、ラブ〇ラスに出てくる、マナカそっくりの容姿をしていた。
「エデンの人間だ」
「あ、初めまして。 私ら、神界っていう世界の住人なの。 てか、この穴どうしよ」
「な、何者ぜよ! えでんとか、いめーじあとか……」
眼鏡をかけた、コスプレ衣装みたいなのを着た男が喋る。
「エデンで作られた想像物が生活しているのが、イメージアと呼ばれる俺たちの世界だ」
確かに、この男もどこかのゲームか漫画で見たことのある顔をしていた。
「……そんな世界があるのか」
もぐらは、閃いた。
「だったら、穴はこのままにしといてくれぜよ」
「……えっ。 魔物とか、こっち来ちゃうよ?」
「俺たちが移住したら、ふさいでくれればいいぜよ」
もぐらは、イメージアに自分たちの居場所を見いだした。
そして、新たな野望がもぐらの中で芽生える。
(リアルで、マナカと付き合うチャンスぜよ!)
おわり
終わりました!
ダメだし、感想、あればよろしくです!




