捜索
「イナゴの大群がここに集まって来ているらしい。 駆除に成功した者には、報酬1000万を出すと大分市の市長がニコ〇で発言した」
何で市長がそんな場で発言するんだ? と思ったもぐらであったが、千載一遇のチャンスが巡ってきた。
「やるしかねぇな! ……っても、何でここにイナゴが集まってきてんだ?」
輪島はずっとこの大分市に住んでいたが、イナゴ被害など初めて聞く、と言った。
(イナゴ…… まさか、あいつの仕業か?)
もぐらの中で、嫌な予感が生まれた。
鶴の丸薬を飲む前、タカスギという男の襲撃に遭ったが、その際、男はイナゴを操っていた。
そして、今回の件がタカスギの仕業であれば、サカモトの丸薬を使って人間になり、事を起こした可能性がある。
(あのサカモトさんがやられたとは思えねーけど……)
もぐらが考え込んでいると、輪島が肩を抱いてきた。
「おい、何黙りこくってんだよ。 イナゴを除去して、報酬1000万だ!」
「気安く触るなぜよ」
ドン、と小突かれ、尻もちをつく輪島。
「な、何だよ。 やらねーのか?」
「やるぜよ。 ただ、どうやって駆除するか考えねーと」
もぐら、輪島、仕事の案内人の3人で知恵を絞る。
いくつか出た案を総合して、ようやく方法がまとまった。
「3人寄ればモンジュの知恵ぜよ」
「3人とも、モンジュ、の漢字が分からねーけどな」
それはさておき、方法としては、スーパーでかき集めた殺虫剤のスプレー缶と、ガスボンベを一カ所に集めて、ロケット花火を撃ち込み爆発、まとめて吹き飛ばす、というものだった。
「材料は俺が集める」
仕事の案内人が挙手し、スーパーへと走って行った。
(一番楽なやつを取られたぜよ……)
「後は、何でここにイナゴが集まってるのか、だが、心当たりがあるんだったな」
輪島が問うと、もぐらが頷いた。
「知り合いが、イナゴを口笛で操るのを見たことがあるぜよ。 もし口笛で、大分市に集まれ、みたいな命令が出来れば……」
「公共の電波にのせて、イナゴに聞かせたってのか? いくら何でも、そりゃねーだろ」
「……」
口笛で操るのにしても、その音の届く範囲は限られている。
輪島の言う通り、公共の電波にでものせる必要があり、致命的なのは、イナゴはテレビを見ない。
「口笛がないなら、何ぜよ」
「……ぱっと思い付くのは、雌のフェロモンとかじゃねーか?」
雌のフェロモンを使って、イナゴが引き寄せられている。
試す価値はあった。
「なら、そこの昆虫ショップでイナゴを買って、フェロモンを流してる場所を特定するぜよ」




