仕事
「あー、もぐらに戻りてぇー」
もぐらは、部屋の真ん中で布団を羽織って寝転んでいた。
「おい、あんま引っ張るんじゃねぇ。 さみーだろ」
輪島が反対側から布団を引っ張る。
上半身が布団からはみ出て、寒い。
「何でこんな寒いぜよ。 ってか、就職先が決まらないと、ここも追い出されるぜよ」
もぐらは、何度か企業の面接を受けたが、どれも惨敗であった。
その日は、とあるリフォーム会社の面接にやって来ていた。
「土竜コゴローさん、どうぞ」
扉の向こうから声がし、もぐらは立ち上がった。
中に入り、どかり、と椅子に腰掛ける。
面接官の顔が一瞬引きつったが、そのまま質問に入った。
「土竜さんがわが社で生かせると思う、強みはなんですか?」
「穴掘り、剣術ぜよ」
「穴掘り、というと、今まで土木工事に携わっていて、力仕事なら任せろと、そういうことですか?」
「……ちょっと見せるぜよ」
もぐらは、用意していた木刀を手に取った。
10社面接に行き、まともに返事をくれる会社は0。
「何がダメか分からんぜよ……」
「いやいや、おめぇ、しゃべり方もアレだし、求められてねぇ剣術披露したらもっとダメだろ」
それでも、もぐらにはさっぱり分からない、という表情であった。
「とにかく、ダメならホームレスの求人に頼るしかねぇな」
輪島は立ち上がると、身支度を始めた。
(ホームレスの求人?)
公園にやってくると、10人そこそこのホームレスが集まっていた。
ベンチに腰掛けていた男が、そろそろ始めるか、とつぶやくと、手にしていた紙ペラを読み上げる。
「原子力発電所の瓦礫撤去、日当2万円、5名募集」
6人のホームレスが挙手し、ジャンケンで5人を選抜した。
(そういうことか…… 一般人のできない、危険な仕事がホームレスの求人ぜよ)
この後、街に降りてきたイノシシの討伐(3名)、未承認薬の人体実験(2名)、の仕事が紹介された。
残りはもぐらと輪島の2人だけである。
「残りの求人は、イナゴの除去だ」
「……イナゴ?」




