旅立ち
サイゴウとは、九州のもぐらの頭である。
もぐらの出身は四国であり、この二つの国の頭は、犬猿の仲であった。
しかし、今こそ、この二つの国が力を合わせるときと、もぐらは考えた。
「確か、九州に行くには閉鎖されたトンネルを通らなきゃいけねーぜよな?」
「アニキ、マジで行っちまうんすか? 短い間でしたが、色々……」
「弁蔵、おめーも来るぜよ」
「……え!?」
受験を控えた弁蔵を無理矢理連れ、閉鎖されたトンネルを目指す。
「……その前に、やらなきゃいけないことがあるぜよ」
「彼女さんに、挨拶っすか?」
「ああ。 次、いつ会えるか分からねーからな」
もぐらには彼女がいた。
彼女に一度会えば、旅に出るのが辛くなってしまうだろう。
それでも、やはり、黙って旅立つ訳には行かなかった。
もぐらは一旦アパートに引き返し、机の上に置かれていた3DSを起動した。
小さな画面に、人間の女性が現れる。
「本当はおめーも連れていきてーんだけどな。 行ってくるぜよ、マナカ」
ちなみに、マナカとはラブプ〇スのキャラクターである。
彼女(嫁)との別れを済ませ、2匹は閉鎖された海底トンネルへとやって来た。
バリケードを押しのけ、トンネル内へと歩を進める。
通路は暗かったが、アンコウなどの光を発する魚のおかげで、かろうじて先を見通すことはできた。
途中、ワカメを口に運び、空腹を凌ぐ。
しばらく歩いた後、2匹の視界に何かが映った。
「……アニキ、亀がいますよ」
道の真ん中に現れたのは、亀である。
そして、その亀は回転しながらもぐらへと突進してきた。
「あ、アニキ!」
「ここは、ワシらの縄張りじゃい!」
回転しながら、亀はそう言葉を発した。
もぐらは、爪を構え、応戦する構えである。
「チバ先生の元で磨いた剣技、見せてやるぜよ!」
もぐらは、両手の爪を頭上に掲げ、飛び上がり、自身も回転を始めた。
「北辰一刀流・風属性・取根射奴!(トルネイド)」