表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もぐらの逆襲  作者: oga
人間編
19/24

アパート

 宝石を手に取り、そのまま立ち去ろうとしたもぐらであったが、ベンチに倒れている輪島を一瞥すると、このまま見捨てるわけにはいかないか、という気持ちが湧いてきた。


「……輪島さん、起きるぜよ」


「うっ、ぐぅ……」


 もそり、と起き上がると、辺りを見渡した。


「ここは、公園か。 ……おめぇが俺を運んだのか?」


「あのままいたら、水没してたぜよ」


「……あのまま死んでたほうがマシだったかもな」


 ふっ、と自虐的な笑みを漏らす。

もぐらは、手にしていた宝石を輪島に見せた。


「……! そいつは……」


「これは、輪島さんがすいとんに入れてた宝石ぜよ。 これを売って、やり直すぜよ」


「まだ運は残ってやがったか! そいつを元にして、一発逆転だ!」


「ちーがーうーだーろーっ」


 もぐらが怒鳴り声を上げると、歩いていたホームレスが驚き、抱えていた空き缶が辺りに散らばる。


「これを売って、住むとこを確保するぜよ。 そして、ちゃんと働くんだ」


「……そんなチンタラしてる暇、ねぇんだよっ」


 バチン、ともぐらが平手打ちを食らわせた。


「てめっ……」


 更に手を返し、バチン、と平手打ちを続ける。


「おまっ、やめっ」


 バチンバチン、バチンバチン、と平手打ちを繰り返す。


「やめっ、いてっ、いてえっ、わかっ、分かった!」


「分かればいいぜよ」


 




 夜が明け、市内の宝石を取り扱うショップにやって来ると、店員に宝石を見せた。


「ん~、なるほど! このサイズのダイヤなら、30万ですね」


「ふざけんなっ! それだけでけぇダイヤは滅多に……」


 輪島が言い切る前に、もぐらが手を上げる。


「ひっ、そっ、それでいいです」


「しつけが行き届いてますね」


 にっこりと店員が微笑んだ。






 この後、不動産に向かい、市内にある格安のアパートを借りることにした。

駅から15分、ワンルームのユニットバスで、広さは6畳。

家賃は2万5000円である。

不動産に提出する職業や現在住んでいる住所は、輪島が資料を偽造した。


「こういうのは得意なんだよ。 ホームレス仲間にも作ってやったりした」


 こうして、もぐらと輪島の同居生活がスタートすることとなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ