チンピラ
「話がまとまったな!」
輪島ともぐらは、一晩をブルーのテントの中で過ごした。
その間、テントの中で、採掘場がどこにあるか説明をうける。
「採掘場は、大分の都市部にある百貨店の地下1階から向かう。 床をはぐと、採掘場へと続くタラップがある」
もぐらは、地べたにあぐらをかきながら質問した。
「百貨店の地下…… そんな人目につく所にあるのか?」
「ああ。 だから、百貨店の閉店間際に行く。 だが、監視カメラが24時間店内を見張ってやがるから、そいつを欺く必要がある」
方法としては、適当なホームレスを雇って、カメラを見張っている監視員の気を引く、とのことだ。
「蓋を開けて、降りるだけだ。 1分もかからないだろう。 採掘するための道具は地下に準備してある」
こうして、翌朝、店が閉まる20時の30分前に行動を開始した。
途中、金で雇ったホームレスと3人で、百貨店を目指す。
夜の大通りを歩いていると、脇のコンビニにたむろしているガラの悪い男と目が合った。
「……」
(む、無視するぜよ)
下を向いて通過しようとした時、一人がこちらに向かってきた。
「……おっさんらさぁ、臭いんだよ。 街歩くんなら、俺らに金払えや」
「……」
これから仕事、という所で面倒な連中に目をつけられてしまった。
もぐらは、コンビニの入口に、傘が立て掛けてあることに気付いた。
(あれがあれば、こいつらを一掃できるぜよ)
しかし、コンビニまでは距離があり、ダッシュしなければならない。
相手はけんか腰で、ヘタな動きを見せれば殴りかかってくる可能性もある。
その時だった。
「……これが全財産だ。 足りるか?」
輪島が財布を抜き取り、そのまま相手に差し出した。
「……!」
相手は小声で、マジかよ、とか、札束じゃねーか、とか言っている。
そして、そのまま通りの向こうへと消えていった。
「輪島さん、いくら入ってたぜよ?」
「……20万だ」
「そんな大金が入ってたのか!?」
しかし、輪島は丁度良かった、と言った。
「何か大きなものを得るには、持ち物を全て捨てなきゃならん。 経験上な」
輪島は、時間が無い、といい、百貨店へと歩を進めた。




