ホームレス
1月4日 PM9.00
正月が終わる頃、もぐらは、目を覚ました。
「……」
目の前には、黒い空が見えた。
自分の今置かれている状況を確認するため、体を起こす。
「うっ、臭ぇ……」
もぐらは、ビニールの袋の上にうち捨てられていた。
(ここは、ゴミ捨て場か!)
体は肌色で、すべすべしている。
小脇には、弁蔵から託された豚の貯金箱があった。
「……まずは、着るもんがいるぜよ」
地中よりはるかに気温が低い上に、もぐらの頃のように毛皮もない。
何より、この格好で出歩けないということを、もぐらは心得ていた。
(人間はみんな服を着てる。 裸で街を歩けば、間違いなく捕まるぜよ)
ゴミ捨て場を漁るも、羽織れるようなものはない。
タイミングを伺って、どこかから服を手に入れる必要がある。
もぐらは、夜が更に更けるのを待ち、脇道から大通りへと歩を進めた。
途中、人が向かって来ると、脇のディスプレイに体を寄せ、マネキンを装う。
(……さぶいぜよ)
小刻みに体が震える。
それでも、何とかやり過ごし、服屋を探す。
(……ダメだ。 店はほとんど閉まってる。 このままじゃ、夜が明けて騒ぎになるぜよ)
それ以上に、この格好では寒さを凌げない。
ふと、街の中の公園から、湯気が立ち上っているのが見えた。
それが気になり向かってみると、男が鍋をかき混ぜている。
木の裏から様子を伺っていたが、その鍋の中身が気になり、そのままフラフラと近寄った。
「……うおっ、おめぇ、服は!?」
こちらに気付き、驚く男。
もぐらは我に返り、慌てて口走った。
「すっ、すまんぜよ! これには訳が」
内股になり、顔を手のひらで隠す。
「……酔っぱらって、気付いたら裸で道端に倒れていた、そんな所か。 ったく」
男はぶつくさ言いながら、ブルーのテントに入り、そこから服を持ってきた。
「とりあえず、着とけ」
「す、すまんぜよ」
服に着替え、ジャージ姿となると、いくらか寒さは凌げた。
「……その中身はなんぜよ?」
「ぜよ? おめぇ、坂本竜馬みてーなしゃべり方だな。 ……まあいい。 こいつはすいとんだよ。 この時期、寒さで死んじまうホームレスもいっからよ」
この男、他のホームレスに炊き出しを提供しているらしい。
本人もホームレスのようだが、幾分か裕福なようだ。
「……食ってもいいか?」
「……一般人からは金取るぞ」
もぐらは、豚の貯金箱から一万円を差し出した。
作者は、裸になる夢をよく見ます
夢の中でめちゃ焦ります




