第88話 魔法剣士との文通
俺は魔法部隊と魔法剣士部隊は七百人隊長と仲が悪いと言う話を聞いて、魔法部隊のメラデハナーイ百人隊長と魔法剣士隊取り纏めのユータナカ十人隊長と秘密裏に面談をする事にした。
ノンアポで各人の部屋に直接投函した手紙には「クーデターの件について話がある。本日0:00に南門前の宿に来いコーディ山田」と書いた。何か俺がクーデターを煽っているような怪文書みたくなってしまったのは愛嬌だ。
「コーディさん。どうも」
深夜にやって来たのは魔法剣士部隊のユータナカ十人隊長1人だった。魔法部隊のメラデハナーイ百人隊長は居なかった。話によると、百人隊長クラスが他国の軍属にノコノコと会いに行くのはあらぬ疑いを持たれるらしい。
――確かにそうだな。少し遊び過ぎたかもしれない。
兎も角、ルルーシュインの調査した廃棄鉱山の内部調査の結果と、俺の持ちうるほぼすべての情報を伝えた。七百人隊長がクーデターを画策していた可能性が高いと言う事と土鬼女王が生きている可能性が高いと言う事。隠した情報は『設定集』の情報のみ。
ユータナカ十人隊長は「確かに最近の七百人隊長の行動には疑念がある」との答えをくれた。だが、それ以上は我が国の問題と告げて去っていった。恐らく、話を持ち帰って魔法部隊の百人隊長と話し合うのだろう。もし、俺達の助力が必要なら声掛けがあるだろう。無ければまた此方から声を掛けるのみだ。
それでも無視するなら王様にタレ込んで土鬼女王だけ倒しに行くのも良いかもしれない。
◇ ◇ ◇ ◇
――――それから1週間が経った。俺とパットミちゃんは、両手の無い男を護衛として連れて歩き、時々グルグルの王様を冷やかしに行ったり、研究室で連続快楽殺人犯の様子を聞いたり、宮殿の図書館で魔法の勉強をしたり……気ままに過ごしていた。
ちなみに俺とパットミちゃんは、グローリアとポリエステルが抜けたのでMPがほぼ4歳児相当になってしまった。故に魔法を覚えても使えないのだが、訓練だけは続けていけば3年後には訓練していない普通の大人程度までは伸ばせるかもしれない。そんな思いを胸に、魔術回路に使う記号や効果を学んでいった。
ルルーシュイン達は相変わらず激しい訓練をしていて、段々と兵士達の身体がムキムキになっていくのがよく分かった。兵士同士の仲も良好らしい。キュアスパルタカスの部隊だけの事じゃないぞ。
マラソンと食事の効果か出たのか、基礎体力が付いてきたので団体行動と陣形の確認とを進めているらしい。それから、午後は毎日城壁の外に出て土鬼女王の潜む場所を探しつつ、魔物を間引いて回っているらしい。先日怪しい場所を見付けたらしく、斥候として元盗賊のキュアスパルタカスを向かわせた所……大当たりしたと報告があった。先に土鬼女王の討伐から行うのも有りじゃないかとも進言された。
場所は廃棄鉱山のすぐ近く。ヒソム峡谷と呼ばれる場所で、現地の人が言うには元々魔物が多く住んで居る場所らしい。魔物を隠すなら魔物の群れの中に……ってか。なるほろね。
そんなこんなの日々を送っていたある日、やっとこさ魔法部隊の百人隊長からのメッセージが届いた。メッセンジャーは例の魔法剣士隊の十人隊長だった。
「研究室の魔法を使っての調査の結果、七百人隊長はクーデターを画策しているのは確実となった。そして、決行が延期され続けているのは貴殿の滞在がある為と判明した。善意の滞在に感謝する。そして、恥ずかしながら我々は反体制側の戦力に対応出来る武力を持ち合わせて居らず、戦力をお借りしたい。……魔法隊メラデハナーイ百人隊長」
俺は口頭で即返した。
「喜んで! 具体的な話は何処で行うんだい?」
「――――1週間後の昼に『コーディ山田が国の乗っ取りを画策している』と言う誤報を流し、南門の外の畑に布陣するコーディ山田の部隊を餌に七百人隊長を含む兵士を門の外に出撃させる。そして、門を閉めて大型弓とコーディ山田の部隊で挟撃する。念のために土鬼の死体畑に城塞都市ミデンより雇った弓兵の傭兵を40人と罠の魔方陣を潜ませておく。尚、陛下は作戦を承認済みだ」
「おお、でも社畜隊40人+傭兵40人と、大型弓2つと魔法隊100人程度で七百人隊長と500人の兵士を挟めるのか? 仮に背後に土鬼が出たら挟み撃ちになるのは俺達だぞ?」
「そこは罠や遠距離攻撃の利点を活かして敵の数を減らすしか……無いですね。土鬼はこないだみたいにパーッと殺っちゃって下さい。あまり目に見える準備をし過ぎると警戒されてしまいますし、此処は工夫で乗り切って頂きたい」
「無茶を言うなー。まぁ、良いよ。一応此方も頼んでいる援軍が来る予定だから、何とかなるかも知れない。来なかったら俺達逃げるから、あとは城壁に立て篭って何とかしてね」
傭兵40人とか微妙にケチるからや。
「……分かりました。では、正式な作戦書は明日にでも陛下からお受け取り下さい」
「はいよ、準備には気を付けろよー」
ユータナカ十人隊長は敬礼をした後にシュッと姿を消した。
「~と言う訳だが、ルルーシュイン。大丈夫そうか?」
「何とも言えん。罠で足止め出来るレベルの敵ではない気もするが……それしかないならばそこに全力を尽くす迄だ。七百人隊長は私が仕留めるしかあるまい。問題は残る百人隊長を止められそうなのがキュアスパルタカス位しか居ないと言う事だ」
「止めるだけで倒せはしないのね」
「相性次第ではいける奴も居るかもしれないが……キュアスパルタカスは剣速は速いが威力がない。格上の攻撃を受けるのは問題ないのだが、百人隊長クラスに傷を負わせられる決め手がない。防御を抜けても鎧や魔法防御に弾かれるだろう」
「あ、もしかしてルルーシュインの青龍円月刀って威力を増すために使っているの?」
「……そうだ」
デカイもんね。可愛い奴め。
◇ ◇ ◇ ◇




