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“偽天使転生”~社畜編集者の異世界成り上がり録~  作者: 林集一
聖の章 後編 都市国家群と祈りの道
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第87話 情報交換会

 ――――例の土鬼(ゴブリン)女王(クイーン)の騒動からかなりの日数が経った今も魔法都市グルグルの周辺には大量の土鬼(ゴブリン)の残骸が残っていた。


 俺はその様子を仮補修の終わった南門の上から眺める。


 街の人はその土鬼(ゴブリン)の死体を移動させるのに手一杯な様子だった。かなり奥の方では林業や土木業に携わる人々が2m程ある丸太を等間隔で立てる作業をしており、野鳥の会の人が数人その様子を監視している。恐らくサボると給料が減らされるのだろう。野鳥の会の人達は労働者にとって監督官の役目も担うのか。


 俺も野鳥の会の人達の後ろからボーッと眺める作業をしていた。見張りの見張りと言えば面白く聞こえるだろう。


「今年の魔法都市グルグルは大赤字だなー」

「そうだな、今回の集団暴走スタンピード土鬼(ゴブリン)だから……今年(・・)はな」


 野鳥の会の人が含みの有る会話を始めたので、質問するように話し掛けてしまった。見張り失格や。別に誰に見張れと言われた訳でも無いが。


「今年は……って何だ?」


「ああ、どうも。天使さん。土鬼(ゴブリン)農法って聞いた事有りますか?」


 そう、どうでも良いが、俺はグルグルの街の人に天使さんなんて呼ばれたりする。


「……ああ、あるよ。土鬼(ゴブリン)の死体はすぐ栄養の豊富な土になるんだろ? ……ああ、来年ってのはそう言う事ね」


「そうです。今やっているあの作業は死体の山を慣らす作業で、その後に作物を植えるのです。あまり手を加えなくても馬鹿みたいに豊作になりますよ。なので、収穫のある来年以降に黒字転換する予定なのです」


 成る程、確かにそうだ。今年は人的損失で大赤字。黒字転換するのは作物の実る来年以降だな。あの量だと来年の食糧自給率は数百%を越えるだろう。


 『設定集』を元に描いた地図では魔法都市グルグルは食糧1の食料生産貧弱国家だ。普段は漁業都市ハノイと農業国家トキオから食糧を輸入して糊を凌いでいる。それが突然食糧9相当になったら……周辺の都市国家は良い顔しないだろうな。大量に食糧が放出されて農産物が値下がりしたら農業国家トキオ辺りと揉めそうだ。恐らく芋や麦等の保存の利く食糧を植えるのだろう。いや、それだと種を準備出来るかも問題だな……。


「何を植えるかも悩みそうだな」


「そうでもないみたいですよ、もう決まってますから。あの畑に植える作物リストが手元に有るのですが、見てみますか?」


 野鳥の会ってすげぇな。何でも持ってる。


「見てみよう。えー、植えるのは……マンドラゴラ? えーっとラフローレンシア、トリカブト、火炎草、赤葡萄に黒檀……木じゃん。これはもしかして……」


「そうです。魔術の触媒や魔導具の材料です」


 おー、確かにこれなら籾種を用意する必要もないし、このラインナップなら農業国家トキオとは揉めそうにない……が、逆に魔導具等を大量に保有する事で戦力の不均衡が起きそうだな。


「この国の人々は皆職人気質ですからね。研究材料を集めて研究を進めたり、質の良い道具や魔導具を作る事しか頭にありませんよ。麦とかの農作物でも作ると思いましたか?」


「はは、そう思ったよ。少しは農作物作った方が政治的には良いと思うからね。耕作面積で言えば触媒素材畑が7で、麦や芋等の保存食系が3くらいなら適切じゃないか?」


「魔導具作りに没頭するので、皆さん食事は口に入れば何でも良いみたいですよ。長耳族(エルフ)は新鮮な果物を欲しがりますが、森林国家アイヌからの輸入で間に合ってますし、短身族(ドワーフ)の酒も森林国家アイヌや交易都市ゲソルから入りますし、食に対して文句を言うのは白人族(コセリウス)位ですよ。政治なんて誰も興味ありませんしね。ははは」


「ははは……」


 そりゃクーデターも起こるわ。政治が御粗末過ぎる。


「あー、話は変わるが七百人隊長と仲が悪い百人隊長が居るって?」


 俺は野鳥の会の人に接近した目的――つまり、情報収集を行うべく、世間話を拡大させて行く。


「ああ、そうですね。今回北門で怪我を負って戦死した魔法剣士部隊百人隊長と、今回の騒動であまり活躍出来なかった魔法部隊百人隊長の2人と七百人隊長は犬猿の仲だったとの話ですね」


 これは……かなり有用な情報かも知れんな。


「何でも魔法部隊や魔法剣士部隊は魔法を扱うから研究室(ラボ)の影響力が強いらしくて、七百人隊長の命令には完全に従わない事があるらしいのです」


「ほー、成る程。じゃあ魔法部隊は七百人隊長の息は掛かってないのね。ありがとう。有意義な時間だった」


 前回の土鬼(ゴブリン)女王(クイーン)の騒動で損耗が激しい魔法剣士部隊だが、彼等と魔法部隊は説得が上手く行けばこっちの味方に引き込めるな。


 だが、敵は「七百人隊長・5人の百人隊長・500人程度の兵力・土鬼(ゴブリン)女王(クイーン)・強い土鬼(ゴブリン)数千~数万匹」とそう簡単には倒せる相手ではない。それに「ロサーリオを含む帝国の影」も居る。ロサーリオだけでも同時に敵に回せる相手じゃない。


 俺達の戦力は「ルルーシュインとキュアスパルタカスと配下の40人の兵力」それと「損耗した魔法剣士部隊と百人隊長1人を含む魔法部隊100人」が上手くいけば味方に出来るか……。


 上手くいっても味方1友軍1VS敵軍5土鬼(ゴブリン)5位の戦力差になるな。


 …………。


 俺は悩んだ。その結果、どうやっても綺麗に勝つのは難しいと言う結論に達した。世の中綺麗事だけでは上手くいかない様に出来ているのだろう。


 故に2人の助っ人(・・・)に手紙を書いた。片方はまだしも、もう片方はかなり気が進まない。果たして彼等がどう出るかは分からないが、上手くいけばある程度の戦力はまとまって得られるだろう。




挿絵(By みてみん)


 ※周辺国との話がありましたので、比較のために地図を貼っておきます。

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